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【最ラブ七不思議・その1】日本版と海外版でキャストが違うのは何故?

 海外版(特に扶桑目当ての繁体字中文版)をプレイした日本のプレイヤーのほとんどが驚くのは、日本版とのタイトルの違いと合わせてキャストの顔触れが全く異なっていることだと思われます。

 結論から言ってしまうと、これは「別々のルートでキャスティングを行っているから」こうなったと見られます。

 このゲームは当初『艦姫聯萌』の仮題で開発されていました。2014〜15年頃に日本の艦これブームを受けて中華圏で続々と艦船擬人化ゲームが開発され、その時に粗製乱造された艦これフォロワーがチャンピオン(日本のネットスラングで言うところの“覇権”)となった『戦艦少女』1タイトルだけを残して全滅した少し後のことです。ところが、同時期に撮影されていた実写特撮映画『艦姫』とのタイアップが決まり(と言っても映画とゲームの設定や人物は全くの別物)、ゲームのタイトルも映画に合わせて「聯萌」が取れ単に『艦姫』となりました。そして2016年10月には韓国のGamepubがゲームの開発元である成都金角網絡から韓国と日本での『艦姫』の運営権を獲得し、この時点で韓国版と日本版についてはキャスティングの裁量もGamepubに委ねられることになりました。

 そして2017年1月、韓国でGamepubが『少女艦隊』のタイトルでゲームをリリースして短期間で100万ダウンロードを達成する大ヒットを飛ばしました(この『少女艦隊』は韓国初の艦船擬人化ゲームでもあります)。音声は現地で行ったキャスティングにより、韓国語で収録されました。

 一方、金角網絡は自国内での『艦姫』の運営をオンラインゲームで実績のある上海緑岸と契約します。国内リリースに向けて5月(ちょうどこの時期に『アズールレーン』がリリースされています)にβテスト(映像)を行った際は現地の配音員(中国語で声優のこと)を起用し、中国語(普通話)音声を収録していました。ところが、この時期には「意味は字幕で理解するから音声は日本の声優を起用して日本語で収録する」と言うのが中国のゲーム業界で完全に一般化しており、中国語音声の使用が不評だったため「日本の声優を起用して日本語音声を収録する」方針へ転換しました。現在でも繁体字中文版以外では、戦闘開始時にネイティブではない日本語で「ラブ&ピースは私たちが守る」のような音声が挿入されるところにβテストの名残が見られます。

 その結果、2017年7月に中国でリリースされた『艦姫』と翌月に日本でリリースされた『最終戦艦 with ラブリーガールズ』は「同じゲームで日本語音声なのにキャスティングが全く異なる」と言う現象が発生したのでした。なお、日本版以外(繁体字中文、シンガポール・マレーシア、タイ、英語)ではいずれも『艦姫』と同じキャスティングの日本語音声を使用しています(以下は「海外版」と表記。ただし、前述の通り韓国版を含まないことに注意されたし)。

 日本版と海外版を比較すると、同じキャラクターでもディレクションの解釈が異なるためかなり別人のような印象を受けるケースがいくつか見られます。例えばファラガット(比較映像)の場合、日本版(CV:小倉唯)では「清楚で明るく素直なお嬢様」と言うイメージなのに対し、海外版(CV:蛍翔)では自分が美少女であることを鼻にかけているところがあり、また背の低さを気にしている描写も日本版には見られないところです。さらにギャップが大きいのはル・ファンタスクやプリンツ・オイゲンで、海外版のオイゲンはベテランの氷上恭子さんが演じているだけあり多くの修羅場を潜り抜けて来た老練さを感じさせるものになっています。今ではすっかり『アズールレーン』の顔になった感のある加隈亜衣さんは日本版に大和、エンタープライズ、ル・ファンタスク、ザラ、アンナ(九尾狐)の5役で出演されていますが、実は海外版でもウィリアム・D・ポーター役で出演しており、全キャスト中でただ1人だけ日本版と海外版の両方で起用されています。

 日本版のキャストは半数近くが公開オーディションによって選ばれ、中にはエイジャックス役の夏川みつき(出演時の芸名は「弥月」)さんのようにこの作品でデビューしたと言う方もおられるそうです。

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