silent 9話 感想 考察
紬(川口春奈)のトラウマが気になりました。
湊斗(鈴鹿央士)が想(目黒蓮)に返したパンダの「佐倉くんとは音楽の趣味が合うから嬉しい」ってメモを、
恥ずかしくて返して欲しくて高校生同士みたいに取り合いしていた時、
想が「お願い聞いてくれたらあげる」と言います。
紬は「お願い? 怖いよ」と怯えます。
これは湊斗から言われた「お願い」がトラウマになっているんですよね。
紬は湊斗から突然
「紬。お願いがある。別れて欲しい。別れよう」と言われました。
お願いという本来は素敵な響きの言葉が、紬の中で残酷なパワーワードに変わった瞬間です。
おおらかで少し能天気にも見える紬にも、
人が放った言葉はトラウマとなって心の傷になっているんだと思います。
言葉だけでもトラウマになるのに、
好きあっていたのに想が何も言わず突然去ってしまったことは、今も紬のトラウマや不安になっていると思います。
🍊✨
そしてそれは春尾(風間俊介)にとってもそうでしょう。
春尾が最後に奈々(夏帆)に言われたナイフのような言葉はあまりにも衝撃的だったので、8話の感想に台詞起こしして書いています。↓
言ったほうは反省したり切り替えたりもするでしょうが、言われたほうの傷は深いです。
すぐ仲直りするならともかく、8年もの時間が経ったので、その間に春尾はいろんなことを考えて、やっと心の安定感を見つけているんじゃないかと思います。
紬にも「お願い」がトラウマなら、
紬より思慮深く、もっと鋭い毒の言葉を言われて別れに至った春尾はしばらくトラウマがあったんじゃないでしょうか?
なので個人的な感想としては、春尾は奈々がどんなに変わったように見えても、また一からやり直す気持ちにはなれないと思っています。
奈々の手紙でわだかまりが溶けたら、お互い過去に拘らず、別の相手を見つけていくのが幸せなんじゃないかと。
奈々は今の自分なら春尾と恋愛できる、と思っている可能性はありますが。
つまり再会してまた好きになったのかもしれません。
奈々に寄り添う視聴者なら応援したいのでしょうが、春尾にも8年の年月と感情があります。
通いつけの居酒屋で春尾は脱いだコートから奈々の未開封の手紙を落として、湊斗に拾ってもらっていました。
「奈々さんとお友達ですか?」と湊斗に聞かれ、
「ちょっとだけ」と春尾は答えました。
「ちょっとだけ友達から手紙もらいますか?」と湊斗の友達に言われ、
「8年ぶりなんで。」とスッキリした感じで答えました。
春尾の中では奈々のことは終わってるんじゃないかなと思います。
そうじゃなければ再会した時、アクションを起こすでしょう。
手紙も早く読みたくて職場でこっそり読んだり、
後で大事に読むうもりなら無造作にコートのポケットなんかに突っ込まず、最初から鞄にしまっておくと思います。
手紙の奈々の名前を湊斗に読ませるのが脚本的に目的だとしても、それなら
奈々からの未開封の手紙をじっと見つめて酒を飲んでいる春尾。
そこに湊斗がやってきて、奈々の名前が目に入る。
とかでも良いわけです。
何もコートのポケットから落とさなくても。
何が書いてあってもそれは過去のことで、未来に通じるものではないと春尾は考えていそうです。
♥️✨♥️
湊斗は桃野奈々のフルネームを知っているとは、想からいろんなことを聞いているんですね。
紬と会っているけど付き合ってないことも知っていました。
想にとって湊斗は特別な存在なのでしょう。
✨♥️✨♥️✨
誰かが書いていたのですが、湊斗役の鈴鹿くんは恋人と別れる時、別れたいとだけ言って理由を言わないそうです。
理由を言うと悪いところを直すからと言われてしまうけど、人はそんなに変わるものではないから、とのことです。
一理あると思います。
例えば奈々は言葉に毒がある人物であり、8年前に春尾に毒の強い言葉を吐き、現在も想や紬に毒を吐きました。
奈々のそういう本質は変わらないんだなと思いました。 普段の奈々がどんなに優しくても、また何かの時に傷つけられることがあると思います。
✨♥️✨♥️✨
ところで想(目黒蓮)が耳が聞こえなくなって少し荒れたりした大学生時代を、この9話で回想という形で持ってきましたね。
