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我々は何者なのか…法務成長戦略の行方

これは、法務系 Advent Calendar 2017への投稿ノートです。(#legalAC

caracalooさんからバトンを受け取りました、みねメタルと申します。現在は法務何でも屋さんから取引法務屋さんにジョブチェンジして日々業務に精励しております。ハードルは私が下げる!


はじめに


さて、私は何を勘違いしたのでしょうか…

「今年は年末に向けての業務に余裕がありそうかな~」と特段の根拠なく思い込み、毎年ROM専だった法務系Advent Calendarに初めて参加させて頂くことにしたものの、いざ12月に入ると…もう大変です。

ということで、十分な推敲もせず投稿することをお許しください。

サントス豆の珈琲などを飲みながらご笑読頂ければと思います。


我々はどこに行くのか、我々は何者なのか。


ゴーギャンの作品のタイトルの一部といいたいところですが、機動警察パトレイバー劇場版で後藤喜一が言っていたものです(56分30秒頃)。

最近は、AIやLegal Tech、ロボット、ついでにドローンや自動運転技術に関するニュースを目にしない日はないといった時代ですが、そういったニュースに接していると、我々、つまりは法務パーソンの働き方もどんどん変化するんだろうなという漠然とした感覚が生まれます。

いえ、むしろ、変わらないとまずい、変わらなきゃやっちゃえ、などと、法務パーソンたるものどこかの企業広告の歴代キャッチフレーズを胸に秘めて成長を目指さないといけないのではないかという熱い気持ちまで生まれてくる始末です。

仕事が消えるというネガティブな側面が強調されることもありますが、個人的にはもっと開発が加速して多様なサービスが生まれてほしいと願っています。正直、ニーズはそこら中にあると思ってます。

つい数十年前までは全文手書きの契約書があったり、製本する場合はキリで穴をあけてひもを通し、特殊な結び方をして袋とじをする(製本テープではありません!)ことも多かったそうですが、この時代に戻りたい人は多くはないと思います(字を書くのはうまくなるかも?)。進化は正義です。

Viva, Legal Tech!

もちろん、AIやLegal Techに仕事が奪われては困るのですが、法務パーソンの業務にとってのSingularityは一般のそれと比べて少し先かなという感覚があります。

ある有名なAI開発者とお話をさせて頂いた際に、「自然言語はまだまだ難しいと思うよ~定型的な契約書の作成とか高度な検索とかはできるかもしれないけど」と話されて、え、ほんとですか?と根掘り葉掘り質問した結果、なるほどなあと思ったのが背景にはあるのですが(詳細は黙秘)、とくにAIの事業化を念頭に置いた場合、他の業務領域におけるAIの話とは状況が異なるのかなと考えております。結局、採算性の問題が大きいようですが、前提として、色々な意味で定型化が困難であるというのがポイントかも、と思います。

(はっしーさんのこちらのエントリを拝見すると、意外と早いかも?と思わないではないですが。)

AIやLegal Techは、業務をまるごと代替するというより、支援、補助という方向性で開発が進展して行くことになるのだと想像できますので、今後の法務パーソンとしては法務系のAIやLegal Techをどう使いこなしていけるかが重要なスキルやリテラシーになるのかもしれません。


事業部門とのお付き合いの仕方


AIやLegal Techによって法務パーソンそのものが不要になることは当分ないのだとしますと、むしろ、法務パーソンにとって重要なのは、利益を生み出す事業部門とどのように役割分担をして行くか、なのではないでしょうか。なにせ、法務部門はともすれば単なるコストセンタとして必要最小限の存在であればよいという判断が経営上行われやすいわけですし。「なにそれ美味しいの」「知らない子ですね」「オマエ、イラナイ」とならない保証はないわけです。それは、困ります…

法務パーソンの役割は所属されている組織によって千差万別なので、お付き合いの仕方といっても統一的な答えが出る話ではないのですが、「事業会社の法務パーソン」という視座に立って状況を認識した場合、こんなところが大切かなというポイントは出てきます。

