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ロシアにシリコンバレーをみつけた

日本にシリコンバレーをつくろう

そんな言葉を見かけることがある。シリコンバレーとしてはアメリカのカリフォルニア州、サンフランシスコ湾のまわりにある地域が本場で、AppleやGoogleなど世界的なテクノロジー企業に加え膨大な数のスタートアップが拠点を構えている。世界中の優秀な人材を集めて長きにわたりイノベーションを起こし続けており、そういった地域があることで新たな産業と雇用が生まれ、経済が活性化することは間違いない。日本だけでなく様々な国が経済反発展のため "Next Silicon Valley"をつくろうと躍起になっている。

ロシアも例外ではない。去年の終わりにHighLoad++というカンファレンスに登壇する機会をもらってこのロシア版シリコンバレーを訪れるチャンスがあった。

それがSkolkovoだ。

今回はこのロシアの旅の続きとして

Skolkovoがどんな場所だったのか、Skolkovoを中心としたロシアのITコミュニティがどんなものだったのかを書いてみたい。

目次
- Skolkovoとは
- HighLoad++の参加者たち

Skolkovoとは

Skolkovoはモスクワから約1.5km程の距離にある郊外の街だ。街といっても広い土地とオフィスや研究施設などが連なっているどちらかといえば人工的に作られた地域といった感じがする。日本でいうとつくばが近いだろうか。

それもそのはず、このSkolkovoはSkolkovo Innovation Centerという名前でハイテク産業の育成、起業支援を目的として2010年のメドベージェフ政権のときに作られた。当時はロシアが次なるシリコンバレーを目指して国を上げての投資を行ったと欧米のメディアで話題になったようだ。

ちなみにロシアでもUberが使える。ロシアのGoogleでもあるYandexと共同で配車サービスを提供しているためだ。Skolkovoに行く場合にはUberで行くのが便利だろう。

このSkolkovo Innovation Centerでは主に以下の5つの産業育成を掲げている。

- IT
- エネルギー
- 原子力
- バイオテクノロジー
- 宇宙工学

ロシアは冷戦期アメリカと張り合っていたぐらいなので、とても科学技術力の高い国だ。しかし社会主義的な経済政策と政府による知的財産の保持などの影響でなかなか起業家精神豊かな土壌が育ってこなかった。潜在的な成長力の高いテクノロジー分野に集中的に投資をして、ボトムアップの形で産業を興していくようだ。

SkolkovoにはMoscow School of Managementという学校もある。MBAなどを中心としてビジネスや経営に関して学ぶことができる。

この円形の不思議な建物がキャンパス

HighLoad++が開催されたのもこの学校で行われたため、実際に中身を覗くことができた。

HighLoad++で出会ったエンジニアたち

HighLoad++は名前の通り、高いパフォーマンスや可用性、スケーラビリティを求められるシステムを作っている人々が集まるコミュニティカンファレンスだ。私のように海外から出向いて話す者もいたが、多くはロシア国内のエンジニアで発表もロシア語で行われるものが多かった。

メインカンファレンスホールは人で埋まっていた

英語が話せる人もいたが、コアなアンカンファレンスやBirds of a feather の大半はロシア語で行われていたため、残念ながら理解できないものが多かった。それでもコミュニティの熱気や貪欲さのようなものは強く感じることができて、そこかしこで技術的な議論が行われている光景をみた。

ネットワークとセキュリティらしき話を熱く語っていた in ロシア語

お互いがほとんど初対面のはずなのに、少し話が弾むとすぐに近場にあるホワイトボードやメモ帳を手に取り議論が始まる。そういった技術的な知識に対する貪欲さをどの人からも感じることができた。

こういったカンファレンスは得てしてビジネスライクなものに終始してしまいがちで、ネットワーキングやコネクションが主な目的になってしまうことが多い。あまり大きなスポンサーがいないということもあるかもしれないが、この規模のカンファレンスでこれだけエンジニアリングに関する活発な議論をいたるところで起こすためには、カンファレンスのテーマと来場してくれる人達を相応のレベルに保つことなしには実現できないと思った。

もちろんロシアにいるエンジニアのごく一部としか出会ってないことは間違いないので、一般的な判断をするのは早計かもしれないが、しかしそれでもロシアのエンジニア達の熱意の高さと知識の深さに驚いた。技術的な知識やプラクティスを貪欲に吸収しようとしているエンジニアに多数会えたことはとても刺激になった。欲をいえば彼らとロシア語で会話できれば、よりその高い熱量のまま議論をいくらでも続けられたかもしれない。

私は仕事で行っている分散システムの最適化に関して発表をした。ちょっと抽象的な話が多かった気がするので、もう少し具体的なソフトウェアやフレームワームの紹介もできればよかったと思っている。

今回の旅でロシアのエンジニアたちと議論をすることができ、ロシアのエンジニアリングコミュニティの熱量のようなものを垣間見ることができた。以下の記事でも触れたがシリコンバレーという土地はそういった新しい技術の開発、既存技術の改善に貪欲な人々が集まりそれが地域の発展につながっている。そのような人々とロシアで出会うことができた。そういう意味ではすでにSkolkovoはロシアのシリコンバレーなのかもしれない。


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