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OUTLINE

 大公オーガス3世の治下にある城塞都市オード。
 数年前、軍の参謀だったエイドゥが悪魔と手を組み魔人となり、謀反を起こした。大公と軍は勇敢に戦い、闇の軍勢を退け魔人エイドゥを領外へ追放したが、現在は旧帝国期の遺跡といわれる「混沌の魔窟」に潜伏中。
 冒険者たちは軍の試練場にて修練を積み、近衛隊の称号を得て軍の斥候となり、件の魔窟を攻略すべし。首尾良く魔人を討ち取れば、子々孫々まで語り継がれる救国の英雄となるだろう! 

 ゲーム本体である「五つの試練」の購入、およびシナリオファイルのダウンロードは以下公式サイトからどうぞ。
 WIZARDRY外伝~五つの試練
 ユーザーシナリオ〔平和への妄執〕

Wizフリーク向けの解説:

 制作者としては、本家#1~#3、いわゆるリルガミンサーガおよびその数年後と言われる#5から見てざっと百年後くらいに起きた事件、という想定をしています。
 トレボー城塞やリルガミンが現実で言うイギリスやフランスだとしたら、本作の舞台は東欧とかその辺にあたります。歴史や文化の中心ではないけれど、それなりに栄えていてこの土地ならではの見所もある。そんな雰囲気。

 てことは半自動的に、歴代最大の問題作と呼び声の高い#4〔ワードナの逆襲〕とだいたい同じ時代の出来事である……ということになるのですが。
 本シナリオの世界観はベニー松山さんのノベライズ石垣環さんのコミカライズがベースです。稀代の大魔導師ワードナは邪悪なだけの存在ではなかったという和製Wizの世界線なので、本家#4とは昨今流行りのマルチユニバースばりに別世界だと思ってください。
 ちなみにワードナ様、もしかすると名前を隠してこっそりプレイヤーを手助けしに現れるかもしれません。でも、もし地下迷宮の奥深くでバッタリ出会ってもあんまり騒がないであげてください。
「し、知らんぞ? ワシはワーなんちゃらとかいう魔法使いなんぞ見たことも聞いたこともない!(ただしトレボーはくたばれ)」
 って言うに決まってますしね!

 ゲーム的な側面においても、#4っぽい要素はほぼ入っておりません。
 複雑な手順を一つでも間違えると攻略不能になる難解な謎解きとか、凶悪な迷宮を踏破・攻略するやりごたえといった要素はむしろ積極的に排除しました。うろおぼえ程度でもどうにかこうにか攻略できるし何なら力押しで突破も可能という設計になっております。
 そういう意味で、本シナリオはどこまでも本家#1~#3の系譜にあるシナリオです。ユーザーシナリオの界隈では【オーソドックス】というカテゴリに分類されると思います。
 んが、カシナートの剣にはちゃんとかき混ぜ棒要素が入っています。あくまでフレーバーとしてですが、日米折衷の解釈だとでも言えばいいんでしょうかね。「こういうのもアリかな」と感じていただければ幸い。
 他にも、迷宮の片隅に配属された兵士が左遷されたことを憂えて酔い潰れてたり、攻略アイテムになぜかエンジン式のチェーンソーがあったり、動かないエレベーターを修理するために配電盤を作らなきゃいけなかったり。ホワイトなやつもブラックなやつもコミでちょいちょいジョーク要素が出てきて……とか書いてて思ったけど#4っぽい要素けっこうありましたわそういえば。
 まあジョークのないウィザードリィなんてクリープを入れないコーヒーみたいなものなので。これは決して悪ふざけではありません。本家リスペクトです。そこんとこヨロシク。

「つまり、脱力系のお気楽ファンタジーなのか?」

 滅相もございません。
 シナリオの本筋は、ダーク路線のハイファンタジーそのものです。

 序盤こそよくありがちな冒険者の立身出世物語で、そのまま最後まで王道路線で行くのかと思いきや、強くなって実力が認められて領内での立ち位置が確立してくると雲行きが怪しくなりはじめます。
 魔人と呼ばれる男エイドゥと、大公オードⅢ世、そして美妃イスルト。三者の関係はオード城塞都市の抱える闇と矛盾そのものだった。本当の敵は誰なのか、そもそも自分たちは正しい側にいるのか、それすらわからなくなっていく……。
 Si vis pacem, para bellum――汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ。
 全ての為政者が肝に銘じるべき真理の裡で、危険極まりない平和への妄執が胎動を続けていたことを知ったとき、救国の英雄と祭り上げられた冒険者たちの本当の戦いが幕を開けるのです。
 魔人エイドゥが潜伏する〔混沌の魔窟〕――高度な文明を誇った旧帝国の遺跡。それが破滅へ至った本当の理由。天使とは、悪魔とは、世界の均衡とは。そしてヒトとは一体何なのか。
 全ての謎は、今も迷宮の最深部に眠り続けている。それを解き明かせるのはあなたの他に誰もいない……!
 
 みたいな感じ。
 若干盛りましたけどウソはついてません。本当ですよ?

 そういう意味では、本家#6のテイストもかなり色濃く漂っていると言っていいかもしれませんね。うん、ほんとに好きだったんですよBCF。最後のアレだけは未だに納得いきませんけど。

 まあ、それはともかく。

 最初に攻略する時こそ多少手こずるかもしれませんが、あらゆる謎は「たしかこうだったよな?」くらいのうろおぼえ程度で楽に突破可能。あとはひたすらダンジョンの奥深くに潜ってモンスターをやっつけてアイテム掘って、ほぼ思考停止状態で繰り返しプレイしてる時が一番楽しいというデジタルドラッグ型のゲームを強く志向しているのが本作です。
 そのためにはフレーバーがたいせつ。雰囲気のないダンジョンに長時間ダイブするのは苦痛でしかありませんからね。となるとバックボーンストーリーやテキストの表現も軽視できない。もちろんアイテムの設定も。モンスターも。迷宮も……そんな感じで作っていたら総計18層におよぶ巨大なダンジョンと、シナリオエディタのイベント機能をほぼ使い切った立派な大作が出来上がっていたというだけ。
 いやあ、そんなつもりはまったくなかったんですけど!

 ……そう。

 本シナリオの全ての要素は、あの時代のあの頃、三種の神器欲しさに地下10階をぐるぐるぐるぐるぐるぐる脳味噌バターになるまで回り続けたダンジョンダイバーたちへ捧げるためのもの……!
 俺はそんなWIZARDRYが大好きだ! 君はどうだ?! 君もそうか!
 よろしい、ならば〔平和への妄執〕を遊んでくれたまえ!

 つまり、そんな感じのシナリオです。 
 どうぞ皆様、良いダンジョンライフを!


2020/08/10

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