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コミュニケーションプロトコルを理解する

コミュニケーションは互いの努力なしには成り立たない

人間関係で生じる様々な問題には事欠かない。お互いの精神的ストレスにうまく対処することの重要性はみんな理解していると思う。
この精神的ストレスの原因の主なものは「コミュニケーションギャップ」だ。要するにお互いの意思疎通がうまくいかないことに起因する。

この「コミュニケーションギャップ」が起きる理由は、お互いの「考え方・捉え方・話し方」という3つの要因によるところが大きい。
これらの特徴をお互いに掴むことでスムースなコミュニケーションを心がけたい。

身近な例で言えば、コップに入っている一定量の水(事象)を見て、「これは少ない」とか、または「とりあえず充分」と思うのかは、その人の事象の捉え方や、その事象を解釈する時に置かれている状況に因る。つまりは、お互いに見ているものが同じであっても解釈が違うことが容易に起こりうることを意識するということだ。

その上、人が実際に発言していることが「本来言いたかったこと」では無いことも案外多い。話を深掘りしていって初めて「言いたかったことは、つまりそういうことなんだよ。」と分かるような場合だ。これも理解しておかないと、単に相手の言葉尻を捉えてしまい、話があらぬ方向に進んでいってしまう。これは相手の話し方に対する「自分の感情」が邪魔をして、本来は理解し合える機会を見失う。カチンと来る気持ちは生じつつも、相手の真意を探る努力をしよう。

このように相互コミュニケーションを妨げる様々な壁が存在するわけだが、どうすれば良いのだろうか。最低限、「考え方・捉え方・話し方」については、自分で管理できることであるから挑戦する意味はあると思う。

1. 「考え方」の違い(思考特性)

まずは何よりも相手と自分の考え方は違うのだという前提に立とう。同じ日本人同士であっても、それまで経験してきた様々な出来事とそれに対する考え方の蓄積が違うわけであるから、そう思っておいて困ることはない。考え方の違いは、性格に因るところもありそうだ。人の性格を分類するフレームワークがある。エニアグラムというが、コーチングの世界で知られている。

エニアグラムとは、円周を九等分して作図される図形である。昨今では、人間の性格を9種類に分類しこの図形に対応させた性格論、性格類型を指すことが多い。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

性格を9つに分類定義しているが、元来、人はその隣り合う分類も併せ持つ傾向にあるらしい。各々の分類同士で「性格が合う、合わない」ということもある。もし、相手とウマが合わなかったとしても、「そういうもんだ」と思えるだけで心の余裕が生まれてくる。


2. 「捉え方」の違い(認知特性)

どうやら人は、問題を解決する時に用いるアプローチが違うらしい。これを「認知スタイル」と言う。それは大きく「革新者」と「適応者」に分類される。前者は、物事の前提にフォーカスする傾向があり、後者は、物事そのものにフォーカスする傾向がある。

例えば、ある問題に出くわした時に、「そもそもなぜ、そうなのだろう?」と前提からリストラクチャする思考が「革新者」タイプだ。一方で、「この状況下で出来うることは何だろうか?」と置かれている制約環境に対応して物事を進めようとするのが「適応者」タイプだ。

これは、問題課題に対するアプローチの違いなのであって優劣があるわけではない。こういったアプローチの違いがあるを理解しておかないと、「いやいや、我々がやらなきゃいけないことはそんなことではないでしょう?」とお互いのミスコミュニケーションが生じる。

もう一つ、「メンタルモデル」というものがある。これは、システムダイナミクス・システム思考の分野で出てくる概念であり、起きる事象の因果関係の理解の仕方に違いがある事を指している。メンタルモデルはその人の認知特性を理解する上で役に立つ。ある事象に対する解釈が人によって違う理由は「その人がこれまで経験してきたそれに関連する物事とそれによって起きた結果」に基づくからである。既出の「コップに入っている水」の話がまさにそれだ。コップに入っている水自体に意味はない。ある一定量の水が入っているという現象(または事実)があるだけだ。それを解釈する側で意味付けがされている。

3. 「話し方」の違い(発話特性)

その人の話し方が、自分に合う合わないということもお互いの理解を妨げる大きな要因だ。要するに「あの人の物言いが気に食わない」というやつだ。

ところで、交渉学の分野では、「分配型交渉」「統合型交渉」という2つのアプローチがある。前者は、勝った負けたのゼロサムゲーム型の交渉の仕方であり、後者は、お互いにWin Winになるように協調しつつ落とし所を決める交渉の進め方だ。どちらの型を採用するのかによって、当然ながら発話スタイルも変わってくる。前者は高圧的、上から目線、マウントを取る様な方向に流れるだろうし、後者はそのような形は取らず、共感・相互理解を促すだろう。

ちなみに交渉学では、相手が分配型交渉でアプローチしてきた場合の対策もあり、そういった技術や知見を知っていることで自分が不利ならず、かつお互いにとって良い形のコミュニケーションをすることができそうだ。

また、発話者のスタイルが「プロセス重視」なのか「結論重視」なのかも話し方の違いが生じてくる。コミュニケーションで「相互共感」に重きをおく場合は、その人が行動したプロセスに重きを置くだろうし、「問題解決」に重きをおく場合は、「要するに何?」という結論重視だろう。
この違いの分かりやすい例としては、夫婦間の会話であり、妻が話す会話に対して、夫がすぐに解決法を提示してしまい、妻のひんしゅくを買ってしまう時だ。夫としては「相談をされたから協力しただけなのに?!」となる。

まとめ

今回の話は「コミュニケーション(意思疎通)」を対象とした話であり、「カンバセーション(会話)」は対象にしていない。カンバセーションは、話の中身が無くても良い時がある。例えば、「今日はいい天気ですね」という世間会話などがそれだ。また、一方通行でも成り立つ場合もある。例えば、自然と一緒に居る二人がお互いほぼ独り言をしゃべるが、何と無く会話が成立しているような場合だ。

これまでの話を図解するとこんな感じだ。コミュニケーションを構造的に捉えてみる事で、社会の中で人同士がお互いにもっと優しく、かつ生産的に生活できるようになっていければと切に願う。

Photo by Meir Roth from Pexels

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