一視聴者としての正直な感想ですが、序盤の回に持ってきていた方が、だからこそ紬(川口春奈)と離れたんだなという想の感情に寄り添うことができたと思います。
終盤にきて紬との進展はおあずけで、過去の悩みに戻っちゃうのかと、肩透かしを食らった気持ちになりました。
でもあえて終盤の9話に持ってきたのは、8話の感想で書いたのですが、想が紬に恋人関係に踏み込めない理由の中に、子供への遺伝のことがあるからだと思います。
想の姉(石川恋)が子供の耳が聞こえないんじゃないかと悩んで荒れる気持ちが、母親(篠原涼子)に「お母さんの子供が」なんて意地悪な言い方でぶつけている様子から、ひしひしと伝わりました。
想も甥っ子の検査の結果を心配していました。
想も生まれた時は聞こえていたので、姉の心配はこれからも続くということは理解しているはすです。
✨✨✨🍊🍊
想と紬の「恋愛」に関してハッピーエンドを望む視聴者は多いのでしょう。
でも想は何かを悩んでいて、それがなんなのか、脚本家がそのカードを表にして見せてくれなきゃ、真の意味での(紬と想の)ハッピーエンドが恋愛の成就で正解なのかわかりません。
例えば。
想が遺伝のことを気にしているとします。
遺伝の確率は50%位という説があります。
紬は想が好きなので、もし結婚して自分たちの子供が想と同じように耳が聞こえなくても運命を受け入れる、想とずっといるのが幸せ、と考えそうな気がしますよね。
その場合、遺伝の問題はクリアなので恋愛の成就イコールハッピーエンドとなります。
しかし。
想が絶対に子供はつくらないと決めていた場合。
子供に自分と同じ悩みを持たせたくないから、
子供をつくる気は無いと考えていたとしても不思議ではないです。
その場合も、紬がそれほど子供を持つことを望んでなければ、その問題はクリアです。
でも紬がすごく子供を欲しがっているとしたら。
もちろん子供が授からなくても幸せなご夫婦は
たくさんいらっしやいます。
紬が子供を欲しかったとしても、授からなければ自然とその運命に沿った幸せを見つけていくでしょう。
でも授かる可能性を排除するのが、
好きな相手の強い望みだとしたら?
想との恋愛の成就(二十代半ばの男女なので結婚は視野に入りますね。)が、
紬にとってハッピーエンドとは簡単には言えなくなります。
今のは単なる例え話です。
想が子供をつくらないと決めていると予想しているわけではありません。
何が言いたいかというと、つまり作者の手の内にある物語の隠されたカードを見なければ、
何がハッピーエンドなのかわからないと言いたかったのです。
ラブコメならライバルを退散させて、好きな人に主人公が選ばれればハッピーエンドです。
恋愛至上主義ですね。
でも少なくともsilent9話は、恋愛よりヒューマンドラマになっていました。
✨♥️✨♥️✨♥️✨
そして遺伝の問題より、気になっていることがあります。
想と紬が前に進んでいる様子が見えず、過去へ過去へと戻って、やり直しているように見えるのです。
想が突然離れてしまって二人ができなかったこと。
行きたかった場所。
失われた過去を取り戻すみたいな。
紬が働く東京で一番大きなタワレコへ行くのも、二人が大学生になって一緒にやりたかった約束の一つ。
想が紬の店に行ってCDを買うことで実現しました。
想にとっては勇気が必要だったと思います。
カフェでバイトの後輩を紬に紹介された時、自分と一緒にいて恥ずかしくないかと気にしていて、その後輩のいる店ですから。
スピッツは二人が大好きだったアーティストです。
耳の聴こえなくなった想がCDを買った理由。
以前は耳が聞こえていたので、歌詞カードを見てその世界観の響きを想像し、楽譜が読めれば
記憶の歌声と自分の音感のハーモニーが心に奏でられるんでしょうか?
そういう楽しみ方もあるのでしょう。
でも、もしかしたら今も音楽が大好きな紬に寄り添うためにしているのかな?とも思えます。
恋愛って、もっと我儘だったりするのに、ふたりとも何か遠慮しながら、友達とも恋人とも違う関係の中でゆらゆら揺らぎ、前に進まず過去に戻ってやり直しているみたいな気がします。
7話の終わり、紬の部屋で突然、紬の腕を掴んで見つめる想に、
「えっ? どうした?」
と紬が真顔で言ったのが気になっていました。
恋しているならドキッとしませんか?
