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彼の何がそれほどまでに好きだったのか

18歳から21歳まで付き合っていた彼がいました。
好きで好きでたまらなかった、初めての彼氏です。

彼の名前が初めて日記に出てきた日。

固有名詞が多くて白塗りだらけに(苦笑)

最後の一文が彼のことです。

〇〇ちゃんにきゅんとしました。

この頃はまだ付き合う前で、苗字の一部にちゃんをつけたニックネームで呼んでいました。
山田くん、だったら、やまちゃん、みたいな。

きゅんとしました、かあ。
恋愛を何も知らないピュアすぎる少女が、心臓がきゅんって鳴る音を本当に聞いたんだろうなあ。

多感な時期にちょっぴり傷いたことがきっかけで、私は長い間男の子が怖くて苦手でした。
だから、小、中、高ずっと共学の学校に通っていたんだけれど、男の子と話すことが18歳までほとんどありませんでした。

そんな私が、18歳で、"きゅん"とした。
この日何があって"きゅん"としたのかは、正直もう思い出せません。


彼の何がそんなに好きだったのか、何故好きになったのか。
今となっては本当に全然分からなくて。
それでも、どうしても、どうしようもなく、苦しいくらいに好きだった。

彼は誰に対しても平等に優しく、物腰のやわらかい人でした。
オシャレ黒縁メガネの下は、いつもぼんやりと遠くを見るような目をしていて、何を考えているのか分からなくて。
静かで怖い感じすらするのに、話すと驚くほどやわらかい。
地元の方言でのんびりと話しながら、時折白い歯を見せてクシャっと笑う。

みんなでバーベキューをしていても、パリピ男子たちがギャーギャーふざけ合っているのを、一歩下がってぼーっと見つめている。
その横顔がなんだかセクシーで。

そうかと思えば、川や田んぼや釣り堀にいる、フナや貝や小さな生き物たちに夢中になって、目を輝かす。

綺麗で大人っぽい字を書く。
精巧なジブリキャラクターの絵を描く。
けっこう体力もある。筋肉もある。
「重いだろ?持とうか?」なんて誰にでも言っちゃう。

男の子は残酷に人を傷つける生き物だと刷り込まれていた当時の私にとって、彼はきっと新鮮だったんです。
彼のいろんな表情を見ていくうちに、18歳の少女は、どうしようもない気持ちを募らせていきました。

それからね、彼は歌がとっても上手でした。
憂いを含んだ槇原敬之みたいな彼の歌声に、普段とのギャップに、ハッと心を奪われたのは私だけではないはず。
(彼が歌う歌のお話は、また別の記事でゆっくり書いてみます。)


彼の何がそんなに良かったのか。
どうしてあれほど苦しんだのか。

思い出がだんだんおぼろげになってきて、輪郭がぼやけてくる。
風化して、ドライフラワーみたいになってくる。


すべてすっかり忘れてしまう前に、この恋を、大切に書き残しておきたいのです。

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