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#142 「大阪医科大学事件」大阪地裁(再掲)

2006年6月28日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第142号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【大阪医科大学(以下、O大学)事件・大阪地裁判決】(2005年9月1日)

▽ <主な争点>
電話交換手の職種変更/職種限定合意

1.事件の概要は?

本件は、電話交換取扱者資格試験に合格し、所定の訓練を経て電話交換手の資格を取得後、技能員としてO大学に採用されたXが約30年間電話交換手として勤務してきたところ、電話交換業務の外部委託化によって、O大学から物流センター事務員に配転された(以下「本件配転」という)ことについて、無効確認を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<O大学およびXについて>

★ O大学は、教育基本法および学校教育法にしたがい、医科大学その他の教育施設を設置することを目的とする学校法人である。

★ Xは電話交換手としての資格を取得した後、昭和48年9月にO大学に採用され(以下「本件労働契約」という)、それ以降、約30年間にわたり、同大学の総務部総務課技能員として電話交換業務に従事した。

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<本件配転に至るまでの経緯等>

▼ O大学では平成8年から3カ年度にわたって財政赤字に陥ったことから、13年5月、中期5ヵ年経営計画を決定し、経費削減策として、職員の定員の見直し、業務の外注委託化等を推し進めていたが、その一環として、14年4月頃からXを含め5名が従事していた電話交換業務についても外注委託する方針を具体化し始めた。

▼ 14年9月、O大学はXら電話交換手に対し、「電話交換業務の委託化について」と題する文書を配布し、電話交換業務の外注委託化に向けたスケジュールを示した。

★ 同スケジュールは15年10月より外部委託化への研修を開始し、16年4月より電話交換業務すべてを外注委託し、Xら電話交換手を配転するというものであった。

▼ 14年12月頃、XはH地域労働組合(以下「組合」という)に加入し、組合とO大学はXの配転問題を団体交渉事項として交渉した。そして、O大学は団交において、電話交換業務を外部に委託し、Xら電話交換手を配転するとの考えを示した。

▼ O大学は16年3月、組合とXに対し、Xの配転先についての説明を行い、O大学の子会社への出向を打診したが、Xが承諾しなかったため、大学および病院で使用する物品の調達、管理および運営を分掌事務とするO大学の物流センターを配転先として打診し、同年4月、物流センター事務員への配転の意思表示をした。

▼ Xは本件配転後、物流センターにおいて、薬剤の運搬作業等に従事したが、モートン病という足に痛みの生じる疾患を発症したため、同年8月から座ったままで大半の業務を行うことのできる軽作業に従事するようになった。

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<O大学の就業規則およびXの給与について>

★ O大学の就業規則にはXの採用当時から「本学は必要あるときは、職員に対し、転勤を命じ、職種を変更することができる」との規定があった。

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