紬の中では恋じゃなくて愛なのかな?と思ったりしています。
♥️✨♥️✨♥️
8話の終わり、紬の部屋で想が聞きました。
想「久しぶりにお母さんに会ってどうだった?」
紬「別に。いつぶりでもいつも通り親って感じ。相変わらずだった」
それを聞いた想の顔がアップになり、失望したような悲しげな顔をするのです。
恐らく紬は母親に自分のことを何も話さなかったんだろうな、と察したんだと思います。
✨✨🍊
実際は想の耳のことは話していて、紬の母親はだからどうした?って感じの人で、お母さんには何もできないもんとか言っていましたね。
紬は反対したり口出ししてこないとわかってホッとし、ありがとうと母親に感謝していました。
でも紬の母親(森口瑤子)はそんな深い考えはない人のような気がしました。
亡くなったお父さんのことをずっと話していて、やはり紬の母も過去に生きる人だなと思ったのと、自分の話したいことを聞いてもらうのが何より楽しくて、娘や息子が今どんなふうに生きて何を悩んでいるかはそこまで考えてないような気がします。
自分の感情が第一優先なので、病床のお父さんが毎日来なくていいよ、と言ったらそれは気遣っているからなのに、お父さんが我慢できなくなって来て欲しいと言ってくるまで何日も行かないとか、単に自分の感情を優先する子供っぽい人なのかな?と思います。
よく久しぶりに会ったのに、自分のことばかり喋りたくて喋り倒す人がいるけど、自分のことを話すとスッキリするからってだけで、相手の話はそこまで興味ないって感じ。
本当に紬のことを思っていれば、せっかく話してくれたんだから、もう少し娘の気持ちを聞いてあげて、その上で娘に任せて口出さないことにしたいなら、そうするんじゃないかと思います。
料理をたくさん持たせるだけが愛情じゃないので。
紬の母が紬とプリンを食べちゃったのもびっくりしました。
弟の光(板垣季光人)がお風呂から出てくるのに。
光にはあげないんだなと。
地元のプリンだから、自分はまた今度食べれば良いのに、そんなところも自分の気持ち優先の子供っぽいだけの人に見えました。
✨♥️🍊
話が少し脱線しましたが、紬は母親にも想のことを「好きな人」とは言っていませんでした。
想に対する気持ちが何なのか紬にもよくわからないんだと思います。
恋というより、同情を含んだ愛情の可能性も。
想に料理を持たせようとあれこれ世話を焼いている時、お母さんみたいと言われていましたね。
想は敏感なタイプなので、紬の心の奥をじっと見ているような気がします。
✨✨♥️✨♥️
想はサッカーが大好きだったはずです。
でも耳の聞こえない人たちでするサッカーはしたくないと言って、サッカーから遠ざかりました。
大好きだった紬からも一度遠ざかっています。
自分がどんなに好きでも、「好き」より優先したい感情や考えが想にはあるということです。
✨♥️✨♥️✨♥️✨
想の母(篠原涼子)は心配性すぎると思っていたら、そうさせたのは想の繊細さだったんですね。
想が湊斗といて、心から自然に笑っているのを
遠くから見て本当に嬉しそうでした。
子供が楽しそうにしているのを見るのが何よりも嬉しいという感情は、多くの母親が持っていて、自然と共感できました。
でも奈々といて想が笑っているのを見た時は、あまり嬉しそうじゃなかったどころか、不穏な表情に見えたけど、あれは何なんでしょう?
↓ この表情。
奈々が女の子だから?
ろう者だから?
さっぱりわかりません。🙃
♥️✨♥️✨♥️
8話の紬の台詞が印象的でした。
「私ね、いたくているだけだからね。佐倉くんになんにもしてあげられないし、なんかしてあげようって思って一緒にいるんじゃないから。
佐倉くんが私と一緒にいるの大変とか迷惑とか疲れるとか、そういうのあったら言って。私は無いから。
今後もしあったら言うから。
その時はちゃんと言うから。」
想はそれを聞いて嬉しいというより、淋しそうな顔して「わかった」と言います。
「今後もしあったら言うから。その時はちゃんと言うから」
が心に影を落としたんだと思います。
紬は正直で隠せない人です。
言葉より行動に表れます。
想と再会してから、湊斗との部屋探しを2回もすっぽかしてしまって、
湊斗から「紬の都合の良い時で良いよ」と言われ、手話をあんなに上達するまで覚える時間はあっても、部屋探しには気持ちも足も向かないのです。
湊斗が別れて欲しいと言ったのは当然の帰結です。
正直な紬なので、未来のことわからないと暗に言葉に出しています。
今はいたくて一緒にいる。
そうじゃなかったらちゃんと言うから。(2回も言った。)
ということです。
想は繊細なので自分が傷つくことが恐いのです。
相手が傷つくのを見るのも恐いのです。
二人で過去にできなかった思い出づくりをして、想は去ろうとするかもしれません。
紬はどうするか?
やっと主役らしく見せ場がありそうです。
紬の気持ちや行動がどんなふうに描かれるか?
紬にとって何が幸せなのか?
ずっとの手話の意味は?
(いかにもといった感じでずっとの手話を教えて前振りしているから、期待値を上回る感動を見せるにはハードルがぐーんと上がっていますね。)
ずっとの手話を教えてすぐそれを使って何か言うなら不意打ちでテンションがあがるけど、
来るぞ来るぞと思っていると、見ている方が恥ずかしくなったり白けることもありそうです。
さてさて。
脚本家の腕の見せ所ですね。
♥️✨♥️✨♥️✨♥️
読んでくださり、ありがとうございます🙂
また次回も楽しみに見て書きたいと思います。