Ⅰ．百合とは何か

　百合とは、一般的に友愛や恋愛をはじめとした女性同士の多様な関係性を指します。あなたが百合だと思ったものが百合です。自分を信じてください。

Ⅱ．百合Q＆A

Q．百合とレズって何が違うの？

A．百合のなかにレズビアンが含まれます。「百合はプラトニック、レズはエロいやつ」という解釈をされている場合がありますが、誤りです。そもそも百合が関係性の名称であるのに対してレズビアンは個人の性的指向の名称であり、これらを同列に語ることはできません。百合のなかには、レズビアンとして女性を愛する女性も含まれますし、もちろん女性に恋愛感情を抱かないヘテロセクシャルの女性も含まれます。

Q．百合って「お姉さま」みたいなやつ？

A．「お姉さま」みたいなやつはいわゆるシスターフッドと呼ばれる百合ですが、百合をシスターフッドだけだととらえるのはもったいないと思います。
　百合とシスターフッドについて、東園子「女同士の絆の認識論 : 『女性のホモソーシャリティ』概念の可能性」（年報人間科学２７巻、２００６年３月）に、次のようにあります。

「シスターフッド」は、女同士の連帯や緊密な結びつきを示すフェミニズム用語である。家父長制下に置かれている女性たちがそれに対抗して獲得すべき絆として、この概念は一九六〇年代からの第二波フェミニズム運動の推進に大きな役割を果たした。しかしながら、社会関係の分析に「シスターフッド」を用いると、この概念の有する理念的・規範的な性格に当てはまらないような関係性を扱いにくいのではないだろうか。

　東氏は、従来の女性同士の関係性の分類として「シスターフッド」、「レズビアン連続体」を挙げ、そのうえで「女性のホモソーシャリティ」という新たな関係性を提唱しています。従来の枠にとらわれない新たな関係性のあり方を探る、という点では「女性のホモソーシャリティ」は「百合」と共通する部分が多いと考えます。ただし、「百合」には「シスターフッド」、「レズビアン連続体」、「女性のホモソーシャリティ」、これらすべての関係性が包括されている、もしくは包括できる可能性があるのではないかと考えます。

Q．なんでGLじゃなくて百合って呼ばれてるの？　BLはBLって呼ぶよね？

A．ガールズがラブしてるだけが百合じゃないからです。
歴史的背景としては、１９７６年１１月、日本初のゲイ雑誌『薔薇族』第４６号の文通欄に登場した「百合族の部屋」が百合という言葉の発祥なのではないかと言われています（「尊い！　女の子と女の子」「ダ・ヴィンチ」（第２５巻第３号通巻２８７号、平成３０年３月）を参照）。ちなみにBLも薔薇と呼ばれていた時期がありましたがあまり定着しませんでした。個人的にはボーイズがラブしてるだけがBLじゃないと思うので、BLに代わる新たな言葉が登場するのを待っているのですがなかなか難しそうです。良い案があれば教えてください。

Q．百合に挟まりたい男って殺してもいい？

A．ダメです。
「百合に挟まりたい男問題」には大きく分けて２つの問題点が含まれていると考えます。１つ目は、「百合に挟まりたい」のが問題なのか、「男が挟まる」のが問題なのかという点です。まず「百合に挟まりたい」についてですが、百合の楽しみ方は本来自由であり、現実の自分の肉体に縛られることなく好きな立場、好きな視点で楽しむことを推奨したいとわたしは考えます。よって、「百合に挟まりたい」と思うこと自体は制限されるべきではないと思います。次に「男が挟まる」についてですが、ここでまず考えたいのは「女が挟まる」のはいいのか？　という問題です。「百合無罪」という言葉に代表されるように、「女が挟まる」ことは「男が挟まる」ことよりも圧倒的に許されています。しかし、わたしはこの風潮に異を唱えたいと思います。「挟まる」ことを悪とする場合、それは「第三者が既存の関係性を破壊する」ことであり「加害」であるからだと考えるのが適当です。加害者が男であろうと女であろうとその罪は等しく許されるべきではありません。また、予想される反論として「百合っぷると３Pしたい男は？」というものが挙げられますが、それは基本的には３Pであって百合ではありません。「同じ男が好きな女」も「同じ男とセックスした女」も百合ではありますが、強いこだわりと確信を持って３Pを百合と説明できるのでなければ無理にそれを百合にカテゴライズする必要はないのでは、と思います。
２つ目は、百合を観測する場合、どこからが罪に当たるのかという点です。女が実在するしないに関わらずその関係性は確かに実在するものです。ここで、その関係性を観測イコール消費することは挟まるにしろそうでないにしろ罪深い行為なのではないか、という問題が浮上します。自分が任意の関係性を消費しているということへの罪の意識がないまま条件反射で「百合に挟まりたい男」を叩いているのだとしたら、「百合に挟まりたい男」よりもよほど愚かだと思います。
以上の２点を踏まえたうえで、罪を犯したことのない者だけが石を投げてください。わたしは投げられません。

