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#200 「P社事件」東京地裁(再掲)

2008年1月23日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第200号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【P社事件・東京地裁判決】(2006年11月10日)

▽ <主な争点>
労基法上の管理監督者に該当するか/パソコンログデータによる労働時間算定

1.事件の概要は?

本件は、P社に従業員として雇われたとするXが、在職期間中の時間外賃金、過重労働とワンマン代表者の暴言により体調不良となったことによる治療費と精神的損害、さらには弁護士費用および新株予約権の確認を請求したもの。

P社は、Xが労働基準法上の管理監督者であるため、深夜割増分を除いて時間外賃金は発生しないこと、Xの体調不良はP社における勤務と関係がないこと、新株予約権は社内規定による消却処理によって消滅していることなどを主張して、Xの請求をいずれも争っている。

2.前提事実および事件の経過は?

<P社およびXについて>

★ P社は、平成15年5月に設立された、ベンチャー企業に対する投資、経営コンサルタント業、有料職業紹介事業などを目的とする会社である。同社は人員が10人以下で就業規則を有しておらず、所定時間外の労働に対する賃金支払いの合意もない。

★ Xは、インターネットのジョブエンジンの採用情報を通じて、P社がパートナーを募集していることを知り、17年2月、これに応募し、2回の面接などを経て、同年3月、P社から内定の通知を得た。通知の内容は次のとおりであった。

1.入社日  17年4月1日      2.職 制  パートナー
3.試用期間 3ヵ月        4.勤務地  本社
5.勤務時間 9:00~18;00 6.給与 28万円(※営業交通費含む)
7.待 遇  半期年俸制・プロジェクトインセンティブ
       通勤交通費全額支給・各種社会保険完備
8.支 給  引越一時金 10万円支給

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<P社の職制組織、時間管理等について>

★ 17年6月時点におけるP社の職制組織図には、社外役員を除いて代表取締役であるAの他にはB、C、DおよびXが表記されており、また、同社の18年4月からの新卒者(パートナー候補)募集の広告には従業員数8名とされ、自社企業紹介欄には「P社では社員をパートナーと呼んでいます。全員がパートナーであり、・・・」と表記されている。

★ XはP社入社後、会社の管理部門の仕事としては経理・労務を担当し、営業部門の仕事としてはオフィスを担当することとされているが、部下はいない。

★ P社においては、特に出退勤時間をタイムカードなどにより管理しておらず、日課として朝9時過ぎに会社のスタッフ全員が集まって当日の各人の予定を確認し合い、日中はホワイトボードの各人の名前の欄に仕事先とか所在を記入しておき、帰宅までの一日の所在、業務状況を明らかにするようにしている。

★ Xは、同年7月以降はP社が時間管理をしないことに疑問を抱くなどして、自己の手帳に日々の勤務時間を記していた、

▼ XがA代表から仕事上の厳しい叱責を受けるようになったのは同年9月に入ってからのことであるが、A代表の言動にP社での仕事のやる気をなくし、同月末、同社を退社した。

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<新株予約権の発行および消却について>

▼ P社は、同年6月の取締役会の決議で、株主ではないXに対して新株予約権を発行して無償で10個(10株)を割り当てる旨の決議をしたが、当該決議において併せて当該新株予約権の割り当てについて、「新株予約権を割り当てられた者のうち、当会社の取締役および監査役ならびに従業員については、権利行使時においてもそのいずれかの地位にあることを要す」という条件を付している。

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