まず、法務部門に所属する法務パーソンが企業内で担っている役割を考えてみると例えば…

・外部専門家とのコミュニケーションを担当する、または支援する
・公的機関、とくに法執行機関とのコミュニケーションを担当する、または支援する
・組織内の他部門の業務に関し法的な側面での業務を分担する、または支援する
・組織の運営が法的に問題ないように管理する、または運営を支援する
・組織の運営を記録する、または記録を支援する
・法的な紛争解決手段を用いる際の手続遂行を担当する

といった役割を想起することができると思います。

抽象的ですが、会社の事業という視点からすると、縦串の役割というより横串の役割を担っている面が強いという印象を抱きます。これをブレイクダウンしていくと、紛争(訴訟)法務だったり、取引(契約)法務だったり、コンプライアンス業務だったり、役員会運営だったりと具体的な業務が出てくるというイメージでしょうか。

まあ、こうしてみると、部門単体では利益を生み出してはいないですよね。

それ以上に、別に法務じゃなくてもできるんじゃ…といえなくもないですよね。弁護士や官公庁とのコミュニケーションは、なんとなれば事業部門が直接やればすむことですし。

それにもかかわらず独立した法務部門が存在するのは、

① 事業部門内でやろうとすると、うまくいかないから
② 複数部門に同じ機能の部隊が置かれると無駄なのでおまとめするのが合理的だから

といった点が大きいからだと思います。とくに①は決定的ですよね。同一部門内では抑制・牽制が働かない。日産の問題神戸製鋼の問題三菱マテリアルの問題東レの問題、いずれも法務部門との協働が働かず事業部門のみで問題を解決しようとした結果のように感じます。

ここまで事実が積み上がってしまっていると、法務としては広報などと協働してひたすらダメージコントロールに努め、収束したのちに再発防止のためのコンプライアンス活動をするしかないんだと思いますが、正直、

「それさぁ、早く言ってよ~」

という思いを抱かざるを得ないところです。

そこで法務部門としては、事業部門が取引を実行する前に抑制・牽制することでリスクの現実化に至らないようにする役割を担うことになるのだと思います。プラントビジネスの世界ではコールド・アイ・レビューという発想があるようですが、法務は本来的にこの役割を負っているのだと考えております。

ただ、極端に言うとリスクはあくまでリスクであって現実化しなければ何の問題もないともいえるわけです。事業部門からすると、取引相手と十分なコミュニケーションを経て取引実行をしようとしている場合、法務が会社の成長チャンスをつぶそうとしているだけ、ということにもなりかねない。とくにビジネスを理解してない法務担当者が講学事例を前提とした法的議論を振りかざしたりするとなかなか大変なことになります。

だからといって事業部門に遠慮していると会社が倒産するような問題が発生してしまう…難しいところですが、法務が最終的な意思決定をする立場にないことからすると、法務としての役割は、法的リスクに関する十分なコミュニケーションをして会社としてどこまでやるべきなのかを一緒になって考えることに尽きるのかもしれません。

言ってしまえば、法務コミュニケーションにおけるインフォームドコンセントということかもしれません。わかりやすく説明する、ケアする、寄り添う、一緒になって考える、できないことを代わってあげる。これって、医療の場合の役割と似ているのではないでしょうか。

発生したもめ事を解決することとこれからやろうとすることにアドバイスすることの他で法務部門に求められている役割としては、重要性の高い案件についてプロジェクトメンバーとしてアサインされることがあるでしょうか。大型のEPC取引案件、提携案件そしてM&A案件などですが、おおむね法務部員が1名ないし2名アサインされ、主に法的な評価や手続遂行を担当することになります。ただし、あくまで主導するのは事業部門や経営企画部門ですよね。