Q．男子禁制のイメージがあるのですが実際そうですか？

A．そうでもないです。
男が登場する百合作品も存在しますし、作者・読者ともに男性の方もたくさんいらっしゃいます。もちろん、いわゆるエスやシスターフッド（p.2にて前述）のような百合では全寮制の女子校を舞台にした作品も多く、男子禁制的なイメージはおそらくそのあたりに由来するものなのではないかと推測します。しかし、この世界に男が存在する以上、そのような作品においても男を完全に排除することは難しいのではないかと考えます。男から隔離された状況の不自然さはかえって外界における男の存在を強調する効果があるともいえます。
なんにせよ、前述した「加害」にだけ気をつけていただければ特に男子禁制ということはないです。お気軽にどうぞ。

Q．書店などで百合コーナーがなかなか確立されないのはなぜですか？

A．難しい問題ですが、大きな要因のひとつとして百合専門のレーベルと新刊の数が少ないことが挙げられるのではないかと考えます。
　例えば、BLは一般の書店にもコーナーがあることが多いです。なぜかというと、BL専門のレーベルとそこから出る新刊の数が多く、さらにBLと非BL作品（便宜上こう呼びますがBLと銘打たれていない作品、という意味です）がはっきり分かれているからです。具体的な数字を出してお話しすると、２０１９年７月の百合作品の新刊は４７冊（百合ナビ（http://yurinavi.com/）を参照）、同じく２０１９年７月のBL作品の新刊は２２４冊（ちるちる（https://www.chil-chil.net/）を参照）です。一目瞭然です。桁が違うのです。
　というわけで、一般の書店に百合コーナーができるまでの道のりはまだ険しいものがあります。しかし、百合に力を入れて展開している書店もあります。例えば、「書泉百合部」です。秋葉原の書泉ブックタワー８Fと神保町の書泉グランデ２Fには「書泉百合部」の精鋭たちによって選りすぐられた素晴らしい百合コーナーがあります。お近くにお住まいの方はぜひ一度いらしてください。

Q．タイトル思い出せない百合漫画があるんだけど？

A．一応わたしに訊いてみてください。わかる可能性があります。あまり期待しないでください。

Ⅲ．本日のメニュー

ⅰ.まえがき

　世の中には素晴らしい百合作品がたくさんあります。しかし残念ながら全てを紹介するのは不可能です。本当に残念。そこで今日は、入門書を除き雑誌などのメディアであまり取り上げられていない百合作品をピックアップしたいと思います。よろしくお願いします。

ⅱ．入門書

・『百合の世界入門』仲谷鳰ほか、玄光社、２０１６年

「同好の士よ、あなたに本書を捧げます。」

　百合が読みたい、でもどこから手をつけていいのかわからない、という方にはこれ。ほのぼの系、シリアス系、ラブコメ系、ファンタジー系、アダルト系などジャンル別に表紙とあらすじが紹介されているのでお気に入りの百合が見つかること間違いなしです。

・ 「尊い！　女の子と女の子」「ダ・ヴィンチ　２０１８年３月号」綾奈ゆにこほか、KADOKAWA、２０１８年

「女の子同士の関係性にときめいたら、それが百合――。」

　年表、インタビュー、入門ガイドなど内容が充実しており、決して多くはないページ数ながら初心者から歴の長い百合ファンまで楽しめる内容になっています。

・「百合文化の現在」「ユリイカ　平成２６年１２月号」今野緒雪ほか、青土社、２０１４年

「私もあなたも常に既にじゅうぶん気持ち悪いのである。」

　百合に関する学術的な論文を読みたい人におすすめ。フェミニズムやレズビアニズムに絡めた論文も多め。２０１４年とかなり前に書かれたものですが、内容はかなり先進的です。

