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#351 「学校法人 M学園事件」東京地裁(再掲)

2013年12月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第351号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【学校法人 M学園事件・東京地裁判決】(2012年7月25日)

▽ <主な争点>
労働契約書への署名拒否を理由とする解雇など

1.事件の概要は?

本件は、XがM学園から労働契約書に署名しなかったとして解雇されたが、当該解雇は違法であり、これにより損害を被ったとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき損害金360万円(6ヵ月分の賃金相当損害金180万円、慰謝料180万円)等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M学園およびXについて>

★ M学園は、専門学校N医科学大学校(以下「本件学校」という)等を設置運営する学校法人である。

★ X(昭和55年生)は、視能訓練士の国家資格を有し、平成22年10月、M学園に採用され、本件学校において勤務していた者である。

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<本件規定について>

★ M学園の就業規則には、次の規定(以下「本件規定」という)がある。

第32条第2項(1)試用期間中または試用期間満了の際、引き続き就業させることが不適当と認められたときは、これを免職することができる。

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<本件解雇に至った経緯等について>

▼ 平成22年10月18日、XはM学園の担当者である事務長Aと採用面接の機会を持った。その際、Aは試用期間が3ヵ月あり、試用期間中の賃金は月額30万円であること、試用期間経過後は32万円~33万円に上がることを説明した。

▼ 翌19日、XはM学園から視能訓練士科教員として採用決定された旨の連絡を受け、同月25日以降、本件学校において稼働するようになった。

▼ 同年11月26日、XはM学園の事務担当者であるBから契約書案(以下「本件契約書案」という)を渡され、署名押印してほしい旨依頼された。ところが、その内容は試用期間を22年10月25日から23年1月24日までとする旨の記載はなされていたものの、労働契約の期間について期間を定めないものとし、賃金の額については月額30万円とするのみで、試用期間経過後の賃金について特段の条項を置いていないものであった。

▼ Xは本件契約書案によると、Aの上記説明に反して、労働契約上、試用期間経過後の賃金額も30万円となると危惧し、同年12月6日、Aに対し、本件契約書案を改めるよう申し入れた。

▼ Aは試用期間が明記されているから上記賃金額が試用期間中のものであることは自ずと判断できる等としてこれに応じなかった。以上の経緯から、Xはその後も本件契約書案に署名押印をして提出することはなかった。

▼ 同月13日、Aは改めてXに本件契約書案に署名をする意向があるか尋ねた。しかし、Xは「法律を遵守してください」などと述べて、これに応じず、AはXが軟化の態度をみせないとみるや、Bに指示して、本件規定に基づき、Xを23年1月12日付で解雇する旨の解雇予告通知書をXに交付するとともに(以下「本件解雇」という)、直ちに荷物を整理すべきこと、以降、出勤に及ばない旨を申し伝えた。

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