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うつ病のセルフヘルプ本を選ぶ前に、「今の自分が求めているもの」を考えた方が良いかもしれない

はじめに

 世の中にはいわゆる「セルフヘルプ」の本が沢山あります。うつ病などの心の問題であればどちらかと言えば専門の心理士の先生を頼りカウンセリングを受けるのが良さそうですが、現実的に金銭的または生活状況的に難しい人も多いと思います。いやまぁ、そこをケチるなよと怒られそうですが、現実的に保険診療外の治療を継続して受けるのは中々大変です。自分も含めそういった方はセルフヘルプの本を手にして、独力で自身の状態改善を目指すことが一つの選択肢になるかなと思っています。
 私はうつ病の診断を受けて休職していた時期に、セルフヘルプの本を探しまわっていた時期がありました。ですが、その中で役に立ったものはわずかだったと思っています。しかしそれは、その本の質が低いとか役に立たない内容だったとかそういうことではなくて、「今の自分がその本が対象としている人の範囲に含まれていなかった」という事だったのかなと今は思っています。そう思うようになったきっかけは、最近、一番しんどかった時期に興味津々で買ってみたけど、その当時読んでみてもピンと来るものが無く放り投げていたあるセルフヘルプ本を読み直してみたら、驚くほど内容がすんなりと頭に入って納得できるものだったという体験をしたからです。当時は内容的にどうにも理解も受け入れも難しく、さらっと読み流してそのまま長く本棚の奥で眠っていました。こういう体験をしたことのある方も、意外といるのではないでしょうか。若い時にいわゆる自己啓発本を読んでいた時も、なんとなくサーっと読み流して終わる事がありましたが、それに近い感じでした。「なんとなく良さそうなことが書いてあるとは思うのだけど、それを今の自分にどう活かせばいいのかイメージできない」といった状態です。それは書いてある内容の質(が全く関係ないとは言いませんが)以前に、自分が何を求めているのか良く分かっていない状態だったのかなとも思っています。タイトルは、そういう自身の経験から思った事です。ただ言うは易し、行うは難しだなとも思います。そもそも「今の自分に合ったものを冷静に判断して適切に取捨選択できる」人は、セルフヘルプ本に無理に頼らなくても大丈夫じゃないかと思ったりもしますし。そういう意味では、タイトルに当てはまらない人も当然いるだろうなとも思います。
 しかし、完全に手探りでいちから本を探すのも大変です。どうしても漫画や文庫本と比べると少し高めの値段になるので、失敗できないと躊躇もしやすいかと思います。そういった「何かを始めてみた方が良いと思っているけど、何から始めればいいか分からない…」という方向けに、今回は、すぱ郎の主観でしかありませんが、自分を「どうしたい」と思っているかで選ぶ本のジャンルが変わるよという視点で、少し読んでみる本のジャンルを例示してみたいと思います。繰り返しになりますが、あくまで私個人の経験だけで書いていますので、偏った内容になる事はご承知おき頂ければと思います。

時期別セルフヘルプの分類(私見)

 私自身を振り返ると、心理療法に取り組む時期としては3つの段階があったように思います。1つ目が「自分のケアをしたい」時期、2つ目が「自分を変えたい」時期、そして3つ目が「自分を受け入れたい」時期です。もちろん、ざっくりした時期の分類であるためそれぞれの時期が重複している時期も大いにあります(現実的にはそれぞれの時期をいったりきたりになるかもしれません)。かなり個人的な分類の仕方なので、それぞれの時期の状況や目的について、なるべく自分の言葉で解説してみたいと思います。また病気の時期や心理療法の内容などについても触れているため、分からない言葉が含まれているかもしれませんが、ご了承ください。また、それぞれの時期に応じた書籍の紹介もすべて挙げるとキリがないので、それぞれ一冊ずつにさせて頂こうかなと思います。

