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月明かり

引き裂かれたかのような雲の合間から
発光する月は何かを照らしているのでしょうか。

月は自ら光輝くだけで、何かを照らすつもりなんて全く無く、溢れた光に人間があやかってるだけなのではないかと僕は考える。

人間の多くは虫を嫌い、虫に思考がないと考えるが、月夜をあやかる僕達は電灯に集る飛べる虫と同じだ。
虫は溢れた光にあやかって何をしているのだろう。

気になったので調べてみたら、光ではなく紫外線に集まっていると書かれている。
本来、虫は月明かりに集るらしいが、電灯が普及して、街に光が増えてからは月明かりの代わりに電灯に集るようになったのだと。

僕達も月明かりよりも提灯やネオンに
集かりやすくなった。

月が無くなったらどうなるのだろうか。
月はもう必要ないのだろうか。
虫が電灯に集るようになったみたいに。
人間がネオンに惹かれるようになったみたいに。
月は僕達を照らすなど極めて人間中心的な思考は文学や音楽、総じて芸術には多く見受けられる。
月が地球を照らすことを止めることで人間中心的な思考から逃れることができるのではないだろうか。
そして本来の明るさを取り戻すことができるのではないだろうか。

月が無くなった世界を想像して少し不安になった。僕も極めて人間中心的な思考を手にしていることに気付かされた。

雲の合間で発光する月が僕が吐く雲によって
覆われたとき身体を鳴らす鼓動が早まるのを感じた。

窓を閉め、そのまま壁にも垂れながら
目を閉じた。

何時間経ったのかも検討はつかないが
まだ部屋は暗い。枕元の目覚まし時計を見ると3時。
僕は窓の前に立つことはできたが、その流れでカーテンを開けることが出来なかった。
手が何かで湿っているのを感じる。
グラスについた結露のように。

そこに僕達を照らす光があることを信じて
カーテンを開けずにもう一度眠った。



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