ニュージーランド人と口論した話
この企画を見たときに。
旅の思い出かあ。
懐かしいなあ。
と哀愁に浸ってしまったので、思い出話を書こう。
ニュージーランドのダニーデンという町で、ニュージーランド人と口論になった話。
5年ぐらい前の話だが
ダニーデンという町のとあるカフェで出会ったニュージランド人の男の子とお酒を飲んでいた。
最初は当たり障りのない会話をしていたのだが、彼は、会話の中にちょこちょこ政治的な話題を出していた。
(なんかめんどくさい事になりそうだなあ)と思いながらも
彼の(話を聞いてくれ)感
が凄かったので、聞いてみた。
彼が話していたのは「クジラ問題」について。
当時、日本が商業捕鯨を再開したとかなんとか、ということで少し話題になっていた。
ニュージランドやオーストラリアの人達の中には、日本が捕鯨をする事を極端に嫌がる人がいる。
それは、肌感覚で分かっていた。
彼も捕鯨の話をしている時、極端に顔が曇っていた。
私は、正直、自分の中でこの問題に関しては「答え」があった。
私は「捕鯨賛成派」だった。
「なんで自分の文化のことを海外の人に指摘されないといけないんだ!」
って心の中では思っていた。
でも、この場で自分の意見を言ったら話がこじれるし、
どうせ
いつものように自分の話だけ押し付けて俺の意見は聞かないんだろうなと思っていた。
それで、いつものように
テキトーに話を合わせてニコニコ聞いていた。
そしたら、彼がボソリと言った。
「日本人はいつもそうだ。ニコニコして自分の意見を言わずに、この場の空気を壊さないことだけ考えているんだよな」
ピキッときた。
こいつ。
論破させたろうと思った。
ニホンジンバカニシタ。
頭の中で唸っていた。
私は英語がそんなにうまい方ではないが、この時は関係なかった。
こっちだって、聞かされたくもない政治観や宗教観を押し付けられて、ニコニコするだけにはうんざりしてるんだ。
海外ではタブーだと言われている政治的な問題だが、言いたい放題言ってやろう。
そんな気持ちだった。
しかし、ここは冷静になり
「クジラ問題についてディベートしよう」
私はそう言って自分の意見を拙い英語で話し始めた。
「オーストラリアでは、当たり前のようにカンガルーを食っているけど、日本文化の常識では、ありえないんだよ。クジラを食べるっていう日本の文化があって、ニュージランドにはないってだけの話じゃない?そこまでアツくなる理由がオレには分からないな」
ゆっくり2分ぐらい掛けてこの想いを英語で話した。
彼は、じっと私の話を聞いて、理解できない所は聞き返してきた。
そして、私が話し終わると彼が言った。
「カンガルーは、数が増えすぎて生物のヒエラルキーのバランスを崩しかねているんだ。クジラは数がめちゃくちゃに減っている現状でカンガルーと同じ考え方をするのは良くないと思うな」
・・・確かに!
納得してしまった。
※後々調べてみると、クジラの数が減っているというのは、一部間違っており、種別によっては増えているクジラもある事が判明した。日本政府はヒエラルキーのバランスを崩さない程度に捕獲量を調整しているらしいのだが、その時はそんな情報知らないので、納得してしまった。
それで切り札を出した。
「じゃあ歴史的に見て、捕鯨していた国が日本だけじゃないと言う事はご存知ですよね?今は捕鯨を止めている国は沢山ありますけどクジラの数が減少している原因は何も日本だけじゃないですよね?自分達のやってきた行いを無視して日本に押しつけるのはおかしくないですか?」
彼は、この意見を聞いて、一瞬止まった。
(これは、言い返せないだろう)
私は、心の中で勝ち誇っていた。
彼は、苦々しい表情を浮かべていた。
そして、声を震わせながら私に言った。
「ニュージランドにある宗教があってさ」
よく見ると、彼は目に涙を浮かべていた。
そして彼が言った。
「その宗教では、クジラは神なんだよ。だから捕鯨を止めろとは言わないけど、なんかさ凄く嫌な気持ちになってしまうんだよね。ただそれだけを理解してもらいたくて。クジラを食べる時に少しだけそのことを考えて欲しくて。。」
ズキリときた。
理屈じゃなかった。
彼は、彼の価値観で大切にしているものを、
日本人が平気で踏みにじっているように感じたのだろう。
彼の発言を聞いて、感情が揺さぶられた。
「sorry」
私は無知だった自分に謝った。
ニュージーランドには、マオリ族という先住民がいる。
彼が「クジラの神」と言っていたのは、このマオリ族の伝統的な宗教から来ているものらしい。
実は、ニュージーランドの宗教と日本の神道には共通点がある。
それは
森羅万象に神が宿ると考えられている所。
八百万の神と言われるように、日本は昔から自然を愛し、生き物を愛してきた。
この宗教観はニュージーランドのマオリ族の宗教観も共通しており、ニュージーランド人もまた、自然と生き物を愛する種族である。
※この事実の根拠となる一次情報は載せない。なぜなら、面倒くさいから。気になる人は調べてください。
涙を流しながら、訴える彼を見ながら私は彼の心情を理解した。
私は誤解がないように以下の事を丁寧に説明した。
「私達、日本人も
生き物や自然を愛する人種です。
食事を頂くときは必ず
「頂きます」と「ごちそうさま」と言い
生き物への感謝の気持ちを抱きながら頂いています。だから心配しないで」
我ながら、
このタイミングで
この説明が出来たのは、ファインプレーじゃないだろうか。
彼は、私を理解してくれた。
その後、私たちはニュージーランドや日本の事について話をした。建て前で話をする必要がなくなったので楽だった。
この経験を通して思ったが。
あらゆる国際問題の中には、理屈では解決できないものがあるなあと。
理屈を付けて、白黒を付ける事は出来るけど、
それは、お互いの関係の改善には何の解決にもならない場合がある。
例え、相手を言い負かしたとしても、それは自身のエゴであり、関係を余計悪化させるだけではないのか?
大切な事は、相手の価値観を理解し、自分との違いを理解する事なのじゃないだろうか。
そのためには、自分のことも知らないといけない。
なんか最後、
人生哲学みたいなことになってるな。
無事に仲良くなった彼は
将来、政治家になりたいそうだ。
いつか、政治家になって日本と良い関係を構築してくれ。
大自然に愛された国、ニュージーランド。
おすすめです。
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