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#356 「名古屋商工会議所事件」名古屋地裁

2014年3月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第356号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【名古屋商工会議所(以下、N会議所)事件・名古屋地裁判決】(2012年8月21日)

▽ <主な争点>
業務委託契約が実質的な労働契約となるかなど

1.事件の概要は?

中小企業診断士であるXは中小企業再生支援業務を行う者として経済産業大臣の認定を受けた機関であるN会議所と業務委託契約書(有効期間 平成20年7月1日から21年3月31日)を交わし(本件契約)、以後同一内容での契約更新を経たが、同会議所より23年3月、契約更新をせず同月末をもって本件契約関係が終了となる旨を告げられた。

本件は、Xが本件契約は有期労働契約であって契約の終了は雇止めであり、これを無効と主張して、N会議所に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、未払賃金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N会議所およびX、同会議所の中小企業再生支援業務等について>

★ N会議所は、主に名古屋市内における商工業の総合的な改善発達を図り、かねて社会一般の福祉の増進に資することを目的として商工会議所法に基づいて設立された法人である。

★ Xは、中小企業診断士であり、かつてT社に勤務し、平成20年3月をもって同社を定年退職した者である。

★ N会議所は産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法41条に基づき、愛知県において中小企業再生支援業務を行う者として経済産業大臣の認定を受けた機関である。

★ 認定支援機関であるN会議所には上記特別措置法42条に基づき、認定支援機関が行う中小企業再生支援業務の具体的内容、実施体制の確保その他の中小企業再生支援業務の遂行に関する重要な事項を審議し、決定するほか、認定支援機関に対する専門的な助言を行う協議会として、愛知県中小企業再生支援協議会(以下「本件協議会」という)が置かれている。

★ N会議所に置かれた中小企業再生支援業務部門には本件協議会事業実施基本要領に基づき、統括責任者およびこれを補佐する者が配置されている。同会議所の代表者は地域の実情を考慮し、中部経済産業局の了承を得た上で中小企業や事業の再生等に相当の知見と経験を有する者の中から統括責任者を、中小企業や事業の再生、経営企画、マーケティング、事業計画の立案等に知見を有する者の中から統括責任者補佐をそれぞれ選任する。

★ 支援業務部門は中小企業の再生に係る相談(窓口相談)および窓口相談で把握した相談企業の状況に基づき、再生計画策定支援を行うことが適当であると判断した場合には外部専門家(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、金融関係者等)を活用しつつ、当該企業の再生計画の策定の支援を行っている。

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<X・N会議所間の契約等について>

▼ Xは平成20年2月、N会議所による「中小企業再生支援マネージャー募集」の新聞広告に応募し、書類選考および面接を経て、同会議所から同年4月、「採用内定書」の交付を受け、同年7月、N会議所との間で「業務委託契約書」を交わし(以下「本件契約」という)、以後、同一内容での2回の契約更新を経て、23年3月31日まで、統括責任者補佐として認定支援機関の支援業務部門において窓口相談および再生計画策定支援の業務に携わった。

★ 本件契約で定められたN会議所からXに対する日額3万円の支払いは謝金の名目でされ、所得税法204条1項、205条に基づく10パーセントの源泉徴収がされた。なお、社会保険料の控除はされなかった。

★ N会議所は国(中部経済産業局)からの委託を受けて愛知県における中小企業再生支援業務を実施しており、その委託業務の実施に要した経費は人件費も含めてすべて国から委託金として支払いを受けている。なお、平成22年度の委託金の上限額は1億2197万7108円であったところ、中部経済産業局は23年1月、本件協議会に対し、前年度比約20パーセントの減額要請をし、その結果、平成23年度の委託金の上限額は9748万1525円と定められた。

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<本件契約関係終了の通知に至った経緯等について>

▼ N会議所はXに対し、23年3月9日、本件契約について、同月末で期間満了となるところ、引き継ぎがあるため同年5月末までとしたい旨を告げた。これに対し、Xが契約関係終了となる理由の説明を求めたところ、同会議所はXが担当した案件に関するクレームなどについて述べた。

▼ 同月17日、X・N会議所間の面談において上記クレーム外について双方の言い分が述べられ、また、同会議所から中部経済産業局の要請に基づく予算削減により、管内のすべての協議会で人員削減が模索されている旨の説明がされた。

▼ N会議所はXに対し、同月28日、契約更新をせず、同月末をもって本件契約関係が終了となる旨告げた。

3.中小企業診断士Xの言い分は?

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