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シルビア日記⑦遠くを見る

東京の空は狭い。ビルや建物が乱立する東京。その隙間から見える空の面積に慣れてしまった。だからなのか、あまり空を見上げたり、遠くを見ることが少ない。新しい年になり例年は正月気分に浸る時期ではあるが、暗いニュースがいっぱい飛び込んできた。私自身の周囲にも落ち込むことがあった。
しかし変わることなく、何もなかったように真っ青な空が頭上に広がっている。それに気が付いたのは東京から離れた時だった。ビルも大きな建物もない場所で立った瞬間にパッと目の前が開けたような気がした。忘れていた。東京の雑踏の中で下ばかり向いていたのかもしれない。高校や大学に入学するとき、知らない世界に飛び込むワクワク感に駆られていた。それは見えない、予想持つかない未来に期待をして遠くを見ていた。

 車を運転していたら自然と先を急いでしまう東京生活を送っていたが、束の間の休息。ここでは一度車を止めて降りてみて、腕を目一杯広げて深呼吸をした。混じり気のない酸素を吸い込む。『時間よ止まれ』 とつぶやいた。そんな魔法が叶うわけないが少しモヤモヤが取れたような気分になった。そしてまたハンドルを握った。
 
 東京に戻り都心を運転する。いつもと違う道に、一本先の道に入る。新しい発見は自分で掴む。そんな気持ちになって黄色信号で余裕を持って止まれるようになった。

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