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午後のロードショー「ロードキラー」


公開 2001年
監督 ジョン・ダール
公開当時 ポール・ウォーカー28歳 スティーブ・ザーン33歳 リーリー・ゾビエスキー18歳

スピルバーグ監督の「激突」と1985年の名作ホラー「ヒッチャー」を足してで割ったような作品です。
「激突」と「ヒッチャー」は最初から最後まで息詰まるスリルと恐怖で迫ってくるのに対し、今作は青春映画の要素も加わっており、肩の力を抜いて気楽に見る事ができます。

アメリカ西部の広大な砂漠地帯を舞台に、正体不明の変質者に命を狙われる展開は、アメリカのサスペンスホラーに良くある展開ですね。
今作は脚本を「スター・ウォーズ」の監督J・J・エイブラムスが手掛けており、見せ方を心得ているなという印象です。

大学生のルイスは、ガールフレンドとネブラスカ州までドライブすることを目的に中古車を購入する。
ガールフレンドを迎えに行く途中、刑務所から釈放されたばかりの兄フラーを迎えに行く。
ドライブの途中フラーは無線機を勝手に購入、無線で女性のフリをして行きずりのトラックドライバーをからかったことから悲劇が始まった…

スティーブ・ザーン演じるフラーは、喧嘩沙汰で2度も逮捕されるわ、中学生のノリで無線でイタズラするわ、果ては弟の彼女に手を出そうとするわ、本当にどうしようもないバカ兄貴ですね。

「キャンディ・ケーンよ。あなたお名前は?」
男はラスティ・ネイルと名乗る。
まんまと引っかったドライバーの反応に、車内で笑い転げる二人。

ルイスとフラーの兄弟が悪ノリして無線機でからかった相手は、恐ろしい変質者だった。

不明瞭な無線の音声で「キャンディ・ケーン…!キャンディ・ケーン…!」と呼びかける変質者にはゾワゾワ~っとしてしまいます。

二人の嘘に騙され、男はピンクシャンパンを手にモーテルに現れる。

いつも思うのですが、アメリカの片田舎のモーテルのセキュリティの甘さといったら…
銃社会だというのに、薄っぺらいドア一枚で、いつ強盗が押し入ってきても不思議ではありませんよね。

ラスティ・ネイルは、モーテルの隣の部屋の客を襲い、顎をもぎ取るという強行に及ぶ。

前半は犯人の凶暴さと執拗さで、「ヤバい奴に絡んでしまった」二人の恐怖と焦りを共感することができ、サスペンスとしての緊張感とスピード感があります。

ヴェラが登場する後半からは恋愛と青春の要素が加わり、サスペンスホラーとしてはやや失速した感がありますが、ラストに向けて徐々にエスカレートしていく展開ですね。

兄弟がどんなに謝っても、ラスティは復讐の手を緩めようとしないのです。
「人をからかっておいて、冗談だったでは済まされないぞ…」
犯人の執念深さには鳥肌が立ちます。

片田舎の街のモーテルの店主、警官、トラック運転手など登場人物もみなクセがあり、アメリカの田舎ホラーのテイストがあります。
それにしても、ルイスが店に忘れたカードをわざわざ追いかけて届けてくれたり、車のエンジンがかからない所を助けてくれようとししたり、アメリカ中西部には漢気のある気の良い男もたくさんいるのですね。

最後まで犯人の顔が露にならないのが、恐怖を増幅させています。
ラストに無線から流れる声…ラスティは死んでいなかった。

ややB級感はありますが、サスペンスホラーとしては中々の秀作といえます

リーリー・ゾビエスキーは、午後ローでもお馴染みの「グラスハウス」など、サスペンスが似合う女優ですね。
彼女のクールな美貌が男だらけの映画に華を添えています。

スティーブ・ザーンは小心者の小悪党を演じさせたら右に出る者はいない俳優ですね。
最初は威勢の良い事を言ってバカをするものの、犯人に追い詰められたらすぐに泣きが入ったりと、小悪党感満載です。
愚か者のフラーにイライラさせられるのですが、それだけ彼の演技力が確かということですね。
フラーのキャラクターゆえか、犯人にイタズラを仕掛ける流れに違和感が無く、ストーリーに引き込まれ、ストーリーを引っ張っていく推進力をいかんなく発揮しています。

ポール・ウォーカーは大学生の役ですが、当時28歳なのですね。
普段は真面目ながらつい子供の頃のノリで、バカ兄貴の悪ふざけに付き合ってしまう弟を演じていました。
同年に主演の「ワイルドスピード」が公開され、役者としてブレイクし始めた時期です。
彼は2013年に交通事故で亡くなっているのですね。

ホラーが大の苦手な私ですが、夏になると何故か怖い映画を見たくなるのです。
不思議な夏休み感があり、バカ兄貴と良く出来た弟のコントラストも抜群です。

「世にも奇妙な物語」のように後からジワジワくる恐ろしさがあります。
広大なアメリカでは長距離ドライブをする若者も多いでしょうから、彼らの間で都市伝説的に広がり噂になりそうなお話ですね。
この映画は午後ローでも度々放送されて何度も見ているのですが、それでもたまに見たくなる面白さがあります。

この映画は2008年に「ロードキラー マッドチェイス」の作品名で続編が製作されているのですね。
続編もぜひ地上波放送してほしいものです。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★
流し見許容度★
午後ロー親和性★★★★★

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