①「自分のケアをしたい」時期

 いわゆる急性期に当たる方はまずこの①が該当するんじゃないかと思います。症状に悩まされることがまだまだ多く日常生活に影響していて、気分をやわらげたり自分の心身の状態を整える事に専念する時期になります。認知療法やマインドフルネスなど、自分の自動的な思考を修正したり、あるいは行動に悪影響を及ぼす気分や感情と一定の距離を保つ訓練を行います。また当たり前ですが、睡眠や食事といった基礎的な生活習慣も最優先で取り組む自分のケアに含まれます。比較的幅広い時期の方に適応があり、即自的な効果も人によっては見られることも多いかなと思います。②③に取り組んだ後に、また①に戻ってくるというパターンも割とあるように思います。とりあえず何をすればよいのか分からないけど何か指針のようなものを持ちたい方は、下記の内容を含む書籍を探してみると良いかもしれません。急性期は大量の文字を読むことも難しい時期の方もいるかと思いますので、下記に掲載した漫画の体験ベースの本などから入るのが良いのではないかと個人的には思っています。
〇対象:認知療法、マインドフルネス、生活習慣(睡眠、栄養、運動等)、レジリエンス、セルフコンパッション、その他当事者の体験本など

②「自分を変えたい」時期

 この時期は、自分の認知や思考といった比較的自身の表層的な部分に対して修正をかけても、いまいち効果を感じられず、もっと根本的、あるいは具体的に自分の状態に変化を起こしたいと考える時期になります。一応書いておくと、それが判断として正解かどうかは分かりません。が、そういう時期は少なからずあると思っています。具体的な方法としては、スキーマ療法やACTで自分自身の認知の根っこや価値観を掘り下げたり、対人関係を見直したりする事がこの時期に当てはまるかと思います。①と比べると、じっくり時間をかけて取り組む必要があるものが多く、尚且ついずれも自分自身を掘り下げる作業が必要になるので負荷もそれなりに大きくなります。よって、ある程度時間的、精神的に余力がある急性期を脱したような方が対象になる事が多いかと思います。人によっては掘り下げが難しくてセルフヘルプでの取り組みに限界があったり、または時期によっては下手に無理に取り組まないほうが良い場合もあると思います。やってみたいけど慎重に考えたい方は、主治医の先生や心理士の先生に相談する事をお勧めします。下記の対象以外にも恐らく色々と種類はあると思いますが、自分が経験したものとしては下記のような内容を含む本がその対象になると思っています。下記の書籍は対人関係について見直したい時に、自分が参考になった本です。
〇対象:スキーマ療法、行動療法、対人関係(アサーション等)、ACT

③「自分を受け入れたい」時期

 あくまで自分の場合ですが、②の取り組みを一定期間行った結果その限界を感じ、あるタイミングでこの③の時期に入りました。人によっては②を飛ばして③に最初から入る方普通にいるんじゃないかなと思っています。こちらも①に比べると比較的じっくり取り組んだり、少し哲学というか「考え方」「物事の捉え方」を見つめ直すといった側面を割と強く持っている療法も含まれるので、人によって合う合わないがでやすいかと思います。個人的にはACTの考え方が一番クセが無くて取り組みやすいように思っています。ロゴセラピーは個人的には好きですが、手段よりも理念の方が強烈なものなので、興味のある方はまず「夜と霧」を読まれてそれで興味が湧いたらで良いかと思います。下記はバウンダリーについての本であり、自分を守るための考え方が沢山書かれています。
〇対象:ACT、ロゴセラピー、セルフコンパッション、バウンダリー

おわりに

 特にこういう分類が公的にされているわけでもないので、今回は完全に主観の恐らく偏った内容の記事になりましたが、如何でしたでしょうか?
 冒頭でも触れましたが、セルフヘルプの本は「今の自分が求めている内容か」「本の対象に自分が含まれているか」が割と大事だと思っています。一方で、身も蓋もない事を言うと、トライ&エラーをある程度は繰り返す必要はあるかなと思います。カウンセリングを受けるにしても、一発で理想の感セラーと巡り合えるとは限らないのと同じだと思います。最初の一歩を踏み出すのに迷っている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
 この記事を書いてみて思いましたが、他の方がどういう時期にどういう本を読んで役に立ったのかは興味があるなぁと思いました。そういう話は中々聞けないので、どこかでそういう情報交換が出来るといいなと思いました。

 私のnoteでは、心理療法を独学でやってみている方向けに、自身が過去に取り組んでみた心理療法の感想やそれらに類する事で気付いたポイントなどを記事にしていきたいと思いますので、興味のある方はまた読んで頂ければ嬉しいです。それでは。
 

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