最近はM&A業務への関与が法務の花形とされますが、関与の仕方を見ていると、やっぱり数字を握っているところは強いな~と思わないではないです。

以上、長々と書いてしまいましたが、確認したかったのは要するに、

「事業部門あっての法務部門」

であります。身も蓋もないですが。まあ、謙虚さは必要です。


我々はどこに行くのか


最近では、攻めの法務とか、企業価値向上型コンプライアンスとか色々と新しい言葉が生まれていますが、法務パーソンとしてどう理解して消化すればよいのかよくわかっておりません。ただ、組織の権利と利益を擁護し、行うべき義務と責任の履行を促し、よってもって企業の成長に貢献するのが役割だとするならば、そのような視座に立って大局的に既存の業務のあり方を変える必要があるのかもしれません。その中でどう成長していくか。

個人的に考えているテーマは次のような内容です。

①事業接着性の強化
②提案営業力の強化
③客観性の維持
④漁網の整備

何屋だとか言わないでください。法務屋です。

①事業接着性の強化

攻めの法務としては、状況を先取りしておく必要があります。事件は現場で起きるものですので、できるだけ現場に行き、生の事実を拾うことが必要だと思っています。事業部門から距離をとるのではなく接着する、コバンザメ戦法で法務業務を発見していくことが重要だと思っております。

個人的に今年一番のヒットワードは「トクサイ」です。いや、まさか特別採用をああいう方向で運用するという発想が生まれるのかと感心してしまったのですが、リスクはどこに潜んでいるかわからないですね。事業接着性を強化してリスクの発掘に努めたいです。

②提案営業力の強化

基本的に事業部門は法務に興味はありません。どのように興味を持ってもらうか、お役に立てますということを理解してもらい、事業部門にファンを獲得することも必要です。外部コンサルを提案営業力を参考にして法務としての事業貢献力をアピールすることも重要だと思っております。

③客観性の維持

とはいえ、ミイラ取りがミイラになってはまずいので、法務パーソンとしては徹頭徹尾、客観性、第三者性を維持する必要があると思います。ミイラになりたくなったら、ジョブチェンジの時期かもしれませんね。

④漁網の整備

漁師さんは時化で漁に出られない時は仕事道具である網の点検をするそうですが、法務も時間がある時は、自己研鑽や雛型やチェックリストの点検、アップデートをするべきではないかと思っています。さらに、事業部門でどのように契約が運用されているか監査を行うことも有益ではないかと考えています。

これらは業務上の話ですが、個人としての成長も同様ではないかと考えています。

ただですね、最後はスピード感ではないかと考えています。

事業のスピード感と法務のスピード感は一致しないことがほとんどだと思います。とくに、営業と法務の感覚の違いは如何ともしがたいのではないか。開発はまだましかもしれません。外部専門家に依頼する場合、適時適切なアドバイスを頂けると高い満足を得られるわけですが、同じことは事業部門と法務部門の関係でも言えるのではないか、と思います。

ここで重要になってくるのが、AIやLegal Techといった技術を使いこなしてジャストインタイムな対応をすることですが、これを可能にしてくれるサービスがあまりないんですよね。

個人的には、BIツールと融合した法務業務プラットホームがないものかと思うんですが、見た感じないんですよね。ワークフローに法務も使えそうな機能を追加した製品はあるようですが…


成長戦略の行方


ということで変化の予感を感じる昨今ですが、AIやLegal Tech、RPAもかもしれませんが、これらを有効活用しつつ事業部門への貢献力を高めることが法務パーソンとしては重要だと考えております。もちろん、嫌がられることをガンガンいうことも含めて、事業のゆりかごから墓場までお付き合いするのが大切なのでは、と思います。

まあ、ゲートキーパーとしての役割も重要ですが、なるべくなら伴走者でありたいですね。

そして、変化の予感があるからこそ、法務パーソンとしては基本のキを大切にしたいと考えております。その場合、やはり重要なのは、「意思」の存在なんだと思います。何だかんだで意思を抜きにして法は成り立たないと考えております。

さらには、その背後には、人権感覚が大切なのではないかと最近感じております。どのような業務をするにせよ、直接的な判断基準や規範にはなりませんが、究極的な感覚として人権を意識することは法務パーソンのみが業務上持ち得る特性になるのではないかと感じています。

皆さんはご自身の成長戦略、どのようにお考えでしょうか?

明日は、kaneko(kanegoonta)さんです。

どうぞよろしくお願い致します。

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