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(3)第2章 子どもと孫たちに、何を残し伝えていくか?

前回までのお話は⇒こちら

さて、第2章では、この恵那市で私がささやかながら携わってきた活動について、紹介させていただきます。

世界規模の環境に、私たちは直接何かができるわけではありません。今、暮らしているこの地域の中で、何ができるだろう?

そう考えた時、私は「循環型の地域社会」をつくるために、足元から動こうと思いました。

恵那市で活動するうえで、色んな課題がありますが、もっとも重要な課題だと感じたのは「森林環境」でした。

人口の高齢化と同様に、戦後全国一斉に植えられた人工林もまた高齢化が進んでいます。恵那市の面積の77%が森林です。そのかなりの6割ほどを人工林が占めています。

成長しきった人工林の針葉樹は、もうすでに呼吸だけでこれ以上CO2を吸収することはありません。

本来なら木材として、再生可能エネルギーにも使えて、水資源、防災、CO2吸収源として多様な機能を発揮するはずの森林が、そうした機能を発揮できず劣化していっています。

そして、国内にこれほどの資源があるにも関わらず、海外の森林資源を輸入して破壊してしまっているのです。

日本が、国内の森林を整備して活用する意義は、国内と国外、両方で非常に大きなものになるのです。

2009年、この恵那市で日本で初めての「木の駅プロジェクト」が始まり、まずその最初の事務局を経験させていただきました。

人工林を手入れした間伐材を搬出して、地域通貨を発行し、山と里を同時に活性化。この取り組みから、地域循環型の経済の重要性と可能性を学びました。

中野方、笠置、飯地に続き、山岡・明知での木の駅立ち上げや、花白温泉への薪ボイラ―導入のプロジェクトなどにも参加させていただきました。

そして、次世代、若い人たちや女性にも、日本の森林の状況に関心を持ってもらいたいと考え「林業女子の山しごと体験ツアー」などの企画を実施しました。20代の若者や女性たちが、楽しんで山づくりを体験してくれました。

2014年、自分の子どもの子育てを兼ねて「ぼうけんくらす」という企画を始めました。大人も子どもも、山や田畑に親しもうという企画です。各地から、想いのほか多くの家族が参加してくれました。

お昼ご飯も、かまどで薪を使って焚きました。おじいちゃん、おばあちゃんたちにとっては当たり前のこと。でも、私たち世代は、子どもと同じです。

目の前にある山の資源でご飯を炊いて食べられる。そんな自信をつけたのは、むしろ私自身です。

実は、岐阜県は「森のようちえん」や「プレーパーク」の取り組みがさかんな地域です。

先月には、多治見の森のようちえんの浅井園長が本を出版されましたし、11月には美濃市で全国フォーラムが開催されます。

自然の中で子育てできる環境は、「移住定住促進」という観点からも重要です。

そんなこともあり、恵那地域の「森暮らし」を知ってほしいと思い、フリーペーパーを作って情報発信なども行いました。それがきっかけとなって、「えなの森林づくり推進委員」にも声をかけていただきました。

そして、ようやく2015年に、私たちが今住んでいる地元上矢作での活動が始まりました。

主に地元の60~80代の有志が中心で活動している「なつかしい未来の会」です。「自然と共生して持続可能な山里をつないできた80代のメンバー、その「知恵と技と心」を受け継ぎ、次世代につなぐことを目指しています。

この写真は、左は86歳になる会長。右の写真は、山で伐った雪倒れの木を、人力で運びだしているところです。

人力、つまりゼロエネルギーで、重機くらいの量の材木を運んでしまうこの方法。「木馬(きんま)」といいます。

目の前で、実際に何度も見ているのですが、毎回信じられない気持ちです。「どうしてこんなに重いものが、人力だけで動いてしまうんだろう?」と。

林業女子会@岐阜の20代の女性たちも、見学・体験に来て引きました。動きました。小学校4年生の子どもも引きに来てくれました。動きました。

50年前ごろまでの林業の技。今の私たちにこんな知恵はないです。ビックリすることばかりです。

この木馬搬出の見学に、かなり遠くからも参加される方がありました。

そうして、人力で運び出した材木、これを町内に唯一残っていたかつての製材機をつかって、みんなで製材体験も実施。林業の現状を知ってもらい、木材の活用についてアイディアをもらいました。

やっぱり、年配の方は皆さん言われます。

「建物に材木として使うために、えらい目して植えて、下刈りや枝打ちやなんか60年かけて手入れしてきたんやよ。ただ燃やすなんて、そんなもったいないたるい話ないよ」って。

それで、やっぱり製材した柱や板で建物を建てたいという話になりました。山里の知恵と技と心を学ぶ「拠点づくり」です。

こうして「山里のコミュニティハウスづくり」へとつながっていきました。

次回に続きます。

えな山里楽耕&Tellus Ludensの活動を通じて、心豊かな未来をつくるYUMIKOの活動を応援いただければ幸いです。