イベントに合わせて移動する Uber/Lyft のドライバー達

先月は、Indian Wells でテニストーナメントを観るためにカルフォルニアに来ていたのですが、初日に車で会場に出かけた時の体験がとても悪かったので(駐車場代が高い上に、そこから10分以上歩かされ、さらに、セキュリティゲートが大混雑)、次の日からは Lyft (Uber のライバル企業)で行くことにしました。Lyft で往復した方が安い上に、駐車場とは反対側のゲートから入場できるので、時間が15分以上節約できるのです。

このトーナメント(BNP Paribas Open)は、西海岸で最も大きなテニストーナメントで、世界的に見ても4大メジャーに次ぐと言われています。観客の数は数十万人規模で、Indian Wells だけでなく、近隣の Palm Springs、La Quinta に大量の人が集まります。

当然ながら、近隣のホテルは全て一杯で、AirBnB の値段も普段の倍以上になります。Uber/Lyft のドライバーも大忙しのはずで、多少は待たされることを覚悟して呼び出したのですが、意外にすぐ迎えに来てくれました。

その話をドライバーにすると、この手のイベントがあると、遠くからドライバー達が移動してくるそうです。Indian Wells は、ロサンゼルスから2時間ぐらいなので、十分に「出稼ぎドライバー」が出来る距離です。そのドライバーは、なんと(8時間以上離れた)サンフランシスコから来たドライバーに会ったそうです。

ちなみに、この手のイベントのために来た出稼ぎドライバー達は、ホテルなどに泊まらず、自動車の中で眠るそうです。そもそもホテルが満杯だし、(イベントのために高騰した)ホテル代など出す余裕はないのです。

タクシーの場合には、決まった「営業地域」があるため、この手のイベントのためにタクシーの運転手がが泊まりがけで別の地域に移動して営業することなどありません。しかし、Uber/Lyft の場合は、それぞれの運転手が個人事業者なので、日々の営業地域は、本人さえ納得すればどこででも出来るのです。

同じ運転手達が、CES の時期になるとラスベガスで「出稼ぎドライバー」をしているのでしょう。普段は別の仕事をしていて、この手のイベントの時だけドライバーをする「イベント専用」のドライバーもいるのだと思います。

こんな風に、個人事業者である Uber/Lyft のドライバー達が、全米の各地のイベントに合わせて移動し、全体として需要と供給のマッチングを行っているのです。

「なんだかすごい時代になったものだな」と思いつつ、同時に「でも、この人たちの職も、後20年もしないうちに自動運転に置き換えられてしまうのか」という不思議な気持ちになりました。2030年の Indian Wells には、全米からロボットタクシーが集まって来て、観客達のニーズに答えるのでしょう。

この記事は、メルマガ「週刊 Life is beautiful」からの引用です。毎週火曜日、米国のIT事情やベンチャー市場、および、米国と日本の違いなどについて書いています。

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