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RIZIN LADMARK8を見て

 RIZINの2024年の幕開けとなった、RIZIN LANDMARK 8。私は本戦からPPV観戦しましたので、感想を。

 ケラモフのトラブルによる出国不可という思いがけない事態で、摩嶋対ケラモフという目玉カードの一つが消滅してしまったこの大会。PPV5000円は、
(正直、高いな...)
 と思いましたが、お笑いカードは一つもなかったことと、メインの堀江に対する期待があり、購入しました。
 結果、フィニッシュした試合も多く、非常に満足度の高い大会になりました。買って良かった、見て良かった。


・崖っぷちマッチ

 メジャー大会では、トップ争いはもちろんですが、ここを落としたらもう呼ばれなくなるかもね、という崖っぷち感も(こう言っては何ですが)、一つの大きな魅力です。プロ野球の戦力外通告ドキュメントや、サッカーのJリーグの降格争いなど、ギリギリでの天国と地獄は、コンテンツとして人気を博します。
 今回、そこまであからさまな演出はなかったものの、負けが込んでいた三人の試合がありました。

バンタム級 瀧澤vs野瀬
フェザー級 芦田vs鈴木博昭
ウェルター級 阿部vs押忍マン

 阿部は昨年、DEEPでKO負けして王座陥落の後、RIZINでイゴールタナベの足関節に一本負け。下り坂か、と思わせましたが、この試合では怒濤の打ち合いを制しました。
 もともと打撃の評価が高い選手ですので、こうした勝ちも当然有り得ます。ただあまりに打ち気が強過ぎるので、恐らく今後も、勝ったり負けたりを繰り返して行くことになる気がします。

 瀧澤は2022年大晦日の井上直樹戦では全局面で圧倒されて完敗、昨年の太田忍戦ではロープの外に顔を出すうちにTKO負け。組み、寝技の対処が課題なのは明らかでしたが、今回も進歩を見られませんでした、少なくとも私の目には。
 強引な仕掛けを繰り返す野瀬に対して、多少は対処はしたものの、やがて飲み込まれてしまいました。バックを取られているとは言え、何ら対処をしようとせずに一方的にパウンド、肘を浴びる展開は、無惨という他ありません。もっと速く止めて欲しかったし、セコンドもタオル投入をして欲しかった。
 野瀬は完勝でしたし、イケイケな寝技の仕掛けは見ていて楽しいものの、それで勝ち続けるのは難しいでしょう。ですが今は、このまま突き進んでも良いんだろうと思います。

 そして元DEEP王者の芦田。昨年の摩嶋に落とされた試合は生観戦していましたし、シュートボクシングでも敗戦したとのこと。層が厚くなって来たフェザー級では、明らかに立場が危うくなっていました。
 対する鈴木は、千裕ではない方の、鈴木博昭。私が知っているのは、怪物くんという愛称と、キックボクサー出身ということだけ。大晦日で散々見せられたように、元キックボクサーが何も出来ずに負けて行くんだろうな、と思っていましたが...
 鈴木が打撃でプレッシャーを掛けつつ、タックルに来た芦田を浴びせ倒して上になり、三角締めの仕掛けを凌いでのパウンド葬。
 総合格闘技至上主義の私にしてみれば、
「何やっとんの...」
 という感じです。スタンドでやられるならともかく、グラウンドでやられんなよ、と思いました。DEEP王者と言っても、スケールの小さいオールラウンダーに過ぎなかったのかな、と思わざるを得ません。
 しかし鈴木の対処がキックボクサー離れした、もはや十分な総合格闘技選手としてのものであり、鈴木を誉めるべき面も大いにあったのも確かです。今後はどうなって行くのか、注目しています。

 続いて終盤の三試合について。


・矢地vs白川

 急遽対戦相手変更となったこの試合、向かい合った時点で体格差は明らかでした。
 しかし1Rはスピードを活かした白川の打撃に、矢地が下がる展開。ありゃりゃ...と思ったものの、2Rは矢地が組んで消耗させて、ラウンド終了ギリギリで落としてフィニッシュ。事なきを得ました。
 ふと気が向いて、この二人を扱ったRIZIN CONFESSION を見たのですが、矢地はまだ試合で練習の成果を出せるまでには至っていなさそう、という感があります。世間の目が大きく変わるような鮮烈な試合とは、到底言えませんでした。ライト級は層が薄いので、奮起して欲しいです。

