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序章もしくはプロローグ


またいる。

道端に大勢でたむろし盛り上がっている。
目を合わせてはいけない。
迷惑だが彼らの邪魔をしてはいけない。
ああ見えてそこそこの頭脳を持っているらしいから復讐されてしまう。
横をチマチマ歩く幼い娘にも
「近づいたらダメだよ、危ないからね」
と注意をする。 


そう
カラスである。


木曜日。
今日は普通ゴミの日。
近所のカラスが集まり盛り上がっている。
あいつが「カーカーカー」と鳴けば
こいつが「マァーマァーマァー」と返している。

朝の盛り上がり具合で
「あぁ、今日は普通ゴミの日か」
と確認できる町、それが大阪。

もしここに万太郎がいたらカラスの研究でも一旗上げていたことだろう。
それほどに身近で、しかも沢山いる。
夫は「カラスが8回鳴くときはご飯があるよ集まれー、の号令らしいよ」など興味を持ち検索を始めてしまっている。
ちょっと待て、どこのサイトか知らないが私の見ている『カラスの鳴き方一覧』とは情報が違っている。
まだまだ謎の多い生き物のようだ。

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生活にまつわる私の知識は過去に読んできた漫画や本から得たもので成り立っていると言っても過言ではない。

「熱を持った打ち身は馬肉で冷やせ」とか
「犬歯の裏を舌で撫で出した唾液で水分を得る」とか
「足音を消すために羊の皮の靴を履け」とか

そして『動物のお医者さん』を愛読している私はカラスが人を覚え、手を出そうものなら上空から狙い攻撃してくることを学び済みなのだ。どうだ。

なので無闇に手を出してはいけないことは重々承知しているのだが、なんせ身近すぎる。
正面から低空飛行してくるカラス
公園をピョンピョン歩くカラス
コインランドリーの看板とたわむれるカラス
連れ立って水たまりで遊ぶカラス
人んちの枇杷の実を楽しむカラス

カラスカラスカラス

気がつけば目で追っている。
気にしちゃう。
ネットでカラスを検索しちゃう。

これって
恋ちゃう?


思えば幼い頃、上空から放たれた銃弾のようなフンをこの足に受けてからカラスのことは警戒はしていたけれど嫌いだったわけではない。

気になるアイツ、になったなら好きになるまで早い、というのが世の常。
つまりこの話は序章で、私はこれからカラスの観察に踏み出し、のちに壮大なカラスの記事を書き始めることになるかもしれない。し、そうじゃないかもしれない。

とにかくまずは個体を見分けるところから始めなくては。
なんせあいつら模様なしの黒色で飛び回っているからややこしい。
そう思い見上げた建物の屋上に10羽以上のカラスを見た。
ここは大阪、カラスの国。
観察をされているのは私の方なのかもしれない。


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