イスラエルのリアリティ・ショウ番組(その1)

イスラエルのテレビ番組にシェフ・ゲームというのがある。今季見始めたのは、旧知のレナン・ブルーメンライヒ・古俣氏(父イスラエル人、母日本人)がオーディションに合格して参加者となったので見始めた。しかし見ているうちに、この番組はイスラエル社会における行動規範を実によく映し出していると思うようになった。そのいくつかをメモしておきたい。

1)チーム戦と個人戦
これは数千名の応募者(素人とプロが混在)がまず数十名に絞られ、自分の最も得意とする料理でオーディションを受ける。4人の審査員シェフが、作った参加者が誰なのか不明なまま試食して合否を決める。そのオーディションに通過した人の中から、最終的に18名が選ばれて、4人の審査員シェフのうち3人がそれぞれ率いる3チームが形成されるのだが、リーダーのシェフが自分のチームに入れたい人を指名していく方式。
18人の参加者が、基本的には毎回1人ずつ脱落していくのだが、チーム戦でのお題と個人戦のお題がある。チーム戦は、ある「お題」が出て、リーダーのシェフがその場でメニューを考案。付属する食材置き場から食材を持ってきて、それぞれのチームがメニューに沿って制限時間内に料理。参加者にとっては自分が扱ったことがない食材の場合もあり、チームワークが重要。リーダーは口で指導するが、自分は手を出さない。できた料理を、外部から招いた10人のゲスト審査員(審査員はそのお題ごとに入れ替わる)が試食して、最良のものに投票。ここで1位になったチームの参加者たちは勝ち抜けで次の回に行ける。2,3位のチームの参加者たちは個人戦に移る。そこで出されたお題に沿って、今度は個人で制限時間内に、その場にある食材で料理。できた料理を、本来の審査員シェフ4名が試食して、最下位の一人を落とす。リーダーのシェフにとっては、自分のチームの参加者が落ちたら次回のチーム戦の戦力が減って不利になってしまう。

2)最高のパフォーマンス
このチーム戦での協力のしかたが、いかにもイスラエル的であった。とりあえず目の前にいる人間と協力して最高のパフォーマンスを見せるしかないのである。たとえばせっかく準備した鶏肉の焼いたのが完成寸前で、参加者どうしがぶつかったために床に落ちてしまった時とか、だれも謝らないし、だれも責めない。リーダーのシェフも「これはいつでもだれにでも起きることだから、こういうことは起きるものなのだから、とにかく落ち着いて」と言って、もう一度大急ぎで準備する。あるいはレシピを変える。突発事態が起きたときには、自分の失敗だと落ち込んだり、だれかを責めたりしている暇はない。どれだけはやく気を取り直して頭を切り替え、雰囲気を明るくして、冷静に問題解決のため努力できるかが勝負である。そのことが参加者全員に共有されているのが、あらためて印象的であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?