今から十二国記を読むならば。

 さて、今年の10月・11月に4分冊で完全新作長編が予告されている十二国記。舞台は戴国。角も失い使令も失ったただの少年にしか見えない泰麒と、片腕の女将軍がいったいどう頑張るのかドキドキハラハラ、想像するだけで息苦しくなるような気持ちになるのだけど、これまでの傾向からして、前半2巻半くらいまでは苦難に次ぐ苦難、読むのがしんどくなるほどの悲惨が二人を襲うだろうことは予測がつき、しかしそこから大どんでん返しが待ってることも想像に難くない訳で、きっとそのへんでお預かりされてる使令たちが戻ってきて…とか妄想は膨らんで、ああ早く読みたい、いったいいつから私はこの新作を待っていたのだろうと、はるか昔に思いを馳せるわけなのだけど、十二国記と言えば主人公がコロコロ変わり、国もコロコロ変わり、初めて読むんだよねー、という人はどこから読んだらいいかわからないって声もよく聞く、
 ので、私が思う、十二国記を上手に楽しむ順番をここに書き留めようと思う。

 まず、主人公。
 ここが難しい。
 何を「十二国記シリーズ第一作」と考えるかによって、主人公が変わってしまう。
 でもここは、「十二国記」という名を冠して始まったシリーズという括りで、とりあえず主人公は「陽子」という一人の少女と据えて考える。
 だけれどもまず読むべきは、「魔性の子」(新潮社文庫)である。主人公、ほんのちらっとも出てこない。けど、ここから読もう。「何言ってんだ」とか文句を言わずにここから始めてほしい。その理由は後でわかる。
 魔性の子を読んだら、次は名実ともに「十二国記」の第一作目、「月の影 影の海」(上下巻、新潮文庫)を読もう。ここから本当に、主人公である陽子の活躍が始まる。上巻は読むのがしんどいけれど、頑張って読んでほしい…。下巻ですべてが報われる。キーマンはねずみ。
 月の影 影の海を読んだら、次は「風の万里 黎明の空」、こちらも上下巻、けっこうな厚さだけれどがっと一気に読み切れる面白さがある。こちらは、月影~から少し後の陽子のお話。主人公は、3人の女の子。少し成長した陽子の姿が見れる。頑張れよーって応援したくなる。
 「次は何を読みますか!」ってとこだけど、この辺から少し、サブキャラ的存在の知識も頭に入れたいから、「東の海神 西の滄海」を読んでほしい。月影に出てきた二人の正体がわかる。この物語に出てくる別のキャラクターも、また別の国の話にちらっと絡んでくるので、覚えておくとちょっと楽しい。
 東の海神~を読んだら、次は「風の海 迷宮の岸」を読もう。ここで、なぜ最初に「十二国記」の名を冠さない「魔性の子」を読んだかがわかる。故に、読もう。ちなみにここでも、「東の~」で出てきた主要キャラ二人は出てくるので、覚えておこう~。重要人物!
 ここまで来たら、浮気してもいい。
 短編集「丕緒の鳥」と「華胥の幽夢」、どちらを先に読んでもいいと思う。短編集はメインキャラたちの話というよりは、それを取り巻く人々の話、という感じ。普通なら語られない人々の話だったりもする。読んでも読まなくてもいいけれど、読んだら本編がもっと面白くなること請け合い。
 ここまで来たらゴールはすぐそこ、目下のところ長編最新作である(しかし出版されたのはいったい何年前か…)「黄昏の岸 暁の天」を読もう。ぶっちゃけ言っちゃうとフルキャスト大出演! 満を持しての出版が待たれる最新作へ続く物語。
 黄昏~を読んだ後で、ちょっと初心に立ち戻って「魔性の子」を読み返すと、なるほどこういうことであったか…と、また別の視点で楽しめるというおまけつき。

 とまあメインストーリーを順序よく追って理解しておきたい人はこんな順番で読めばいいと思う。

 実は、「図南の翼」というのも出ている。
 これはもう独立した物語と言ってもいいので、読んでも読まなくてもいいんだけど、主人公の幼女(幼女…?)がチャキチャキして気持ちいい上に泣けるし、幼女が風の万里~にチラッと出てたり、逆に東の海神~で出た某キャラがチラッと出てきたりで、ちょっと美味しい。いや、楽しい。

 十二国記はいわゆる「異世界転生もの」なのだけど、これがもう、昨今流行りの白けちゃうような転生ものとはひと味もふた味ももう比べるのもおこがましい出来栄えの世界なので、ぜひとも、ぜひとも、ぜひとも、未読であるという幸運な人はこの機会に読んでほしい。
 まだ十二国記を読んだことがない、という人は、幸福だ。
 だってこれから、この未知の世界にどっぷり浸れる幸せが待っているんだもの!

 というわけで、読んでください。
 そしてあと3ヶ月、いや4ヶ月、一緒に悶絶しましょう。
 はやくぅ~はやくぅ~と、悶絶しましょう。

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