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梅雨の思い出

梅雨がきた。


この季節、わたしはよく子どもと一緒に散歩をしていた。


黄色い長靴、水色のレインコート。緑色のカメの形をした可愛らしい傘。
ニコニコと無邪気な表情。わーいっていうより、へへへって企む感じも可愛くて。

2歳になったばかりの彼は、雨でも外に出れることが嬉しそうだった。

わたしたちには、いつものお散歩コースがあった。

家を出たところに駐輪場があって、その周りをぐるっと一周するのだ。
どんな自転車があったかは全く覚えてないけれど、
ボーボーに生えた草の上にカタツムリがいたのは思い出せる。

これが雨の日のお散歩コースだった。

サーサーと降る雨の雫を、彼は傘を広げて、ひっくり返してためて楽しんでいた。
ばかだなぁ、もう。

そんな中、わたしは、道端の葉っぱにのる1滴の雫を撮るのに夢中だった。

買ったばかりの一眼レフを持って外に出かけていたのだ。
「雨の日にカメラを持ち出すのは危ない」なんて、思いもしなかった。
雨の日にしか撮れないものがあるのだから。


わたしにとって、あの日のお散歩は、子どもに付き合う時間ではなく、お互いのその場所でしかできない楽しみを味わう時間だった。

つい先日、彼の新しい傘を買いに出かけた。
いつも気づくと彼の傘は壊れてる。開くけど、閉じなかったり。骨が1本折れていたり。

あの日から7年経っても、彼にとって傘は遊び道具の1つなのだ。

今年はどんな梅雨になるだろう。
梅雨入りのニュースを聞き、あの日の散歩を思い出すのだ。

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