4.濃い味

学生時代。
何人かで友人Aの家に泊まっていた。
一人暮らしのアパートにしてはなかなか広い。
そんな理由でよくたまり場になっていた。

オールで麻雀を打ち、みんなが寝始まった朝方。
僕ともう一人、友人B で

「人生とは何か」について語っていた。

二人ともちょっと哲学クンみたいな節があったのと、徹夜明けの謎テンションにより意外にも盛り上がった。

熱い弁をかわし、最終的に「人間は皆英雄である」という結論になった。
意味がわからない。

長い時間しゃべっていたのでのどが渇いてきた僕らは
友人Aが買いだめしていた新品のおーいお茶濃い味を拝借して飲んだ。

「勝手に飲んじゃったからなんか買ってくるかなぁ」
「俺も行く、なんか飯食いたいわ。」
「あーじゃぁトイレだけ行かせて。」

そう言ってトイレに向かおうとしたとき
ふと、思い立った。

濃い味のペットボトルに小便入れたらおもろくね?
と。
完全に徹夜明けの思考である。
そそくさとトイレに向かう僕。
トイレでペットボトルの中に用を足し、ニヤニヤしながら友人Bに見せつけた。
「これ、英雄の尿。」
意味が分からない。

「英雄」がホットワードだった僕らはゲラゲラ笑い転げ、ひとしきり笑い終わった後、その「英雄の尿」をなぜか冷蔵庫に冷やして外に出た。

コンビニで飲み物とカップ麺を買い、出てくると
ちょうどパチンコ屋の開店時間だった。
「ちょっと打たね?」
「それは英雄すぎ」
そんなやりとりをしカップ麺をほおばりパチンコ屋に向かった。

夕方前、ひとしきり当たりが終わり、二人とも勝つという奇跡に近い結果にウハウハだった僕らはコンビニで大量のお菓子と飯を買って友人Aの家に帰った。
「ういー、起きたかー」
「さっき起きた。帰ったんじゃなかったん?」
「いやパチ。さすがに英雄過ぎた。これ差し入れ。オール明け辛すぎるから俺一回寝るわ」

そう言ってお菓子と飯が入った袋を見せる。
「うわ、最高。めっちゃ腹減ってたわ」
そう言って友人Aは冷蔵庫からお茶を取り出して口に含んだ後
すぐに流しに行き吐き出した。

「うわ最悪だわ、なんか腐ってるかも。変な味するわ。」
「まじかドンマイ過ぎる」

オール明けで睡魔も限界に来ていたぼくはそんな適当な相槌を打ちながらソファにダイブした。

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