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13月

年越しの晩、いつものようにテレビに目をやりながら年が明けるのを待っていた。23時59分59秒の文字を見た次の瞬間テレビが消えた。
手元にあったリモコンで電源ボタンを押してもテレビに光が灯ることはない。

机の上のスマートフォンを手に取り、起動すると時刻は0時を回っていた。
スマートフォンをソファーに置き左手に持ったビールの缶が空になっていることに気づき机の上に置く。

視界に入った数字が妙に頭から離れずもう一度スマートフォンを手に取り開くと13という見慣れない文字がある。
13月なんかあっただろうか。
ガンガンに暖房を焚いた部屋で手が震えることに気づく。スマートフォンを手に持ち目を離さないまま自分を落ち着かせる為にタバコを吸う。

疲れすぎているだろうと思い、目を閉じて不覚煙を吐く。天井を見つめながらもう一度スマートフォンに目を落とすと1月1日の0時3分であった。

タバコから落ちそうな火種を空になったビールの缶の淵に落とす。

口元が緩みながら体感1分の13月を思い返す。
冷蔵庫からもう一本ビールを取り出し、ベランダに出る。缶のフタを開けると同時に目の前家から電気が消える。
夜風に吹かれながら缶に口をつけた時、ようやく新年が僕を受け入れた。

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