見出し画像

ACTのススメ~生きるためのコンパスを探して~

はじめに

 私は数年前から自分の心理的な恒常性を保つために、これまでに様々な心理療法に手を出して取り組んできました。
 その中の一つが、第3世代認知行動療法と呼ばれる「アクセプタンス&コミットメントセラピー(以下ACT)」です。「認知行動療法」や「マインドフルネス」は割と一般に広まっていますが、ACTはまださほど認知されていないように感じます(数年前にメンタリストDAIGOさんが書籍を紹介されて話題になったりはしたようです)。
 私がACTを知ったきっかけはとある心理士さんから勧められた事で、それからいくつかの書籍や資料に目を通したり、セルフワークブックに取り組んだりしました。その結論として、「これは人によっては有効なものかもしれない」と感じたので、独学でセルフケアのために心理療法に取り組んでいる方向けにACTに取り組んでみた感想を記述したいと思います。心理療法としてのACTの生まれた背景や理論的な部分については省いてあります。あくまでいち当事者としてやってみての感想なので、客観的に正当な内容かどうかの保証はしかねます。実際にこれを読まれた方でもしACTに興味を持たれた方がいらっしゃれば、可能であればまず医師や心理士といった専門家に相談の上で実施をご検討頂ければと思います。なのでそもそもACTって何?という方やACTの用語の解説といった導入の記述はこの記事では行いませんので、まずそこから知りたいという方はこちらをご参照ください(wikipediaに飛びます)。
 それではまず初めに、私が感じたACTの特徴についてまとめます。

ACTの特徴

  • 自身を「治す」あるいは「変える」療法ではなく、「自分の状態を受け入れる」「価値に基づいたとるべき行動を決定・選択する」「不快な感情を消し去るのではなく、適度に距離をとる」方法を身に着ける療法である(と自分は理解しました)。

  • その特徴故に、「根本から自分の心の問題を治したい」「過去の悩みを消し去りたい」という気持ちが強い状態の人にはあまり向かない気もする。「今の自分を少しでも前向きに受け入れて生きていけるようになりたい」「辛い感情や思考になるべく振り回されず、安定した状態で生活していきたい」という志向性を持っている方に向いている気がする。

  • 瞬間の感情や思考だけではなく、その人の根本の「価値」に触れることで、いわゆる認知療法では手が届かない部分にもアプローチ可能である。かといってスキーマ療法ほどガッツリ掘り下げるわけでもない。前向きに行動するために必要なものだけという感じ。

  • 比較的一般向けの参考資料が豊富(書籍、WHOの資料等)で初心者にもとっつきやすかった。

  • 価値の掘り下げは割とエネルギーを使うけれど、スキーマ療法のようにトラウマと向き合って苦しくなるようなリスクは比較的少ないと感じる。

 このような感じで、ACTに取り組んでみて上記のような特徴を持っていると感じました。とっつきやすさは割と高い印象を受けるので、最近は病院や精神科デイケア・リワーク等でも患者教育に活用されているようです。

ACTに取り組んで感じた効果

①自分の感情や思考と距離を取りやすくなった

②特定の活動や行為に対する執着が弱くなり、「自分にとって価値のある活動」を幅広い視点で見つめ直すことが出来るようになった

③困難や脅威に対して絶望感を抱くことが少なくなった

①や②は、実際にACTの書籍やワークに取り組む内容にまさにそれが書かれているので、興味のある方は書籍を参考にしてください。お金を払うのはちょっと…という方は、WHOが提供しているこちらの資料がACTの考え方に非常に近い内容になっているので、一度ご覧下さい(資料のボリュームは中々多いので読み切るのに時間は少しかかりますが、良い資料だと思います)。
③については、個人的に感じている副次的な効果です。ACTのAはアクセプタンス(受容)を意味しますが、その名の通り自分の内心や現状に対する受容が進むと、将来に対する悲観的な思考や絶望感といったものが和らいでいる事に気付きました。
「まぁ、きっとこの先も嫌な事やしんどい事はあるだろうけど、それでも良い事もあるかもしれないしとりあえずやっていくか」
 という諦めにも似た心境です。すっごいハッピー!というわけでは無いです。まぁ自分の場合ACTだけではなく色々なものに同時進行で手を出していたので一概にACTだけの効果とも言えませんが、この淡々とした境地に達する事が出来た時は、自分の中である種の安堵感を得られたことは印象深く覚えています。

まとめ

 今回は雑感としてのACTの紹介と自分が感じた効果についてまとめてみました。タイトルにもあるように、ACTは「コンパス」すなわち「方向性」を示すためのアプローチという側面が強いので、「これを学んで問題の答えを得た!」とか「悩みがすっきり解決した!」といった、分かりやすいゴールに至る事を目的としたアプローチでは無いと思っています。
 私が今よりもっと酷く悩んでいた時期は、とにかく「答え」を欲していたので、そういう時期にACTと出会っても、あまり魅力的には感じなかったかもしれません。個人的には「答え」を求めて自分なりにもがく時期があってもいいと思っているので、それに対して自分なりに取り組んだ後に、自分を楽にするオプションとしての選択肢の一つとしてACTを知っておいてもいいのかなと思いました。今悩んでいる人の選択肢として、何か参考になれば幸いです。

 最後に。直接ACTとは関係ありませんが、「ニーバーの祈り」または「平静の祈り」と言われる私の好きな有名な言葉があります。これを知ったのは別の事がきっかけでしたが、ACTの本にもこの節が紹介されていたのを知り少し驚きました。今となっては通じるものがあるなと感じているので、最後に引用させて頂きます。

神よ 変えることのできるものについて、 
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。
(引用:wikipedia)

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?