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異国から母の日に贈るものは

 昨年の今時分、ほとんど交流のない妹から不意に電話が掛かり、

「お姉ちゃんは、スウェーデンのパンデミック対策に関していろいろと偉そうなことを配信しているけれど、先週の記事のタイトル、新型炎が新型炎になっているような気がするんだけど」

 と指摘された。

 確認したら、指摘された通り、「肝炎」、と誤字になっていた。書いていた時には脳裏に「肺」という字を描いていたのであるが。

 読んで下さった方々からの指摘あるいは批判は無かった。記事に対する訂正は、時と場合によっては角が立ってしまう危惧もあるため、なかなか勇気を要するものである。どなたかに迷惑が掛かる前に妹が指摘してくれて助かった。疎遠になってはいても妹は妹である。


 しかし、この時妹が連絡して来た理由は誤字の指摘ではなく、別件であった。


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 すなわち、母への贈りもの相談のためであった。

 私の両親にとって、一番の贈り物は孫達の顔を見せることであった。

 そして、それが私にとっては一番、贈り難いものであった。

 多くの方々が経験をされていることであろうが、これは、親を日本に残して海外に住んでいることの弊害の一つである。しかもかなり比重が大きい弊害である。私達の場合は、帰国するタイミングがつかめずに何年間も帰国しない時期もあった。

  よって私に用意できる贈り物は大抵の場合、「モノ」であった。

 母の一番好きな「モノ」は花である。妹は、今年は花を贈ると言っている。


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 私もかつて母に鉢植えの花を贈ったこともあった。しかし、家の中も庭も、既に花や植物だらけで、一体、何が欠けているのかは私にはわからない。普通に店やネットで購入できるもので、家、および庭の中に無い植物などないようである。庭は、ご近所にジャングルと命名されている。

 かといって、 切り花の命は儚すぎる。 

 プリザーブドフラワーにクッキーを添えて送ったこともあるが、今後は逆に、花の命は儚いからこそ美しいのではないか、とプリザーブドフラワーの意義にも疑問が湧いてきた。

 数年前には盆栽を贈った。母は、植物を長く生かして置くことに長けているため、この盆栽を短期で死なせてしまった時は非常に落胆していた。よって、盆栽を贈ったのもその時限りである。


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 今年に入ってからはTENS(低周波治療)器を贈った。病後の神経痛がつらい、と嘆いていたからである。TENSは神経痛に効くのではないかと期待をして大枚をはたいたが、今のところは効果は見えないようである。

 数年前に贈った脚マッサージ器は毎晩使っているようだ。これは脚が疲れる方にはお勧めである。近所の人も時々借りに来るそうだ。

 しかし、今までいろいろと贈ったものの中では、無用の長物になってしまったものもある。

 

 去年、店頭からトイレットペーパーが消えた時はトイレットペーパーを贈ろうかと思いついた。

 8ロール12パック入りというものが通販で見つかったので打診してみた。

「貴方、私が一人でどれだけトイレットペーパーを使うと思っているの!?いろいろなところから頂いたものだけでも一年は持ちますよ」、

 が返答であった。

 去年の春、トイレットペーパーはこちらでも大変重宝されていた。ゴルフで優勝した人が一年分のトイレットペーパーを景品としてもらったらしい。


 実は、母が今年の5月9日に所望しているものはわかっている。 

 残念ながらドクターストップが掛かっているものである。母は無類の甘い物好きなのだが、本来なら大福一つでも口にして欲しくはないところである。

  

 しかし、パンデミック時代に突入してからは考えが変わった。

  母は、多くの楽しみを余儀なく奪われた。

 母に限らず、世界の多くの方々が不安と不便な生活を強いられている。

  今は、人生を、楽しめる時に楽しまなくてはいけない時期になっている。甘いものの一つが、せめてもの人生における楽しみになるのであれば、少しぐらいならばいいのではないか。


 母が大好きなものを、手遅れになるまえに二キロ分贈っておこう。


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  母が大好きなものは干し芋である。


ご訪問いただき有難うございました。

一番最後の写真は、こちらのスーパーにある甘芋と天津甘栗で栗きんとんを作ろうとした不毛の挑戦でございました。栗きんとんだと思わないようにすればそれなりに美味でした。