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認知療法の「コラム法」を実践する上で大事だと思ったこと

はじめに(前置き)

※本題は次節から。今回の記事はコラム法についてなんとなくでも知ってる方向けの記事になりますので、「そもそもコラム法とは~」という説明には触れていません。ネットで調べると沢山情報が載っているので興味のある方は調べてみて下さい。

 今回はACTではなく認知療法(というよりコラム法)についてです。個人的には、恐らく日本で一番普及している?心理療法は認知行動療法ではないかと勝手に思っていますが、その認知療法の実践法として「コラム法(自動思考記録表)」が特に有名です(リンクは厚労省のpdfです)。
 私はこの数年間で、自動思考記録表を恐らく100回位は書いてきたかと思います。回数をこなしたらその分レベルアップとかそんな都合の良いものではありませんが、大抵の方は初めて書くときには時間がかかると思います。コラム法の実践はよく自転車の練習にたとえられていて、練習して漕ぎ方(書き方)が分かるとあまり苦労せずに書き上げることが出来ると言われています。
 ただ、今回自分が取り上げたい内容は、コラム法は「上手に書ける」事が別にゴールじゃないよねという話です。これに関して自分自身が誤解していたというか、数をこなしていつの間にか慣れてしまって、結果としてなんだかあまり上手く活用できていなかったなと気付いたことが最近あったので、他にも似たような方がいるかもしれないと思い今回の記事を書いてみようと思いました。前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入ろうと思います。

コラム法の肝ってなんだろうか

 結論から書くと、私はコラム法の中でも『「気分」をきちんと掘り下げて書く事』と、『「自動思考」をシンプルに表現する事』がとても大事だったなと、随分時間が経ってから思うようになりました。
 まず、私は元々コラム法を行う上では『「根拠」と「反証」をきっちり整理して、事実ベースで現実的な適応思考を考えて気分を和らげる』事が最も重要だと長い間考えていて、その前提でコラム法にも取り組んでいました。もちろんそれらは大切なことです。ある心理士の先生は「根拠がとても重要だ」と言い切っていたりもしていたので、根拠・反証をきっちりと整理して、自分の思考を修正する事はとても大切です。
 ですが、それは「ある程度掘り下げて自分の感情を見つめることが出来る」前提の上の重要さだという事を、どうやら自分は長い間見落としたまま取り組んでいた事に最近になって気付きました。
 ここまで書いて、あんまり具体性がないとイメージし辛いなと思ったので、少し自動思考記録表の例を示します。

(例)仕事中に失敗をして落ち込んだ状況
<状況> 
仕事中に失敗をした事で上司に叱責された
<気分> 
悲しい(80%) 焦り(70%) 罪悪感(70%)
<自動思考>
①どうしてこんな失敗をしてしまったんだろう
②周りに迷惑をかけてしまったな
<根拠>
仕事中に〇〇という失敗をした。その遠因に□□があったが、それは自分ではコントロールできない事だった。この仕事にはまだ慣れておらず、〇〇という失敗は今回が初めてだった。この失敗で他のスタッフにフォローしてもらう事になった。過去に違う失敗をした時にも他のスタッフに迷惑をかけ、同じような叱責を受けた。上司は失敗する部下に対しては感情的になりやすい人だった。
<反証>
・失敗は誰にでもあるので、気にしすぎないようにしよう
・失敗してしまった原因と対策をしっかり練ろう
・会社はチームプレイだから周りに迷惑をかけてしまう事もある。今後同じような失敗をした同僚がいた時にフォロー出来るようになろう
・□□という前提も失敗に関係しているのだから、自分の手の届く範囲だけの問題ではない。
<適応思考>
仕事中に失敗をして、上司に叱責を受けて落ち込んだが、失敗は誰にでもある事だから気にしすぎないようにしよう。□□という前提は自分ではどうしようもない部分だったのだから自分ばかり責めても仕方がない。会社はチームプレイなのだから、今後同じような失敗をした同僚がいた時に上手くフォローできるようになろう。               確信度:35%
<今の気分>
悲しい(60%) 焦り(60%) 罪悪感(60%)

