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感染症に罹った部下が今日も何食わぬ顔で出社してくる

「部下が感染症を持って出社してきたらどうしますか?」
「チームメンバーが突然失踪したらどうしますか?」
「同僚が毎日違う理由で遅れたきたらどう指導しますか?」

「クビにした社員から訴えてやると言われたらどうしますか?」
「負けられないRFP。競合が賄賂で有利に進めようとしていたらどうしますか?」

もしこんな問いかけから始まるマネジメント本があれば是非読んでみたい! 少なくとも私は知らないです。上記はどれも経験したくないですよね。1つか2つは長いキャリアの中で図らずも経験することはあるかもしれないけれど、海外の現場ではこれがリアリティであり日常茶飯事です。少なくとも私は、程度の問題はあれどトラブルのなかった日はありませんでした! リーダー、マネージャーというのは経営戦略の本に載るような美しくかっこいい話だけではなく、日々発生するかような問題を、冷静に且つ真摯に対応できる精神力、胆力、行動力が求められるものだと思っています。こうした経験を積み重ねて、トラブルを未然に防ぐセンスを身に着けながら大きな仕事を作っていくものだと実感しています。そうして泥臭いところが取り除かれて、後付けで一本のストーリーにされたものが教科書に載る戦略や成功体験なのではないでしょうか。

私は幸い、海外経験が長く人格者の素晴らしいリーダーの下で長く働くことができました。ある朝、私が寝ぼけ眼で着信を取ると、以前解雇した部下から「お前を訴える準備をしている」と電話口で凄まれたこともあります。訴えられるというのはこちらにも何か落ち度があるような気がしてしまいますが、そのリーダーは私を責めるでも誰を責めるでもなく、冷静にあの手この手を考え窮地を乗り越えていきます。起こったことはしょうがないと気持ちを切り替える前向きさにはいつも感心していました。

今日はそんなグローバル・リーダー、グローバル・マネージャーが最初に持つべき信念についてです。

今後の海外に関わるビジネスはグローバルとローカルを行ったり来たりするものだと思っています。いずれにしても、大局観を持ちつつ、目的を達成する道のりの中で日々発生する問題に折れない心で対峙できる人間を増やしていかないと、日本は益々競争力を失っていくという危機感を持っています。厳しいグローバル競争環境の中、人間サンドバッグ状態で戦った私の話が世界で戦うビジネスマンの励みになって欲しいと思っています。面白いや役立つ話があれば、noteにアップしていきます。

さて、グローバル・リーダー、マネージャーが持つべき信念は人によっていろいろと考えがあると思いますが、私は一番大事なものは究極的にはただ一つだと思っています。それは何か? そこに行き着く例として、冒頭の「部下が感染症を持って出社してきたらどうしますか?」について。日本だったら病院が配慮して隔離するなり長期で休みを取るように指示するなりあるものですが、それが世界の常識ではないので、普通に感染症患者が会社に来てしまうんです。気をつけないといけないのは、英語や外国語の病名は難しい単語なので聞き逃してしまう場合があるのですが、ここはちゃんと聞いて自分で調べて対応する必要があります。私のケースの場合、ある日部下の様子が明らかにおかしいので本人に聞いて辞書で調べたところ、それがある慢性感染症だったので、それはまあ驚いて本人をすぐに帰らせました。職場にいた社員に病院に検査に行ってもらって、最近オフィスに立ち寄った人に報告をして、本社に報告して、そしてオフィス内を消毒して、とごく当たり前の対応をしたのですが、この話まだ続きます。

ある日、お客さんのオフィスに行ったら相手方が随分調子悪そうなので様子と聞いたところ、なんと同じ感染症でした。普通に働かされているじゃねーか! とずっこけると共に、かの国はこういうセンスなんだ、とある意味、病気に大らかな国柄に感心してしまいました。しかし一番大事なのは、だからと言って"郷に入っては郷に従え"で他者に迷惑をかけうる原因を放置するのではなく、自分で調べてしかるべき対処を取るという当たり前のことを徹底することです。よく日本人でも、「あの人は○○人化した」と陰口されるような良くも悪くも何事にも大らかになってしまう方がいます。相手の国の方を批判するわけではないですが、究極的には「命」に関わるものは絶対に疎かにしてはいけないと思っています。つまりは「健康・安全第一」を信念を持って徹底することが、グローバルリーダーとして、グローバルマネージャーの第一歩だと思います。特に健康は我が国は一日の長があるので、必要なときには周囲に教えて、対応を徹底することです。今回の例で言えば、まずは罹患した社員をしっかり休ませる、彼/彼女のジョブセキュリティを守ってあげること(闘病中にクビになる心配があったらおちおち休めないと思います)。そして二次被害を出さないように、他の仕事よりも優先してできることを率先してやりきることです。

リーダーがこういうメッセージと行動を明確にし環境を整備することによって、会社に、チームに安心感が醸成され、メンバーが日々の仕事に邁進できるようになると実感しています。戦略よりも事業計画よりも、まずはそこで働く「ヒト」のことを考える。ごくごく当たり前のことですが、意外と気づけていない人が多いと思います。大きな仕事を取るために、まるでゴルゴ13のような世界が展開されるグローバル・ビジネスですから、自分自身、家族の身そして社員の身を自分が守り切る気概と信念を持って臨んで欲しいです。

これが私が最初にグローバル・リーダーから学んだことです。もし参考になれば幸いです。

ちなみにこの社員は数ヶ月の療養の後、ちゃんと仕事に復帰しました。感染症も症状や段階によるので、必ずしも隔離的な対応が求められるわけではありません。今回は「健康・安全第一」を強調するために印象的だったこのエピソードを出しました。

いつも読んでいただいて大変ありがとうございます。