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私は私のままで結婚したかった.1

 もうすぐ6月、ジューンブライドですね。
 ツイッターの140文字にも限界を感じてきたので、長文を書くツールを模索中です。初めてnoteを使ってみます。

 私自身は夏の花嫁だったのですが、6月だし、結婚式についてつらつら思っていたことを吐き出したい。
 具体的に言うと、マリッジブルーになったあの時を思い出しながら書くことで、今この瞬間結婚関連のことでもやもやしてる人に「あなただけじゃないよ」って言いたい。
 もっと具体的に言うと、最近結婚ラッシュを迎えるとともにすごい悩んでる友だちの一人一人にこの叫びを伝えたい。

 結婚式ってすべからくおめでたいものじゃないですか。
 いつぞやの時代のようにお見合いや家の事情で結婚させられるわけでもなし、好きな人を自分で選んで、結婚式を挙げられる時間的金銭的余裕があって、幸せの見本市みたいなみんな笑顔でにっこにこのウェディング界にお前何言ってんだって怒られそうだけど言わせてほしい。
 結婚式辛かった!正確に言うと、結婚式と共に当たり前のような顔で伸しかってくる「社会」に呑み込まれそうになることが、ウェディングドレスの美しさにハイになった脳内花畑を打ち消すくらいに辛かった!
 まあ暇な人は読んでいってください。
 それでなんか、ウェディング業界の人が新たな顧客獲得のための分析にでもこの記事を使ってくれたら冥利に尽きる。

 夫とは大学の同級生で、在学中に付き合って、社会人になって数年目で結婚しました。
 大学の授業中も、共通の友だちとくだらない真面目な話で盛り上がってる時も、就活中も、社会人になってからも、当時彼氏だった夫とはなんの差も感じなかった。私たちは同じくらい頭が良くて、同じくらい世間知らずで、同じくらい本が好きで、見た目は男と女で差異があるけど、間違いなく同じ人間だった。同じ人間だった。日本のジェンダーギャップとか知ってたし、就職した先で「女の子だから~」ってお約束のこと言われても、私と夫の間にはそんなの全く関係なかったから無視して爆走してきた。友だちも教授もバイト先の人も、「彼氏」「彼女」として、2人を同じ人間として扱ってくれていた。
 そんな2人が、初めて「はい、あなたはこっち、『主体』側」「はい、あなたはこっち、『客体』側」と選り分けられたのが結婚の手続きのもろもろだった。
 正確に言うと結婚式の手続きのもろもろかな。結婚自体は紙を1枚提出すれば済むことなので非常に事務的で楽だったよ。

 結婚式をあげることが決まれば、とりあえず大体の人はまずは会場の下見に行くと思う。
 結婚式の会場の下見に行くと、プランナーさんに笑顔で「おめでとうございます」って言ってもらえる。嬉しい。その後は会場によって違うんだけど、大きいお金の話をするからか、ときどき男性の方しか見ないプランナーさんがいる。ドレスとかお花とか、そういう可愛いものについてしか私の意見は聞かれない。
 男性側が多くお金を出すカップルが多いのかもしれないけど、うちは私の方が多く出すのに、ていうか今時そういうカップルも多いだろうに、飴玉で誤魔化されている少女になった気分になった。夫はそれとなく私に話題を回してくれるんだけど、そういうプランナーさんは、やっぱり最初と最後は男性側の方しか見なかった。
 どんなに会場が素敵でも、お料理が美味しそうでも、私を人間として扱ってくれない人たちに、私が大事に稼いだお金を預ける気にはなれなかった。最終的に、2人それぞれの顔をきちんとプランナーさんが見てくれる会場に決めた。

 会場が決まると打ち合わせが始まる。並行して、親族への挨拶や、会社の人への挨拶や、花嫁さんだと式前のエステとか(うちは花婿も一緒にエステ受けたけど)、前撮りとか、招待客のピックアップとか、そういうことをやっていく。
 そういうことの間に何度も「ご結婚おめでございます」と言われた。人生でこんなに祝われたのなんて初めてで、お祝いの大売出しだ。
 同時に「ご主人はどんな人?」「優しそうなご主人で良かったですね」と言われる機会も増えた。おいおいちょっと待ってくれ。私は誰の家来にもなったつもりはないんです。結婚しただけだ。
 これまでずっと「彼氏」で「○○君」だった夫が、結婚しただけである日いきなり「ご主人」にメタモルフォーゼした。びっくりだ。言われるたびに笑顔の裏で泣きそうになった。これまでずっと頑張って生きてきた私の体、私の心、それが紙切れ1枚で誰かの持ち物になったみたいだった。それでも「じゃあ『ご主人』以外になんて呼べばいいの?」っていう問いに私自身が答えられなかったから、「旦那さん」も同じように悲しいし、「お相手」は文脈上合わない時があるし、何も言えなかった。日本語超不便。これは真剣に日本語の欠陥だと思うから早く新しい単語が広まればいいと思う。今は「ご夫君」って言葉が結構好き。