・「百合特集」「S-Fマガジン　２０１９年２月号」宮澤伊織ほか、早川書房、２０１９年２月

「私の欠落はこのとき埋まってしまった」

　今をときめく百合SF特集です。特集小説とコミックのクオリティがすごいです。特に宮澤伊織先生の「キミノスケープ」はいわゆる「不在の百合」というかなり画期的な百合です。百合が概念になりつつあるのを感じます。時代はここまで来たか。

ⅲ．漫画

・『隣の彼方』香魚子、集英社、２０１０年

「わたし　もう　頭が　どうかしちゃってるの」

　短編集。「Keep a diary」が百合です。交換日記から始まるふたりの関係は徐々にすれ違い、歪んでずれていく。衝撃のラストは必見です。

・『呪われた心霊ゲーム』牧原若菜ほか、小学館、２００８年

「あんじ　私の親友なら　いっしょに死んで？」

　アンソロジー。姫川きらら先生の「親友ごっこ」が百合です。驚くほどバチバチに百合です。「隣のお屋敷に住んでいる着物姿の病弱な少女（黒髪ロング姫カット）」と聞いておやっと思う人は読んでください。ちゃおって百合多くない？　もりちかこ先生とかだいたい百合じゃない？　少女漫画百合は知名度的にはえばんふみ先生の『ブルーフレンド』一強な気がするのでがんばって布教したいです。

・『パターンその１　駄目人間』HERO、スクウェア・エニックス、２０１１年

「でも脱衣所で見たマリアの体は　私とよく似ていて　私はひどく安心したのだ」

　短編集。「マリアと過ごした３日間」が百合です。他者と違うことを恐れる年頃のふたりの手探りの関係性。百合です。

・『花と嘘とマコト』あさの、秋田書店、２０１５年

「ただ見ないようにしていた　この子をまた失くしてしまうことを」

　死んだ彼女と暮らしたあの夏のお話。永遠なんてきっとないけど、それでも。この季節に読んでほしい百合です。

・『夜をとめないで』ハルミチヒロ、白泉社、２０１４年

「あんたは一番ひどい方法であたしの事が好きだって言ってるんだよ」

　短編集。「はかなごと」が百合です。残酷な女って百合なんだよな。

ⅳ．小説

・『ラメルノエリキサ』渡辺優、集英社、２０１６年

「だからね、誰かを傷つけて犯罪者になるくらいなら、いっそ殺されて欲しいな。」

　通り魔への復讐がメインなんですけど、主人公の姉のキャラクターがじわじわと強烈。姉妹百合です。恋愛ではないですが。

・『行きたくない』阿川せんりほか、KADOKAWA、２０１９年

「金輪際、私を、あんたなんかと一緒にしないでよね！」

　アンソロジー。阿川せんり先生の「あなたの好きな／わたしの嫌いなセカイ」が百合です。阿川せんり先生はめんどくさい女を描くのが本当にお上手ですね。質感がすごい。何かを好きであるということ、理解できないものがあること、勝手に同一視とかしてみること。そういうお話です。百合です。

ⅴ．詩歌

・『＃百合短歌』れもんぜすた、merori、２０１９年

「星の降る夜を浮かべたティーカップ　一夜限りのワルツを君と」

　はーい宣伝です！　わたしの百合短歌本です！　１冊５００円です！　よろしくお願いします！

ⅵ．BGM

・Ivy / GUMI

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm25005757）

「優しい声で呼ばれている　私を示す名を　壊れるまで締め上げた　これで何時でも　一緒だね」

　アイビーの花言葉は「永遠の愛・友情・死んでも離れない」（ひとはなノート（https://hitohana.tokyo/note/3723）を参照）。これ以上語るべきことはないでしょう。百合です。

・charActer ／ 初音ミク、巡音ルカ　fullver.

