24.01.26- ピストルズ

2024.01.26
前に家のカーテンを褒めてくれた男を飲みに誘う。彼は予定がどんどん埋まっていくのが嫌いと言っていたので、事前に調整することはせず、前日に声をかけたら誘いに乗ってくれた。

でも自分は本当はそんな気軽に人を誘える人間じゃない。彼を誘うために前々から予定を空けて、どこで飲むかのシミュレーションまでしているのに、重いと思われないように「明日の夜暇?」という一文だけを送信した。屈託がなくて、無神経にすら思えるような表現を目指して、何度も推敲を重ねる自分の行動はすごく不自然な気がして、もっと純粋であれたらなと思う。

彼は会った瞬間から抜群に可愛くて、笑顔で軽口を叩いてくる。彼の好きなところは、酔うと社会通念上よろしくないことや、下品なことをなかなかの声量で話してくるところだ。社会通念から外れていることは一つのシュールである。面白さとはシュールであることで、そこに意を唱えて指摘することで、そのシュールさが際立つ。そんな風になんとなく会話にボケとツッコミが生まれるのが楽しい。

しばらくすると、近くの席にゲイカップルが座った。酔った彼は、そのうちの一人の顔が好みだという話をしてきた。リアルをしている相手の目の前でそんな発言をする彼に幻滅したり、嫉妬したりしてもおかしくない状況で、僕はそのシュールさが心の底から楽しかった。そして、彼は僕に向かって「おまえの顔も可愛いけどな」としれっと言った。もうベロベロに酔っていたからこそ、本心かもなと思った。自分が酔った時には本心なんて喋らないくせに、好きな人に対しては自分にとって都合のいい解釈をしてしまう。

帰り際、駅まで歩きながら彼が「泊まってもいい?」と言い出すのを待っていたのだが、そのまま駅に着いてしまった。たぶん彼は僕が「うちくる?」と言うのを待っていたと思う。その一言が言い出せずに別れて電車に乗ると、喪失感に襲われたが、また会いたいくらいで別れるのが丁度いいのだと言い聞かせることにした。

2024.01.31
深夜にふと思い立ってランニングをする。久しぶりに運動したというのもあってすごく気持ちいい。夜の環七沿いを走っていると、こうしている時だけが本当の自分が解放されている時間なのではという気さえしてくる。

今日はセックスピストルズを聴きながら走ることにした。そういえば、僕は今までピストルズをちゃんと聞いたことがなかった。全体的に初期の椎名林檎の歌い方やメロディが思い出されて耳に心地よい。前に「記憶をなくしてビートルズを聴き直したい」といったツイートをみた。自分がまだ聞いたことがない名盤がこの世に沢山あるのは、たぶんすごく幸せなことなのだと思う。 

走っているとどんどん前向きな気持ちになって、やりたいことが増えてくる。こんな気分でずっといられるように今の暮らしを変えたいと思った。手っ取り早いのは誰かと暮らすことだ。家に帰って誰かがいて、コミュニケーションを取ること。それが暮らしを豊かにするのだという気がする。

週に一回、いや月に一回でいいから、道具を持って一人で山に登って、頂上で袋麺とおにぎりを食べたりするのも楽しいだろうな。今は週末に好きな友達と酒を飲むことが本当に楽しいけど、それをもっと健康的な予定に置き換えていくことができたら、それが大人の階段を登るということなのだろう。

2024.02.03
お互いに相手を向いているだけでは何の発展もなくて、その相手と一緒にどこを向くのかが大事である。綺麗事のようだけど、本当にそうだと身をもって感じることが増えた。

相手を通すことで世界がどのように見えるのか、それによって自分の世界への関わり方がどう変わるのか。その変化が好ましいと思えるのが、僕にとって「フィーリングが合う」ということだ。そして、そんな人に出会えたら、やっぱりそれは大事にしないといけない。

今日、高校の友達と飲んでいて30になったタイミングで開催される同窓会の話題が出た。僕にはどうしても許せない、二度と会いたくない人間が一人いて、今そいつと会ったらどうなるだろうという話になった。正直、今なら彼をいなして、あしらえるのではという気持ちが少しあった。でも、いざ会ったら当時のことがフラッシュバックするかも知れないから会わない方がいいと友達に諭された。そう言われて「彼をあしらえるのでは」という気持ちの裏には、ふわっとした復讐心が潜んでいたことに気づく。下手に関わるより、関わらないままでいる方がよっぽどいい。友達も同窓会には行かないと決めているらしい。大好きな友達と好きに飲んでいる時間の方が楽しくて有意義だし、僕にとってそんな友達がいることは本当に幸せなことなのだと改めて思った。

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