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すべての悩みは対人関係の悩みである

どんな行動もいつも特定の誰かに向けられている

 私たちは、社会の中(対人関係の中)で生まれ育ってきました。そして、これからも対人関係の中で生きていきますし、そこから離れることはありません。
 引きこもりのように、一見、対人関係から離れているように見えるケースでも、何らかの意味では対人関係のネットワークの中で生きていることには違いがありません。そして私たちは、対人関係の中で
自分とはどんな人間であるかを学び、
対人関係の中で自分の価値観を持ち、
対人関係の中で信念(考え方)をつくり、
対人関係の中で行動し、
対人関係の中で喜びを得、
対人関係の中で悩むのです。
全てが対人関係の中で起こります。

 私たちの考えや行動、そしてその結果である喜びや悩みは、全て対人関係の中で起こっていることであり、対人関係と切り離せないものです。
だから例えば、私たちはクライアントの行動を「誰に対して、どんな目的をもった 行動なのだろうか?」などという視点で見てみるわけです。人は、対人関係の中で何らかの目的をもって行動していると考えているからです。このような立場を、「対人関係論(社会統合論、システム論)」と言います。
 人は対人関係のシステムの一部であり、相互に影響しあっているという考え方です。例えば、先の不登校の件なども、子どもの内部に原因を探す(精神内界論)のではなく、対人関係の中に目的があるのではと考える(対人関係論)のです。

 相手のことを理解したかったら、「その人の対人関係はどんなものなのか? そこでは何が起こっているか?」を探ることが必要だと私たちは考えています。人は、一人だけで生きているわけではありません。対人関係の中で初めて成立するものなのです。
 極端な話ですが、対人関係(人間関係)が存在しなければ、その人の思考も行動も存在しないのです。
そのように、『対人関係の中の存在』として人を理解しようしているのです。そう考えると、『どんな行動もいつも 特定の誰かに向けられている』『人生のあらゆる問題は対人関係の問題である』などのアドラーの言葉も理解しやすいのではないかと思います。

 アドラーは、人が人生で直面する課題をライフタスクとよび
・仕事のタスク
・交友のタスク
・愛のタスク

の3つに分類しました。

 どれもが対人関係の課題ですが、ひとつずつ見ていきましょう。まず、私たち人間が一人でできることはたかが知れています。だからお互いに結びつき、補い合い、協力して生産活動をしていくことが必要となります。生産活動のためにどう協力するか?それが『仕事のタスク』です。

『交友のタスク』とは、
より一般的な人とのつきあい方の問題です。
さまざまな人に対して思いやりを持ち、相手の立場に立ち、相手と信頼関係をつくっていくことが必要となります。

 そして、『愛のタスク』は、パートナーを見つけ、家庭をつくり、子どもを育てることによって、人類の存続に貢献することです。そのためには、パートナーや家族との良い関係を維持することが必要となります。

アドラーは人の悩みは、この3つのどれかに分類されるものであり、後のもののほうがより難しいタスクであるとしています。

クライアントがこのような人生の課題(ライフタスク)に取り組み、自分らしく相手の役に立つ人生を生きていくこと。(自己実現と社会貢献が統合されている)それを支援するのがコーチの仕事なのです。

ちなみに、クライアントをライフタスクに取り組ませている力のことを、クライアントの『勇気』とよんでいます。ですから、クライアントが自分のライフタスクに取り組むようになるコミュニケーションは、全て『勇気づけ』だということになりますし、その逆を『勇気くじき』と呼ぶわけです。ですから、コーチは、勇気づけをする存在だとも言えるのです。

人生で最も大切なこと、それは 笑顔で心穏やかに生きること。これだけで、私たちは、人として価値がある。これだけで、私たちは、まわりの人に貢献でき、まわりの人を幸せにできる。