 こんな形で例を示してみます。ぱっと見、それなりに書けているように見えるかもしれません。しかし、このケースだと確信度が低く、今の気分も下がっているとはいえそれほどの変化がみられる結果にはなりませんでした。あくまで仮のケースですが、この場合気分をもっと掘り下げると「恥」「不安」「怒り」がある事に気付いたとします。そうなると当然、自動思考も変化します。

(例)仕事中に失敗をして落ち込んだ状況その2
<状況> 
仕事中に失敗をした事で上司に叱責された
<気分> 
悲しい(80%) 焦り(70%) 罪悪感(70%) 恥(90%)  不安(90%) 怒り(80%)
<自動思考>
①どうしてこんな失敗をしてしまったんだろう
②周りに迷惑をかけてしまったな
③周りから呆れられて嫌われてしまうかもしれない
④なんでこんな簡単な事も出来ないんだ

<根拠>
仕事中に〇〇という失敗をした。その遠因に□□があったが、それは自分ではコントロールできない事だった。この仕事にはまだ慣れておらず、〇〇という失敗は今回が初めてだった。この失敗で他のスタッフにフォローしてもらう事になった。過去に違う失敗をした時にも他のスタッフに迷惑をかけ、同じような叱責を受けた。上司は失敗する部下に対しては感情的になりやすい人だった。
<反証>
・失敗は誰にでもあるので、気にしすぎないようにしよう
・失敗してしまった原因と対策をしっかり練ろう
・会社はチームプレイだから周りに迷惑をかけてしまう事もある。今後同じような失敗をした同僚がいた時にフォロー出来るようになろう
・□□という前提も失敗に関係しているのだから、自分の手の届く範囲だけの問題ではない。
・周囲の人はミス一つぐらいで見捨てたり嫌ったりはしない。むしろしてしまったミスは積極的に共有して、皆が同じことを繰り返さないようにしよう。
・自分に対する期待値を上げすぎないように。誰だってミスする事はある。恥や怒りを感じるかもしれないが、これからいくらでも挽回の機会はある。

<適応思考>
仕事中に失敗をして、上司に叱責を受けて落ち込んだが、失敗は誰にでもある事だから気にしすぎないようにしよう。□□という前提は自分ではどうしようもない部分だったのだから自分ばかり責めても仕方がない。会社はチームプレイなのだから、今後同じような失敗をした同僚がいた時に上手くフォローできるようになろう。周囲の人はミス一つしたぐらいで見捨てたり嫌ったりはしないから不安に思いすぎる必要は無い。これからいくらでも挽回の機会はあるのだから。               確信度:55%
<今の気分>
悲しい(40%) 焦り(40%) 罪悪感(45%)

 どうでしょうか?まぁあくまで仮のケースなのでこれが正解とかそういうものではありませんが、自分の中の気分や感情により深く気付くことで、自己分析ないしそれらに対する反証も変わってくると思います。その時の状況における自分の中のコアな感情を見逃して自動思考記録表を書いてしまうと、確信度はあがりにくく気分の変化も起こしにくいかなと、個人的には感じています。

おわりに


 個人的には認知療法の適応や効果には限界があると思っていますし、これをやれば全ての不快な感情をどうにかできるとも思っていません。ただ、今現在コラム法に取り組んでいる方で思ったように気分の変化を導き出せない方がいる場合は、その原因の一つにもしかすると、今回の記事のような「コアな感情の見落とし」があるかもれません。あくまで一当事者の私見ですが、この記事が何かのヒントになれば幸いです。
 私のnoteでは、心理療法を独学でやってみる方向けに自身が過去に取り組んでみた心理療法の感想や気付いたポイントなどを記事にしていきたいと思いますので、興味のある方はまた読んで頂ければ幸いです。





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