見出し画像

地図の見方が変わる「サクッとわかるビジネス教養 地政学」要約・所感

おはようございます。本日は奥山真司さん著書の「サクッとわかるビジネス教養 地政学」を取り上げてます。

地政学、私にとっては馴染みのない学問でした。昨今の厳しい国際情勢で注目されている学問です。地政学について学ぼうと複数書籍を読んだので次回のnoteでも地政学を取り上げます。

本書はタイトルにもある通り大人として身につけておくべき教養として、分かりやすく腑に落ちる良書でした。地政学入門書としては最適だと思います。各論は次回に譲ることとして、この noteでは基本的な概要のことをまとめて行きたいと思います。

1. 地政学で見える世界

国際社会は人種、宗教、歴史、政治体制、イデオロギー、エネルギー供給等さまざまな要因でうごめきます。地政学とは国の地理的な条件をもとに他国との関係性や国際社会での行動を考えるアプローチです。地図上でみて考えるというシンプルかつ明確さがあり、それ故に冷酷に国際社会をみるアプローチと考えられています。

国際社会を「劇」とすれば、地政学はいわば「舞台装置」です。劇の裏側でそのシステムを決めているのは舞台装置なのです。表面的な部分だけでなく、各国の思惑を理解するには地政学の考え方を身につけておく必要があるのです。


2. 基本的な概念

地政学をはじめて知識としたのは1800年代後半のプロイセン王国(現在のドイツ)と呼ばれています。日本では明治時代にアメリカやイギリスの学者を通じてその概念が伝わりました。第二次世界大戦後にその基礎が完成して体系化された比較的新しい学問といえます。

チョークポイントを抑えること

現代においていくら飛行機による空路が発達したとはいえ、世界の物流のメインは古くから海路なのです。国家の運営においてこの海路は国力の命綱といえます。チョークポイントとはこの海路で絶対にとおらなければならない海上の関所を指します。マラッカ海峡、ホルムズ海峡、パナマ運河、スエズ運河など世界には重要な関所は限られています。アメリカが現在世界の覇権を握っているのは紛れもなくこのチョークポイントを抑える海軍の力なのです。

ランドパワーとシーパワー

世界の国々を地政学的に陸の力と海の力に分けて考える捉え方です。

ランドパワーの国にはユーラシア大陸にある大陸国家でロシアやフランス、ドイツなどが分類されます。これらの国は大陸内に国境があり周辺国家に攻め入れられないように領土拡大しようとする地理上の性質があります。

シーパワーとは国境の多くを海に囲まれた海洋国家のことで、日本やイギリスそして大きな島国とみなされるアメリカなどが分類される。これらの国は領海だけでなく公海上を支配することで勢力を拡大しようとする性質があります。

大きな国際紛争は常にランドパワーとシーパワーのせめぎあいなのです。

もうひとつ重要なポイントとして歴史的にみればランドパワーはシーパワーは両立できた国はないということ。古くはローマ帝国はランドパワーの大陸でしたが海洋進出をして国力が低下をして崩壊。日本の敗戦も太平洋の支配に加えて、中国本土内への進出の目論みといったシーとランドの両立を目指して失敗したと地政学では考えられています。

ハートランドとリムランド

ハートランドはユーラシア大陸の心臓部、つまり現在のロシアに当たる部分を指します。寒冷で雨量が少なく、平坦な平野が多いエリアで古くから人が少なく文明もあまり栄えていません。

一方でリムランドとは主にユーラシア大陸の海岸線に沿った沿岸部を指します。温暖で雨量が多く経済活動が盛んなエリアです。世界の多くの都市がこのエリアに位置しており人口も集中しています。他国に影響力をもつにはこのエリアの支配が重要です。

実際に過去も現在でも国際紛争のはリムランドに進出しようとするランドパワー勢とシーパワー勢力のせめぎ合いの舞台となります。


3. 地政学でみた日本の特徴

現在の日本はアメリカを筆頭とするシーパワー勢力の一員となっています。しかし、江戸時代までは海外との衝突がほとんどなく島国でありながら内向きのランドパワーの国でした。

日本は他国から侵略をされたことがない珍しい国なのです。島国だからだろ?そうではありません。同じ島国でもイギリスは1066年にノルマン人に侵略され、フィリピンも300年以上にスペインの植民地でありその後もアメリカや日本に支配されました。

これには様々な理由があります。まずは極東でありにヨーロッパから遠すぎたこと。地理的に海流や季節風に守られ他国から攻めにくかった点、自給可能な国土面積があり他国と貿易をしなくても国力を維持できたことは日本が独立を守れた大きな理由の一つです。

しかし、現代では事情が大きく異なります。食料もエネルギーも自給力は乏しく他国と貿易しなくては国を運営していく事が難しくなっています。特に石油は経済活動において欠かせないエネルギーですがこれが安定供給できるのは完全にアメリカ海軍のおかげなのです。日本は石油の9割を中東から輸入しており、その石油タンカーはホルムズ海峡とマラッカ海峡を通るからです。

万が一マラッカ海峡が封鎖された場合でもインドネシアを通るルートがあり、なんとか日本経済は持ちこたえられます。しかし、それすらも封鎖された場合はオーストラリアを回るルートしかなく、これでは時間がかかりすぎて日本経済は破綻するといわれているのです。

本書を通して地政学という馴染みない分野に触れる事ができました。改めて感じるのは自分がいかに平和ボケしているかという事でした。自分が思っていた以上に世界の国々は、冷徹で殺伐とした世界観の中で領土権力争いをしていました。自分たちに都合のよい平和論に流されずに、論理的に世界を捉える力をつけなければなりません。

今回は概要部分だけのまとめでしたが、本書には大国のアメリカ、ロシアそして中国それぞれの地政学的な思惑やそれと争うアジアASEAN、中東、ヨーロッパの国々との問題についても深くわかりやすく学ぶことができます。

気になった方はに是非手にとって読んでみてください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?