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事業育成の実際25

●顧客を見失っていないか?

地域の産業が力をなくして活性化できない。
現在の日本中に地域で起こっていることでしょう。
「インバウンド」を取り込むことだけに集中できる観光地であればやるべきことははっきりとしています。
しかし主要産業がなく斜陽産業しかない地域では、それでもわずかな地域の物産を集めてマーケットを開いたりします。
例えば地域特産の食べ物。地域で作られる染め物や織物。陶器や漆器。地域の作家のイラスト作品。
でも最も大切な視点がこのマーケットからは抜け落ちています。
それは「誰がお客様なのか?」という視点です。
様々な地域へと出向いて地場産業の優れた商品を販売したとして、そのために開いたマーケットは「誰のために」開いたマーケットなのでしょうか?
地域産業のために開かれたマーケットのほとんどは地域に散らばった同郷の人たちのために開かれている事が多いようです。

「○○県物産展」
「○○県の美味しいもの」
「○○県特産物販売会」
なぜ、それぞれのマーケットの最初に○○県と付くのでしょうか?

自分たちの地域物産に誇りと自信があるからでしょうか?

自分たちの作った商品を「誰に」買っていただきたいのでしょう?
それ以前にその「商品」は誰のために作られた商品なのでしょうか?

地域の物産であっても、個々の企業が作った商品であっても
その「商品」を必要とするお客様が存在して、そのニーズを捉えるためにお客様のライフスタイルや時代性、嗜好性を考えて商品開発をすることで商品販売のマーケットを勝ち取る事ができるはずです。

確かに自分の故郷の産物や懐かしいものに対して惹かれる人はある一定程度存在します。しかし、その商品を送り込んだマーケットで各地域の企業は何をしたいのでしょう?

もっと沢山の人たちに自分たちの商品を知って欲しい。
自分たちの商品を販売するための販路を広げたい。
日本中のマーケットに自分たちの商品を置きたい。

もしもそうであれば自分たちが地域の中で行なっていることをそのまま別の地域に持ち出すのは方法が間違っているのではないでしょうか?

観光を中心とした「地域の名産」や「美味しい食べ物」をここにきて食べて下さい、というのなら来られた観光客全てが顧客になります。
しかし、私たちが地方に出かけて地場産業の商品を販売する場合は、私たちの方が顧客に寄り添うべきであって、彼らにとって魅力的な商品を提供しなくてはなりません。

●地域のためではなく顧客のために

最初の質問に戻りましょう。
「あなたのお客様は誰ですか?」
例えば食品を売る場合。
「○○名物・・餃子」
という売り方をすれば○○地域を目指す顧客か「餃子」を意識した顧客のために商品を販売することになります。
でも来て欲しいお客様は「家族連れ」ですか「男性」ですか?「女性」ですか?
年齢は何歳ぐらいですか?どんな趣味の人ですか?
商品が食べ物なら、お客様はいつ、どこで誰と食べますか?

自分たちの商品について考えてみましょう。
「私たちは地域に密着した小さなマーケットでNo.1になることが目標です」
または
「もっと全国の人に知ってもらって販路を広げるのが目標です」
この二つの目標では「商品そのもの」も「拡販の仕方」「販売するマーケット」も違ってきます。

地域にとって何が良いことなのでしょう?
「地域の商品が全国で売れる」「地域の商品が地域の中でだけ売れる」
「全国から発注が来て資金が地域に流れ込む」「資金は地域の中でぐるぐる回る」
「地域に商品が全国のお客様に知れ渡る」「地域の商品は地域の人たちだけがよく知っている」

もう一度自分たちがどこに向かって進んでいこうとしているのか?を考えてみましょう。
全国、あるいは全世界に自分たちに見えていない顧客が潜んでいるとしたら、その人たちにどうやって自分たちの商品のことを伝えれば良いのでしょう?

●私たちのお客様は誰ですか?

もう一度同じ質問に戻りましょう。
例えば首都圏にマーケットを開く事ができるとして、あなたならどんなマーケットにしますか?
そのマーケットにどんなものを並べますか?
「食品」「衣類」「工芸品」「工業品」。
広範囲にいろんなものを置きますか?
私たちの特徴は何でしょう?
私たちが目指しているものは何でしょう?

私たちがここに来て欲しいお客様は誰でしょう?

テーマを決めませんか?
お客様はその地域の「デパート」が見たいのでしょうか?
商品は大きく分けると「食品」「ファッション」「雑貨」に分けられます。

お客様はその地域の「何」を求めているのでしょう?
●ナチュラルで自然と調和した生き方
●純朴でひたむきな仕事ぶり
●豊かに自然が生み出す極上の食材
それらを全て見せるのではなく、
そのうちのどこをお客様に見て欲しいのでしょうか?
そしてそれを見たいと考えるお客様はどこにいるのでしょうか?
全て見せようとすることは「地域のデパート」を作ることで、それは本当にお客様が見たいと思うものでしょうか?
テーマを決めることでそこにセレクトされる商品は限定されますが、
どういったお客様に訴求するべきか?という方向性が明確になります。
それによって「広報戦略」もポイントが定まってきます。
決められたテーマ・・・つまりはどういう嗜好性のお客様に対して訴求したいのかという方向性を決めることで、全ての力を一点に集中する事ができます。
だからもう一度同じ質問をします。
「あなたのお客様は誰ですか?」

それが決まれば
私たちが「揃えるべき商品」が決まり、
お客様たちがいる「マーケットの場所」が明確になり、
さらにどんな「告知の仕方」をすれば良いかも明確になります。

全てのベクトルが同じ方向を向くことによって
私たちが訴求するべきお客様が「全国」あるいは「全世界」に存在することが見えてきます。

言えることは、私たちは寄せ集めになってはいけない、ということです。
同じ目標を持ったベクトルのある集団として力を一点に集中するべきだということです。それが地域を本当に活性化させる方法だと気づくべきです。

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