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#549 「有限会社シルバーハート事件」東京地裁(再々掲)

2021年11月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第549号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【有限会社シルバーハート(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2020年11月25日)

▽ <主な争点>
労働契約における勤務時間数の合意の有無とシフト削減の違法性など

1.事件の概要は?

本件本訴は、S社が雇用していたXに対し、労務を提供させる債務など同社のXに対する債務目録* 記載の各債務がいずれも不存在であることの確認を求めたもの。

*債務目録の内容はこちらをご参照願います ⇒⇒⇒ https://bit.ly/3CypNqh

一方、本件反訴は、XがS社に対し、(1)主位的に、労働契約(本件労働契約)において「勤務時間を週3日、1日8時間、週24時間、勤務地、職種を介護事業所および介護職」と合意したにもかかわらず、同社の責めに帰すべき事由により当該合意に基づき就労することができなかったと主張して、本件労働契約に基づく賃金請求として、(a)平成28年5月から31年3月までの未払賃金230万8425円および遅延損害金、(b)31年4月から本判決確定の日まで、毎月月額賃金10万4290円および遅延損害金、(2)予備的に、29年8月以降のシフトの大幅な削減は違法かつ無効であると主張して、本件労働契約に基づく賃金請求として、(a)29年9月支払分から令和2年3月支払分までの未払賃金207万9751円および遅延損害金、(b)令和2年4月支払分から7月支払分までの未払賃金27万5668円および遅延損害金、(c)同年8月支払分以降の賃金として、同年8月から本判決確定の日まで、毎月6万8917円および遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXについて>

★ S社は、介護事業および放課後児童デイサービス事業を営む会社である。

★ Xは、平成26年1月、S社と労働契約(以下「本件労働契約」という)を締結し、シフト制で介護業務等に従事していた者である。なお、地域ユニオン(以下「本件組合」という)に加入している。

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<雇用契約書の記載、Xの勤務日数・時間等について>

★ 本件労働契約の雇用契約書には、勤務日・時間に関し始業・終業時刻のほか「シフトによる」との記載のみがあり、業務内容は空欄、就業場所は各事業所とされ、主たる事業所の記載はなかった。

▼ Xは入社以降、複数の事業所にて介護業務に従事したが、28年1月頃から児童デイサービスの勤務シフトにも入るようになり、29年2月以降、児童デイサービスでの勤務のみとなってからは不当配転だと考えるようになり、異議をとどめて業務に従事していた。なお、児童デイサービスにおける勤務シフトは原則として午後の半日勤務であった。

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