コップに入っている水をどう捉えるか

「コミュニケーション」のプロトコルを理解する

人とのコミュニケーションをどのように円滑に進めるのかというテーマは、今も昔も変わらずにある深い内容だ。
人間関係で生じる様々な問題のネタには事欠かない。お互いに生じる精神的ストレスにうまく対処することの重要性はみんな理解している。
この精神的ストレスの原因の主なものは「コミュニケーションギャップ」だと思う。要するにお互いの意思疎通がうまくいかないことに因るものだ。

この「コミュニケーションギャップ」が起きる理由は色々あるが、お互いの「考え方・捉え方・話し方」という3つの要因によるところが大きいと私は考えている。
相手の3つの要因がこちらの希望通りに振舞うことは無いわけで、これらの特徴を掴むことでスムースなコミュニケーションを心がけたい。

身近な例で言えば、コップに入っている水を見て、「これは少ない」と感じるのか、「とりあえず充分」と思うのかは、その人の捉え方や置かれている状況に因るわけで、お互いに見ているものが同じであっても解釈が違うことはままある。

また、その人が実際に発言している内容が「本来言いたかったこと」では無いことも多い。「言いたかったことは、つまりこういうことなんだよ。」と言う様な時だ。このことを理解しておかないと、相手の言葉尻を捉えてしまい、こちらが良からぬ反応をすると、話があらぬ方向に進んでしまう。
相手の話し方に対する「自分の感情」が邪魔をして目的を見失うのだ。カチンと来る気持ちは生じつつも、相手の真意を探る努力をしよう。

相手の特性を掴むためのフレームワークを活用する

相手のコミュニケーションの特性をどうやって理解できるのだろうか?
既出の「考え方・捉え方・話し方」毎に見ていこう。


■考え方の違い(思考特性)
相手と自分の考え方は違うのだ、という前提に立とう。人の性格を分類するフレームワークがある。エニアグラムというが、コーチングの世界で知られている。

//エニアグラムとは
円周を九等分して作図される図形である。昨今では、人間の性格を9種類に分類しこの図形に対応させた性格論、性格類型を指すことが多い。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

性格を9つに分類定義しているが、人はその隣り合う分類も併せ持つ傾向にあるらしい。


一般見解として、各々の分類同士で「性格が合う、合わない」ということもありそうだ。
相手とウマが合わなかったとしても、「そういうもんだ」と思えるだけで、心の余裕が生まれそうだ。


■捉え方の違い(認知特性)
どうやら人は、問題を解決する時に好んで用いるアプローチが違うらしい。これを「認知スタイル」と言う。
それは大きく「革新者」と「適応者」に分類される。
前者は、物事の前提にフォーカスする傾向があり、後者は、物事そのものにフォーカスする傾向がある。

例えば、ある課題に出くわした時に、「そもそもなぜそうなのだろう?」と前提からリストラクチャする思考が「革新者」だ。
一方で、「この状況下で出来うることは何だろうか?」と置かれている環境に対応して物事を進めようとするのが「適応者」だ。

これは、問題課題に対するアプローチの違いなのであって優劣があるわけではない。
こういったアプローチの違いを理解しておかないと、「いやいや、我々がやらなきゃいけないことはそんなことではないでしょう?」というような軋轢が生まれる。

もう一つ、物事の捉え方には「メンタルモデル」というものがある。
これは、システムダイナミクス・システム思考の分野で出てくる概念であり、起きる事象の因果関係を理解することを指す。
簡単に言うと、「風が吹けば桶屋が儲かる」や「バタフライ効果(蝶々が羽ばたけば竜巻が起きる)」のような話だと思えば良いだろう。

このメンタルモデルはその人の認知特性を理解する上でも役に立つ。というのは、ある事に対する解釈が人によって違う時というのは、「その人の経験」に基づく場合がほとんどで、つまりバイアスが発生している。既出の「コップに入っている水」の話がまさにそれだ。コップに入っている水自体に意味はない。それを解釈する側で意味が付加される。


■話し方の違い(発話特性)
もしかしたら、これが一番の要因かもしれない。
その人の話し方が自分に合う合わないという部分だ。

ところで、交渉学の分野では、「分配型交渉」「統合型交渉」という2つのアプローチがある。
前者は、勝った負けたのゼロサムゲーム型の交渉の仕方で、後者は、Win Winになるように互いに協調しつつ落とし所を決める進め方だ。どちらの型を採用するのかによって、当然ながら発話スタイルも変わる。
前者は高圧的、上から目線、マウントを取る様な方向に流れるだろうし、後者はそのような形は取らないだろう。
交渉学では、相手が分配型交渉でアプローチしてきた場合のテクニックもあり、そういった知見を知っていることでコミュニケーションをスムースに進められそうだ。

また、その話が「プロセス重視」なのか「結論重視」なのかの違いも大きい。「共感」に重きをおく話方はプロセス重視だろうし、「問題解決」に重きをおく話し方は結論重視だろう。
分かりやすい例としては、夫婦間の会話で、妻が話す会話に対して、夫がすぐに解決法を提示してしまい、妻のひんしゅくを買ってしまうというようなものだ。


■補足事項
ちなみに今回の話は「コミュニケーション(意思疎通)」についてであり、「カンバセーション(会話)」についてではない。
カンバセーションは、話の中身が無くても良い時がある。例えば、「今日はいい天気ですね」という世間会話などがそれだ。
また、一方通行でも成り立つ場合もある。例えば、自然と一緒に居る二人がお互いほぼ独り言をしゃべるが、何と無く会話が成立しているような場合だ。こういったカンバセーションには、今回の話の対象ではない。

以上、話を図解するとこんな感じだ。


役に立つのは私生活

これらの内容は、ビジネスセクター(仕事の場)においてもちろん活用できるが、より活きてくるのはソーシャルセクター(私生活)の方だろう。
なぜならば、ソーシャルセクターの方が、一個人としての「我」がストレートに出てしまうからだ。例えば、隣近所との付き合い方、マンションの理事会でのやりとり、町内会の活動や学校のPTAでの先生・保護者間のやりとり、ボランティア活動などの個人の振る舞いは、ビジネスセクターの時とは違うはずだ。

一方のビジネスセクターでは、会社という組織の中では意思決定に関する上下関係が明確であるため、一個人としての特性は相対的に弱まる(抑えられている)傾向にある。

今後の日本社会は、女性の社会復帰、外国人労働者の増加、社会構造の変化、地域活動や市民活動など様々なコミュニティでの考え方や立場の違う人たちと関わり合っていくダイバシティーになっていくためコミュニケーションを研究し理解することは意味がある。

Photo by Meir Roth from Pexels

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Takuma Sato

リベラルアーツとテクノロジーに興味がある。 ITアーキテクト/SREエンジニア
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