ミサイルよりも災害救助ロボットを

 南海トラフ地震が今後40年以内に起きる確率はおよそ90%と想定されています。最悪の場合、死者は30万人を超えると予想されています。日本海溝・千島海溝地震では19万人を超える死者が予想されています。また首都圏で都心南部直下地震(マグニチュード7.3)が起きると死者は6千人以上になるという予想です。ちなみに江戸時代には1707年に南海トラフ地震、そしてそれに引き続いて富士山の大規模噴火が起きています。もし富士山が噴火すると、首都圏でも火山灰が降り積もり、交通・通信が麻痺状態となり断水、停電も広がると予想されています。また近年も記録的な大雨が降ると河川の堤防が決壊して大きな被害が出るという事態が起きています。
 そもそも日本列島は地球科学的、地形的要因により大規模地震、火山噴火、大雨などの自然災害が多発する地域です。にもかかわらず、21世紀の現在に至っても災害救助を目的とする総合的な専門組織が存在しません。私の感覚では非常に不思議な現実です。専門的な訓練を受けた人員と救助用の装備・物資を備えた広域的な災害救助組織を一刻も早く創設すべきです。また特に大規模地震に備えて、救助隊員による活動の限界を補うために以下のような無人化救助システムの開発と装備を提案します。
 大規模地震が起きるとすみやかに被災地の最寄りの救助基地から調査ドローンが出動します。被害状況、救助を求めている人びと、行方不明者がいると思われる場所、火災発生場所などの情報を収集、送信します。それを受けて、輸送ドローンが現場へ空から救援物資や超小型捜索ロボットを運びます。自動運転トラックでがれき撤去ロボット、救助ロボットなどを運びます。火災現場には無人自動運転消防車(消火ロボット、消火用水・消火剤などを積載)が向かいます。自動車には現場に最短時間で接近できるルートを選択するAIを搭載します。ロボットには効果的な作業内容を自律的に決定できるAIを搭載します。さらに複数種のロボットと救助隊員が協働して活動するためのシステムをつくっておきます。
 富士山が噴火すると風向きによっては東京都区内でも10センチほど火山灰が降り積もると予想されています。4億立方メートルを超える火山灰を除去する必要になるとも言われています。火山灰除去用の車両とロボットを多数用意しておく必要があります。
 「国を治める者は必ずまず水を治める」。この古代中国の言葉は治水事業が為政者にとって必須の仕事であったことを物語っています。戦国大名として知られる武田信玄も治水事業に力を注ぎました。
 今、日本政府は5兆円台(2022年度)だった軍事予算を倍増させようとしています。人びとの命を守るためには何をすべきかという視点から現実を理性的に認識することができているでしょうか。

補注
1)火山灰はいわゆる「灰」ではありません。鋭利な形状をした微細な岩石片であると理解しておく方が正確です。火山灰は鼻・喉・肺、目の表面(角膜)などに健康被害をもたらします。火山噴火時の外出にはゴーグル、防塵マスク、火山灰が付着しにくい衣類が必要になります。

2)武田信玄は岩石を用いて河川の水流の向きを変えたり水流を減速させる工事を実施しました。また、堤防の決壊を防ぐために、増水した水を遊水池に誘導する仕組みを施しました。「信玄堤」と呼ばれる堤防は、現在も有効に機能していると言われています。

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