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ヒッピーと消費社会により広まった海外:60年代以降の日本の「海外」

先日、『引きこもりバックパッカー:マイペースにゆるく海外を旅する思考法』という本をKindleにて出版しました。期間限定で1節毎無料公開しています。
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日本に居場所がないなら海外を旅すればいい。「海外に興味があるけどハードルを感じている」「これまでと違った景色をみたい人」「引きこもりがちな人」
そんな人たちがこれまでよりも旅が身近になるような、マイペースなゆるい旅とは? 海外旅に興味がある人、引きこもり生活に飽きた人、新しい自分に出会いたい人、必読。”引きこもりながら”海外を旅してきた筆者が提唱する、脱力系バックパッカー論。
りょいち                                 1997年生まれ。東京都出身。同じFラン大学に2度落ち、行ける大学がなくなる。約3年間の引きこもりの後、中学英語もわからない中、初海外で所持金6万円とバックパック1つ単身でジョージアへ。それがきっかけでそのまま4ヶ月間で計15ヶ国を旅した後、ワーホリビザで2ヶ月間オーストラリアへ。帰国後はインターンを経た後、ベンチャー企業でフリーランスとして活動しつつ、自身でIT企業を起業。
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


ヒッピーから生まれたバックパッカー


 60年代以前の日本の海外渡航に観光旅行はありませんでしたが、60年代以降には観光旅行が増えていきます。その要因は主にカニ族と高度経済成長にあります。

「カニ族」とは、横長 のリュックサックを背負って国内旅行をしている人たちのことで、その荷物がカニの甲羅のように大きく、彼らが列車内等で横向きに歩いていたことから、「カニ族」と言われていました。60年代後半から70年代後半に流行したカニ族が、現在の日本のバックパック旅行に直接つながる系譜になると言われています。

 「引きこもりバックパッカーとは」にも前述したように、バックパッカーの原点はヨーロッパにあるとされていますが、歴史的に引き継がれていった習慣ではなく、大規模な観光現象としては、ヒッピーの放浪旅行がバックパッカーの原点です。それはこのカニ族が誕生するきっかけの一つでもあります。ヒッピーは60年代のアメリカにおけるベトナム戦争への反対運動が発端で誕生しました。(注12)
 
 そんな彼らの旅は60年代欧米におけるシステム化された社会への疎外感から実践されたもので、それに代わる生き方を求める運動の一つでした。(注13)

 このようにヒッピー運動に原点を持つ、アメリカ西海岸の放浪旅行がメディアを通して日本に伝わってきたことが、カニ族の発想につながったのではないかといわれています。


第二次世界大戦後の消費社会の始まり


 そして、もう一つは、高度経済成長の末の消費社会の始まりの時期と一致していることです。第二次世界大戦の集結から20年ちかく、日本人は自由に海外を旅行できませんでした。

1952年に連合国最高司令官総司令部(GHQ)による占領が終わるまで、日本ではすべての海外渡航が厳しく管理されていたのです。しかしGHQによる占領終了後、今度は日本政府が日本人の海外渡航を制限します。戦争で疲弊した国力を守るため、貴重な外貨を国外へ持ち出すことを規制したのです。

そして東京オリンピックが開催された1964年、外国為替及び外国貿易管理法が改正されたことで、海外旅行が自由化されます。当時は、年1回のみ・持ち出し上限ひとり500ドルという条件がつけられていました。(注14)

 徐々に経済が豊かになっていったことで、機能的な価値を重視するモノ消費から、経験価値を重視するコト消費へと価値転換がされていきます。こうして海外旅行が自由化されたことで日本人の海外旅行者数がどんどん増えていきました。

 カニ族の流行もアメリカのヒッピー文化のような、対抗文化的な「精神的」潮流というよりも、日本の豊かな社会が作り出した消費社会に影響を受けたもので、交通や宿泊など物理的な条件によっても促されました。
国鉄が北海道で20日間自由に急行電車を乗り降りできる周遊券を発行したことや、ユースホステルが数を増やし、安く宿を提供していたこと、そして中流家庭の可分所得が増えたことなど、そもそも旅行を捉進する要因が「カニ族」の流行をさらに後押ししていたのです。 (注15)

 このように、60年代以降はアメリカの放浪旅行が日本に伝わってきたこと、豊かになった日本社会のモノ消費からコト消費に変わったことにより、どんどん観光旅行が増えていきました。

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次回は第1章「半額セールになった海外」を無料公開します。

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(注12):大野哲也,(2007),「商品化される「冒険」-アジアにおける日本人バックパッカーの「自分探し」の旅という経験」,『社会学評論』第58巻268ー285

(注13):須藤廣,(2008),「消費社会のバックパッカー-日本人バックパッカーの歴史と現状-」,『北九州市立大学文学部紀要(人間関係学科)』第15巻47−66
(注14):山口 誠 (2010).『ニッポンの海外旅行-若者と観光メディアの50年史』(筑摩書房、2010年)、29・30頁


(注15):須藤廣,(2008),「消費社会のバックパッカー-日本人バックパッカーの歴史と現状-」,『北九州市立大学文学部紀要(人間関係学科)』第15巻47−66

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