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm11328205）

「非日常(アブノーマル)から逃げて　ずっとあのままで居たかった　私の忘れた籠の鳥　愛しい名前は『charActer』」

　エロティックな大人の百合。サビの調声と掛け合いが見どころです。

・magnet【初音ミク・巡音ルカオリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm6909505）

「夜明けが来ると不安で　泣いてしまう私に 『大丈夫』と囁いたあなたも　泣いていたの？」

　言わずと知れた名百合曲。DIVAの方のPVも遊郭風百合で良いのでぜひ。

・▶白ゆき　歌ってみた /めありー

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm28432016）

「もう一回僕らの長い人生に気取ってキスしたら」

　自分対自分って百合なんだよな。ちなみに『白ゆき姫殺人事件』という湊かなえの小説があるのですが、映画化にあたりなぜか強烈な百合ブーストがかかったので映画を観てください。

・「私とジュリエット」 オリジナル曲 Vo.初音ミク

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm29378902）

「さよなら　私だけのジュリエット たぶん私あなたが好きだった」

　「ロミオとシンデレラ」のアンサーソングです。悲劇を手放して初めてそれに憧れていたことに気づく。もう一人の自分、そうであったかもしれない自分、手に入ってしまった退屈なハッピーエンドが急激に色あせていくさま。百合です。

・【GUMI】 夜行線上のフライト 【オリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm21603423）

「泣かないでおくれよ　ねえシスター」

　ストーリー仕立てのクラシカルな百合。聖堂での逢瀬って背徳的ですね。「死んだあの子が見てる」のもバチバチに百合です。

・【GUMI・初音ミク】　アザミ　【オリジナル曲】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm21016064）

「薄れゆく意識の中で　だれかの幻見た気がした　可愛げに囁く言葉　『わたしから愛されていたいの？』」

　アザミの花言葉は「報復・復讐・触れないで」（Mayonez（https://mayonez.jp/topic/1007191）を参照）。殺しても手に入らないって百合なんだよな。

・【MAYU】　夕立のりぼん　【オリジナルPV】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm19302098）

「隠し事がしたいよ　したいよ　 “内緒だよ”」

　これも言わずと知れた名百合曲です。汗でブラウスが張りつくようなじっとりとした雨の日に聴きたい一曲。湿度の高い百合っていいよね。

・【エルム凪×リリィ】*＊転生祭＊*【オリジナル民族楽曲】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm27398003）

「それぞれの夢　叶うとき　いつの日かまた　きっと会える」

　「天界学園メフィルトワーネ　そこは、天使として生まれた者達が他の種族に転生する為の天界の学園。様々な想いを抱き、学び、新たな青春の日々を過ごす生徒たち　いつか訪れる、転生祭(卒業)の日まで…。」（天界学園メフィルトワーネ（https://erumunagi.wixsite.com/mefyllt-wane/top）より引用）
　異国の賛美歌のような響きのある民族音楽です。透明感のある声がどこまでも伸びていって美しいです。あと設定がド好み。転生って百合なんだよな。

・【ストーリーMV】 Hocus Pocus 【GUMI、ミク】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm19157547）

「世界を敵に回した日から　僕らは時間を刻み始めた」

　「誘拐と虐待、そして信じることをテーマにした物語です　『HocusPocus』は魔法の呪文　鬼灯の花言葉は『嘘』」（作者コメ転載）
　誘拐って百合なんだよな、とは安易に言えないです。どんな理由があっても、愛があっても、誘拐は犯罪であり加害になりうるので。おねロリの難しいところは、ロリ側の自由意志がどの程度存在するのかという点です。ロリが自分で選んだように見せかけて実際はおねえさんに選ばせられた選択であるおねロリのどれほど多いことか！　罪深いですね。誘拐といえば『ハッピーシュガーライフ』という漫画が先日完結したのですが、あれはおねロリ百合としても誘拐ものとしてもよく練られていて非常に良かったです。特にラスト。ぜひ。

・【初音ミクAppend】ミルクティー【オリジナルPV】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm20794266）

「一人で買った温かいミルクティー　本当は苦手な甘い甘いミルクティー」

　甘くてちょっとだけしょっぱい百合です。黒髪の子はミルクティーを飲むたびにミルクティーの子を思い出すんだろうな。

・【初音ミクAppend】菊葬【オリジナル曲】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm14908444）

「嗚呼されども世界は　たゆたう長いこの私達(ふたり)の御髪(おぐし)を『化物ノヤウダ』と晒し首になさるのです。」

　菊の花言葉は「高潔」（Mayonez（https://mayonez.jp/topic/1007314）を参照）。まずイントロからして不穏。あっもうこれ絶対に死ぬなって開始５秒でわかる。毒を垂らしたような薫り高い百合です。

・【初音ミク×鏡音リン】傷物ラビリンス【オリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm14687860）

