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マスクは100時間使用すると効果が無くなるのか?実験してみた。

以前マスクの再利用について記事を書いたことがある。
以下のやつ。

上の記事の結論は『効果は1週間程度ならまったく問題ない』という感じ。

しかし、ちょっと気になっていた。

というのも、論文等で示された実績はその際に使用されたマスクでの結果でしかないのだ。つまり、私が使用している『SAVEWO 3DMASK ULTRA』の場合はわからない。

◇◇◇

ということで実験してみた。

結果、『声を出しながらビニール袋を膨らませて濾過された空気の粒子量を測る』という雑な方法だが、100時間で効果の大幅な低下は確認できなかった。
(効果が新品同様に維持されているかは不明)

なお、本記事の内容は細かい諸条件の説明になるため、興味のある方を除き『◆おわりに』まで飛ばしていいかもしれない。


◆概略

実験の概略を示す。

・方法
マスクを着けた状態で萎んだビニール袋の口元をマスクにあてる。
口から呼気(飛沫・エアロゾル)を『あ゛ーーー』と言いながら息が続くまで吐き出しビニール袋を膨らませる。
その中に空気質測定器(Temtop LKC-1000S+2nd)を入れる。
PM2.5で評価。

・対象
比較対象のマスクは、新品、中古、除染の3パターン。
中古は3週間程度使用したもの。
除染は開封直後の新品に対してアルコールでエレクトレット(静電気)の効果除去を試みたもの。
すべてノーズフォームと耳紐アジャスターを追加し漏れを軽減している。
それぞれ2回確認した。

・結果
結果は以下。
縦軸:PM2.5濃度(μm/m3)
横軸:測定開始をゼロ秒とした経過時間(秒)

この結果を見る限り、新品と中古の差はあまり見られず除染と比較し有意な効果を示した。

100時間使用程度でエレクトレットの機能が完全に失われていることは確認出来なかった。


◆考察

マスクの濾過性能を考えるとPM2.5相当のエアロゾルはほとんど透過しない。しかし、数値として測定出来ている。

これは、呼気に含まれる水蒸気や透過した小さなエアロゾルが凝集して大きな微粒子(PM2.5)を形成したためと推測する。

また、時間経過と共に数値が低下している点については、水分が蒸発し最終的に測定不可能なくらいの飛沫核になった。もしくは、ビニール袋への付着、落下等によるものと推測する。

試しにノーマスクで純粋な呼気のみを測定してみたが、その結果も上記の仮説を支持するものであった。

以上を前提とし、マスクを透過した水蒸気等の差によりマスクの濾過機能を相対的に評価出来たと考える。

また、中古でも新品と同等の結果を示したことから、付着していた微粒子の分離は起きていても軽微だと推測できるかもしれない。


◆注意点

・新品と中古は同等の結果となったが、製品仕様の濾過性能(PFE99とか)の確認は出来ていない。

・測定したPM2.5については、水蒸気の蒸発、凝集、付着、落下などが同時進行した結果だと推測され、また、測定器は即座に最大値を示さない(徐々に上がる)ため、特に測定直後の数値はあてにならない

・測定値は小数点以下を四捨五入した。
なお、測定は目視(動画撮影)だが曇った半透明のビニール袋越しでわかりにくかった為、適時測定器をビニール袋表面へ近付けた。その動作が結果に影響した可能性がある。

・『吐き出した飛沫、エアロゾルの量』は同一ではない。
後の試行ほど喉の水分が失われ、量が減っている可能性がある。

・測定順は、新品、中古、除染の順で行い、2回目は同順で繰り返した。

・除染手順は、開封後の新品に対して市販のアルコールスプレーで両面へ各10回程度吹き付け、ビニール袋内で2時間程度放置、その後自然乾燥(約12時間経過)とした。しかし、エレクトレットの機能がどの程度失われたのかの確認は出来ていない。

・私自身が『マスクのエレクトレットはそう簡単に落ちない』というバイアスを持っており、それが声の大きさや吐き出しの長さなどに無意識に影響した可能性はある。定量的で再現可能な方法による確認が望まれる。


◆機能低下の実感について

今回の実験のためにマスクを3週間(1日平均5-6時間くらい)連続使用した。

機能低下を実感した段階で実験に移るつもりでいたが、3週間経っても実感は出来なかった。

『実感』については以下を想定していた。

  • 大気中有害物質の透過
    (ひどい場合鼻水が出る)

  • 薄い匂いを普通に感じる

しかし、3週間経っても変化は感じられなかった。
そして見た目の問題が気になり、やめた。
(マスク表面の黒ずみ、耳紐の黄ばみなど)

不潔さに関しては見た目を除き、悪臭、皮膚の異常は自覚していない。
3週間の間、風邪症状を含む体調不良はなかった。

なお、マスク内側には自作したエアリズムのインナーシートを仕込んでおり毎日取り換えていたが、マスク自体の除菌については何もしていない。


◆おわりに

マスクの静電気(エレクトレット)の効果については諸説ある。

私が見た『すぐに低下する根拠』とされた論文では液体に1,2時間だか漬けるといった極端な例で、その場合に静電気が低下していたのは事実だ。

しかし、その条件でも大幅に低下したわけではなく、微粒子捕集性能は多少低下した程度であった。

今回の結果は社会的にマスクの再利用を推奨する根拠にはまったくならないが、消費者や資源の事を考えると再利用の検討はもっとされていいだろう。

◇◇◇

ちなみに、静電気の効果低下を懸念するのであればナノファイバーフィルターマスクを使用すれば解決する。

大昔は無かったが今ではDS2規格のものを含め、日本で買えるものに限定してもいくつかの良い選択肢がある。1枚20円等のものと比較すれば高いが、再利用を前提とすればコスパもそれほど悪くないだろう。

マスクはTPOで有効活用したいものである。

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