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午後のロードショー「アオラレ」


公開 2020年
監督 デリック・ポルテ
公開当時 ラッセル・クロウ(56歳) カレン・ピストリアス(30歳) ガブリエル・ベイトマン(16歳)

映画館で見た本作の日本限定予告編、ラッセル・クロウの「アオッテンジャ、ネエ!」を思い出します。
「これが煽りの本場USAだ!」「煽り運転の最終形態!」など、まさに煽り文句だらけの予告編でした。

地上波放送ということでかなり期待値を上げて見たのですが、おおよその想定の範疇を逸脱しないB級作品という感想です。

原題は「Unhinged」で、精神的に錯乱した、不安定なという意味合いですね。
本作が公開された当時は煽り運転が社会問題になっていた時期であり、「アオラレ」の邦題は完全に乗っかり商法といえます。

シングルマザーのレイチェルは、息子を学校に送り届ける途中、前を走っていた車が青信号になっても動かないため、クラクションを鳴らす。そのことに腹を立てた男はレイチェルに真摯な謝罪を求める。男の行動は徐々にエスカレートしてゆき、レイチェルは想像を絶する恐怖を味わうことになる。

ラッセル・クロウには役名が無く、ただ「男」となっています。

社会から排除された失うものの無い「無敵の人」が、親子を追い掛け回し、白昼堂々殺戮を繰り広げる展開です。

主人公のレイチェルは美容師で、仕事の予定があるにもかかわらず寝坊してクビになってしまうのです。上司との電話の内容から察するに、一度や二度では無いようですね。
渋滞でイラついていたのもわかりますが、子供が同乗してるというのに、因縁を付けてきたどう見てもヤバい男に対し、売り言葉に買い言葉で暴言を吐いてしまうなんてあまりに軽率で発達障害があるのでは、と疑ってしまいます。
離婚したばかりのようなのですが、これじゃ旦那が愛想つかすのもわかりますね。

謝罪を拒否したレイチェルを執拗に追いまわす男。

ガソリンスタンドに立ち寄ったレイチェルの車の後ろには、ぴったりと男の軽トラが…

ガソリンスタンドで「おれが追っ払ってやるよ」と、レイチェルを助けてくれた男気溢れる男性。
見ず知らずの人間のためにここまでできるでしょうか。
無情にもこの男性は「男」の軽トラに轢き殺されてしまう。

「男」はレイチェルの携帯を盗み、アドレス帳から友人、家族を調べ、次々と血祭りにあげていく。

レイチェルの自宅に侵入した「男」は、レイチェルの弟フレッドの彼女を殺害、フレッドにも重傷を負わせる。
弟のフレッドは超イケメンで、登場シーンにも長尺を取っていたので、何か反撃してくれるのかと思いきや、「男」にフルボッコされて終わりでした。

最終版の舞台は、レイチェルの実家。
「男」はレイチェルとその息子を殺害しようと家に侵入するも、レイチェルも必死に反撃する。
レイチェルはヒグマのような「男」から何発も殴られたのですが、かすり傷程度しか負っていないのです。
体格差から考えても、一発で瞬殺されていると思うのですが…

到着した警察から、弟フレッドが一命を取り留めたと報告を受けるレイチェル。
息子カイルと抱き合って喜ぶレイチェルなのですが、巻き添えで少なくとも5人以上は死んでおり、素直に喜べる状況ではありませんね。

ラスト、無謀な運転で横切る車にいら立ち、クラクションを鳴らそうとするも思いとどまるレイチェル。
カイルは「いい選択だね」
事件を通して彼女の「成長」を描きたかったのでしょうか。
それにしてはあまりに犠牲が多すぎましたね。

スピルバーグ監督の「激突!」のように、ひたすら高速道路での攻防戦を描くのではなく、後半からは「男」が車から降りて素手で殺戮を行う場外乱闘へと発展します。
「激突!」のようにひたすら道路での抜きつ抜かれつの攻防の方が面白かったかもしれません。

レイチェルの息子カイルを演じたガブリエル・ベイトマンは2019年「チャイルド・プレイ」でもシングルマザーの一人息子役を演じています。
少年にもかかわらず達観した雰囲気、あきらめと哀しみ、母親への気遣いなどシングルマザーの息子役をさせたら彼の右に出る者はいませんね。

ラッセル・クロウは「クラディエーター」「L.A.コンフィデンシャル」など男気溢れるイイ男のイメージが強すぎ、本作のサイコなおっさん役は今ひとつ恐ろしさに欠けます。
とはいえ、ヒグマのような巨大なボディに鋭い眼光、出演のため体重を20キロ近く増量して役に挑んだだけの事はありますね。
彼が出演していなかったら映画として成立していなかったといっても過言ではありません。

ラッセル・クロウの怪物っぷりの物足りなさで思い出すのは、1986年のサイコスリラー「ヒッチャー」です。
主人公を恐怖のどん底に追い詰めるサイコなストーカー、ジョン・ライダーの恐ろしさと言ったら…
言葉を発せずとも匂い立つ狂気には心底背筋が凍りました。

舞台が「激突!」や「ヒッチャー」のようなアメリカ山間部の砂漠地帯では無く、都心部ですぐに警察に助けを求められる状況下なのも、恐怖と緊張感を削いでいますね。
「激突!」のカーチェイスと「ヒッチャー」のキャラクター、この二つの要素が合体した時こそ、新たな名作サイコスリラーが誕生するのかもしれません。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★★

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