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ぜんぶつながってる!

2008年に安曇野のギャラリーで開催した個展での写真と文章を再編集しました。

水源涵養林

成熟した森では、寿命を終えた大木が倒れて出来た空間(ギャップという)に周囲の木が枝を伸ばし空間を塞ぎます。そして雪ではなく雨が降る季節になると一斉に芽吹いた葉が空を覆い隠すようにその隙間を埋め林冠と呼ばれる森の屋根を形成します。葉が受けた雨は枝から枝を伝い、集められた雨は樹幹流と呼ばれる流れとなって根元の雪を溶かしながら地表に染み込み、根を伝って地中深くに届けられます。何年も何十年も、場合によってはそれ以上の時間、地中深くで涵養された水はやがて湧水として岩盤の割れ目などから再び地表に出て、小さな流れは川となり多くの命を育みながらやがて海に注ぐ。これが水源涵養という森の大切な機能です。

豊かな森があるからこそ豊かな川があり、その流域に文明も生まれた。森に生まれた文明は森を壊して滅ぶと言いますが…

パズルよのうな林冠を見上げる

災害防止林

自在に向きを変え四方に伸びる枝を支えるために根は深く、そして強く大地を掴み急斜面でも、強風でも倒れることなく土を支えています。加えて長年にわたって堆積した落葉は昆虫や土中の微生物に分解され、空気を含んだ柔らかいスポンジ状で水捌けもよく、大雨が降っても水が浮くことはほとんどありません。さらに林冠が受けた雨は木を介して優しく地中に届けられます。そのため雨が直接土砂を削り川へ流入することも少なく、下流の川もあまり濁りません。豊かな森をなくした山では、川は少しの雨でも黄土色の濁流となり、林道には雨に削られた深い轍が出来、登山道は小さな沢のようになってしまいます。近年頻発する豪雨による災害は今後も増え続けるでしょう。雨の森を訪ねてみてください。とても静かなことに気づくと思います。


急斜面に立つブナは雪の重みで曲がっているが、根はしっかりと大地を掴んでいる


森の樹も葉も枝も根も
動物も鳥も昆虫も微生物も
そして水も…

人はそれらを勝手に分類し、それぞれに名前をつけて呼ぶが本当はそうじゃなくて、ぜんぶつながってる!わかりやすく人体に例えると…胃や腸や心臓が独立して存在していないのと同じく本当はぜんぶつながって一つの命。

何か一つでも欠ければ壊れてしまう、それが森なんです

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