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文化人類学としての日本

自分のことは自分が一番よく分かっていると思いがちだが、周りの客観的な目によって気づくことの方が多い。
それは国という得体の知れないものにおいても同様だ。

『菊と刀』(ルース・ベネディクト著)。

これは、日本人論を描いた文化人類学の第一級の書物だ。
描写されている「日本人像」があまりにも精緻でハッとすることが多い。
第二次世界大戦(太平洋戦争)に勝利したアメリカが日本統治においてその社会研究を行うことを目的に、著者で文化人類学者であるルースベネディクトに依頼して完成したものだ。

序文より
日本人はアメリカがこれまでに国をあげて戦った敵の中で、最も気心の知れない敵であった。
大国を敵とする戦いで、これほどはなはだしく異なった行動と思想を考慮の中に置く必要に迫られたことは、今までにないことであった。


「恥」「恩」「義理」「忠」「孝」など日本独特の思考・価値観について、その意義と負の面を考えさせられる。天皇を頂点とした日本の社会構造は今も続いている。

平成という世は、バブル崩壊後の対応に対する批判として「失われた30年」と言われているが、その要因の一つは日本という独特な社会構造にあるように思う。
しかし一体、何が失われたのであろうか。

日本人は、「日本人」というものを知らないのではないかと思うことがある。
米国人の目を通して見る日本人像は、我々にそれを教えてくれる。

今年、天皇が変わる。

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