「同じことをしていても　違うことをしていても　大好きなことだけは本当なのに」

　甘えるような泣きそうな調声が良いです。エロい。個人的には黒い服を着ている方に天使の羽根が生えているのがたまらないです。百合です。

・【初音ミク】 サイコ 【オリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm21963219）

「継いで接いだようなその倫理もなくなれば　こんなにも簡単にあなたは蛮族とキスをするの」

　百合曲というよりは百合解釈もできる曲、という感じですが上記の歌詞に強い百合みを感じたので。同じ作者の「四ツ谷さんによろしく」も百合です。ぜひ。

・【初音ミク】いるかジェット【オリジナル曲】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm33994393）

「バタつかせる脚の間で　さざめく波の音が響いて　部屋中染めるの二人を　つなぐいるかのジェット」

　可愛くポップにエロい百合です。肉体関係だけが百合ではないのですが、それはそれとして肉体関係は百合です。

・【初音ミク・GUMI】　少女ケシゴム　【オリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm22542108）

「絶え間無いフラッシュ　ほら拍手みたいだ、馬鹿みたいだね…」

　センセーショナルに暴き立てられるふたりの愛とその結末。世界へのささやかな反抗。そんなお話だと思いました。百合です。

・【初音ミク・巡音ルカ】太陽と月のロンド【オリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm9671119）

「きつく絞めてよもっと　息が出来ないほど　そうすればきっと　忘れられない」

　太陽と月のように巡りあい、惹かれあうふたりのお話です。太陽と月ってモチーフがもう明らかに百合じゃないですか？　文章だと伝わりづらいのですが、「後ろから抱いてもいい？/後ろから抱いてほしい」「あなたの弱さを感じたいの/私の弱さ感じてほしい」のハモリが良いです。

・【初音ミク・鏡音リン】魔女の円舞曲【オリジナル曲ＰＶ】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm16023814）

「罪と分かっていたけど　これが定めならば　いいわ踊りましょう　二人だけの円舞曲」

　聖女同士のいわゆる「禁断の愛」。現代において必ずしも百合を禁断の愛として描く必要はないのですが、この曲では古びた本に書かれた聖女という設定によって「禁断の愛」という要素が上手に活かされていると思います。あとはラストの二重構造が素晴らしいです。これも文章では伝わりづらいのですが、「堕ちてく二人　私は魔女　確かめ合った　あなたの温もり」のパートの掛け合いは必聴です。

・【巡音ルカ&初音ミク】 感情-kanjou- 【オリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm19972230）

「間違いじゃない この感情を 『２人抱きしめてゆく』」

　しっとりとした大人の百合バラード。バラードで合ってる？　ネギトロはこういう大人の色気！　って感じの曲が似合いますね。

・【猫村いろは・鏡音リン】星兎、夜の国【オリジナル曲】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm17811981）

「ねえ僕を選んで　攫いに行くよ　満天の星空を打ち落として」

　いろはすみかん！　小物の使い方が効果的です。万華鏡、金平糖とか。七夕っぽい雰囲気も感じますね。彦星と織姫的な百合です。リンの柔らかい声といろはの凛とした声の対比が良いです。リンはAppendのsweetな気がする。違っても怒らないでね。

・【鏡音リン】嘘つきベティ【オリジナル・フルサイズ！】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm15874914）

「あの子とオハナシ秘密のね　言わない　永遠って　いつまで？」

　単語のチョイスからして百合。「あの子とお揃いトゥリング」「剥げたペディキュア」「嘘泣き」「味がしないチューインガム」「掻きまわしたミルクティ」、もう怒涛の百合です。あとはわたしのアイコン見たら納得してもらえると思うんですけど、白黒の双子、ド性癖です。

・【鏡音リン・レン】秘蜜〜黒の誓い〜【オリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm10282629）

「罪の果実が朽ち果てた時　再び巡り合うその日まで」

　言うまでもなく百合です。堕天使と漆黒の花嫁、性癖詰め合わせセットか？　曲はもちろん、PVがめちゃくちゃ良いので動画を見てください。

・【鏡音リン初音ミク】夢みることり【オリジナル】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm2234368）

「囚われてた籠の小鳥が　羽ばたく時は来るのでしょうか？」

　掛け合いが惚れ惚れするほど美しいです。遊郭百合。遊郭百合といえば河合朗先生の「君が千年のかざとしぞみる」ですね。この曲が気に入った方はきっと気に入るはずなのでぜひ。