 「ご主人」って言われる度に心臓からだらだら血を流しながら、結婚式の打ち合わせでも度々流れ弾をくらった。夫にその度に背中をさすってもらいながら、この社会が無意識に押し付けてくる「幸せ」の形があんまりにも古臭くって、古臭くって、マリッジブルーに1歩1歩着実に歩んでいった。
 まず最初に提案される招待状の形式。差出人。そこに私はいなかった。いや、いたんだけど、「夫フルネーム」+「妻名前」っていう、なんか名字を剥ぎ取られた名前だけでそこにいた。フルネームの私という人間はどこかに消えていた。
 ていうかごめんね、学生時代からずっと隣同士で夫と歩いてきたからさ、まず夫の名前が必ず自分の上に書いてあるという状態がそもそもめちゃくちゃ違和感なんだよ。まずそこから辛かったんだけどまあそれは置いておこう。
 差出人が両家の父親の名前っていうのもあった。母親はどこにいったんだろうと思った。そもそも私は母子家庭育ちなので最初からこの選択肢は取り得なかったんだけど、世のお母さんたちって自分の子どもの招待状がいきなりお父さんだけのものになって悲しくなんないのかな、ってどうでもいいことを考えた。
 結局プランナーさんに相談して、「夫フルネーム」+「妻旧姓フルネーム」という形に落ち着いた。相談して納得のいく形式が選べたんならいいじゃん、って言われると思うんだけど、そうじゃないんだ。最初に「定番ですが」って紹介された形式が「夫フルネーム+妻名前」「両家父親連名」だったことが悲しかったの。「幸せの定番はこれですよ」「家族のかたちはこれですよ。イレギュラーな人たちのために違う形も用意してますけど、あくまで幸せのスタンダードはこれですよ」って笑顔で説得されているみたいで悲しかった。

・・・・・・・

 長文書きたい欲が収まったのでこのくらいにしておこうと思う。
 長いね!まだ招待状か!そのうち披露宴の構成がマジ花嫁物言わぬ人形だとか、新郎新婦の挨拶の文例調べたら欝になったとか、誓いの言葉が嫌で泣きそうになったとか、そういう話を書けたらいいけど、来月仕事が忙しくなりそうだから無理かもしれない。

 こういう話を書くと必ず「悪妻」「旦那さんが可哀想」ってコメントもらうんだけど、物言わぬお人形が良妻賢母なら私は人間のままでいたいです。悪妻のままでいいです。悪妻がいいです。悪妻万歳。
 夫は今日も「妻さん天使だね~」って傍でにこにこ幸せそうだからたぶん可哀想ではないんだと思う。彼の幸せは彼にしか分からないけど、一番至近距離で観測している限りだと不幸ではなさそう。
 あと「女だけど私は違った」「既婚者だけどうちの妻は違った」ってコメントもよくもらうんだけど、それはおめでとうございます。貴方の幸せは貴方のものだ。この記事は私が「結婚式の慣習にまつわるもろもろが辛かった」って吐き出しているもので、貴方の幸せを否定するものじゃない。私の幸せと貴方の幸せは違うから、どうか両方が共存できる社会になればいい。貴方の幸せが私と違うからって私が変だというわけではないし、私の幸せが違うからといって貴方が変なわけでもないから、安心して貴方は貴方の幸せを謳歌してほしい。

 ちなみに私は自分からプロポーズするくらい夫のことが大好きで結婚願望も強かったのにこれだったから、結婚願望そこまでない人が結婚しなくなるのもそりゃ当たり前の時代の趨勢だと思う。結婚にまつわるもろもろ辛すぎる。
 幸い私の披露宴ではそんな挨拶する無神経な人はいなかったけど、仮に披露宴で「子供3人産んでください」なんて言われた日にはその場で白無垢に嘔吐してたと思う。少子化を本当に問題だって、国を構成する人間がどんどん減っていくことが問題なんだって本当に思うのなら、この辺もどうにかしていきましょうよ。
 妊娠したら「お妊婦さま」と揶揄されるし産休育休はタイミング考えろって言われるし保育園入れないしかといって片方が家事育児に専念できるほど配偶者の給与は高くないし、そんなご時世で披露宴で他人に「子供3人産んでください」って言われただけで私たちがほいほい産むと思ってるのならその人は相当能天気だと思う。 

 今は私は宝塚に(ひかりふる路最高)、夫はバーフバリにはまって楽しい毎日です。結婚しても墓場じゃないし好きなものは好きなままだしやっぱり2人とも同じ人間だし、貴方が望むのであれば貴方が選んだ相手と人生を共にするのはそこまで悪いことでもないんじゃないか。
 結婚してからも私は私のままだし、夫は夫のままだ。「主人」にも「家内」にもなってやるものかって思う。
 雑音は度々うるさいけどハエみたいなものだからこれからも払い除けていきたい所存。ジャイ!マヒシュマティ!

 

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