 白川はそもそも一階級下、準備期間の短さも考えれば、この結果も仕方ありません。組みは変わらず課題だとは思いますが、この試合をもって組みはダメと烙印を押すのは酷でしょう。


・摩嶋vs今成

 ケラモフvs摩嶋がなくなってガッカリしていたので、ほぼ期待していなかったこの試合。
 ガンガン削る摩嶋に、ああもう終わるな...と思った矢先の、今成の逆転の腕十字。本当にビックリしました。
 今成と私はほぼ同い年。昔は軽量級自体が未開拓だったので、一種の異能で昔から有名だったものの、実績(レコード・獲得タイトル)的にはそこまで光るものはありません。今回もギリギリ、綱渡りの勝利だったことは確かです。しかし、綱を渡れるだけの技術を培って来ていたお陰でもあるでしょう。脱帽するしかありません。

 摩嶋は、グラウンドで極められない自信があったのでしょう。戦績的にも、かつての対戦相手達の証言からも、その自信は十分頷けるものです。直近で戦った横山武司も圧殺していました。
 実際、ストップ寸前の状態まで攻めていた以上、わずかに前のめりになったところで、の逆転負け。格闘技の怖さです。
 総合格闘技選手達の話すことを聞いていると、練習で対応力を培って初めて、それを試合で発揮できるようになる、とのことです。
 そう考えると、アマチュアと同じ練習をしているという摩嶋の環境は、巨大なハンデです。今成の関節技を警戒し、様々な想定も重ねていたはずですが、それを頭の中でやるのと、実際に体を動かしてやるのとでは、大きな違いがあるでしょう。
 しかし、稼ぎもたかが知れているであろう格闘技選手という職業、御家族の事情を考えれば、見ているだけのファンが
「東京に出て来ないからダメなんだ」
 とは言えません。
 上を狙うには今回の敗戦は痛いですが、RIZINの薄い選手層からすれば、地道に歩んで行けば浮かぶ瀬もあるでしょう。


・グスタボvs堀江

 地元大会だらこそのメインイベントという面もあったはずのグスタボvs堀江ですが、ライト級の今後を占う上で重要な試合でもあったこの試合。正直、ここがお笑いマッチだったら、私はPPVを買いませんでした。

 堀江の距離感、テイクダウン、コントロールは素晴らしく、前戦のカーライル戦がフロックではないことを十全に証明する試合でした。
 ただ、1R最終盤と、3R終盤。グスタボのパンチを食らって効かされてしまいました。特に3Rは、ダメージまで取られなかったとしても、アグレッシブで完全に上回られたことは明らか。判定での勝ち目は失せていました。
 あと一歩まで迫った堀江の実力は、称賛されてしかるべき。しかし、この『あと一歩』が遠いのもまた事実でしょう。私は、ひいきの井上直樹がアーチュレッタ相手に良い試合をしながらも、強引に一発を当てられて流れを持って行かれた試合を思い出しました。
 とは言え、ライト級の日本人選手の中では堀江が頭一つ以上抜け出しているのも確か。今後に期待したいです。

 私がRIZINを見るようになってから、グスタボは怪我多く、試合を見たことはありませんでした。打撃が強いという触れ込みで、実際強かったものの、あんまり足が付いて来ずに前のめりで打っていて、正直不格好に見えました。もちろん、強さはありましたが…
 そう考えると、次の試合はサトシとの王座戦が有力視されるものの、大きな期待は出来ないかな、というのが私の印象です。


・まとめ

 今回の大会で最も良かったのはやはり、フィニッシュが多かったこと。判定=つまらない、と短絡的に決め付ける気はありませんが、フィニッシュする気のない試合や、体力切れでグダグダの試合を見せられるのは、出来れば避けたいところ。
 怪我等による欠場があったのは残念ですが、それはよくあること。幕開けとして文句なしの大会になったと思います。来月の神戸大会も楽しみです。

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