・だれかの心臓になれたなら ／ GUMI

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm32727744）

「僕の地獄で君はいつでも絶えず鼓動する心臓だ」

　上記の歌詞に完全に撃ち抜かれました。もうこれ以上何を言っても蛇足だと思います。余談ですがTikTokでよく使われているらしいです。マジか。

・わたしのアール 歌ってみた / 柘榴

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm27779631）

「わたし、屋上で靴を脱ぎかけた時に　三つ編みの先客に、声をかけてしまった。
『ねえ、やめなよ』」

　ネタバレしたくないのでぜひネタバレなしで観てください。作者による「くらげPのブロマガ　わたしのアール解説記事」（https://ch.nicovideo.jp/electripper/blomaga/ar941502）があるのでよかったらぜひ。百合です。

・オレンジ 歌ってみた　ver96猫

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm19657482）

「愛していました。最後まで、この日まで。それでも終わりにするのは私なのですか」

　白黒の双子、廃墟のような海沿いの教会、結婚式の真似事、やがて訪れる死。ド性癖です。ハチャメチャに百合です。

・ハッピーシンセサイザ【EasyPop/巡音ルカ GUMI】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm12825985）

「『ゴメンね夜遅く　寝るところだったでしょ？』『驚いた　私もかけようとしてた』」

　なんだそれ。百合じゃん。シンプルに百合じゃん。百合です。

・ワンルームシュガーライフ / ナナヲアカリ

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm33668425）

「永遠の意味なんてないけどさ　ずっとそこにいてね。」

　アニメ「ハッピーシュガーライフ」のOP曲です。真実の愛についてのお話。さっきもハッピーシュガーライフの話をした気がしますね。まあいいや。「この甘い世界 嘘になるような　それ以外のことなんて　消してしまおう」の直後に豹変するメロディーが良いです。百合です。

・初音ミク×巡音ルカ　オリジナル曲「マスターオブパペッツ」PV

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm12438872）

「出来る限りの　唯一を 約束するから 此処で綴る　お前の詩 永久に響かせておくれ」

　人形と物書きの百合。「幾億の歌声が響くこの世界で　願うは貴方だけの五線譜(スコア)」のあたりの音が上下に揺さぶられるところが聴いていて気持ちがいいです。「人形と人形師」の組み合わせはたまに見かけますが、「人形と物書き」は珍しい気がします。上記の箇所ですが、DIVAのPVの該当箇所がバチバチに百合なのでぜひ。

・初音ミク・巡音ルカ　オリジナル曲　「ワールズエンド・ダンスホール」

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm10759623）

「さよなら、お元気で。」

　飛び降り心中百合です（断定）。異論は認めます。「当然、良いこともないし」の「い」がキュルルってなる感じが好きです。DIVAのPVはAC版もVita版も謎PVでした。あれはあれで好き。

・姉妹寫眞/結月ゆかり

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm31676170）

「茹だる様な八月のあの日　わたしお姉ちゃんになった！」

　姉妹殺しは百合。あとこれも白黒の双子ですね、性癖博覧会か？　これ好きな人はおそらく乙一『GOTH 夜の章』も好きだと思うのでぜひ。

・少女レイ 歌ってみた【なゆごろう】

（https://www.nicovideo.jp/watch/sm33657063）

「そう　君が悪いんだよ　僕だけを見ててよ」

　このメロディーにこの歌詞をのせるのすごくないですか？　さらさらした爽やかな夏っぽいメロに独占欲でべたつく重い歌詞。最高です。ぜひこの季節に聴いてほしい百合です。

ⅶ．あとがき

　本日の百合バー、いかがでしたでしょうか？　これを機にみなさんが少しでも百合に興味を持ってくだされば嬉しいです。自分が百合だと思えばそれは百合です。自分の百合を信じてください。それではまた！

【参考文献】
・東園子「女同士の絆の認識論 : 『女性のホモソーシャリティ』概念の可能性」（年報人間科学２７巻２００６年３月）
・関口靖彦編「ダ・ヴィンチ」（第２５巻第３号通巻２８７号、平成３０年３月）
・百合ナビ（http://yurinavi.com/）２０１９年７月１０日閲覧
・ちるちる（https://www.chil-chil.net/）２０１９年７月１０日閲覧