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小説「見上げた空は今日も青い」第二話

「ここは…」
「ん?俺ん家。」
アパートの5階。その一番奥、ドアの向こうが加々矢の家。代表取締役な割に古びた所に住んでいるということは禁句だ。それに…
「なんだかごちゃごちゃしてますね…。」
「まぁな。」
中に入ると、まるで整理されていない物置き小屋のようにあちこちに散乱しているものたち。もはや足の踏び場もほとんどないくらいである。どうやら加々矢は、仕事以外のことについては不器用なようだ。
「さぁ、これを全て綺麗にしてもらおうか。」
「え!?」
「なんでもするんだろう?」
口の端を釣り上げてにやりと加々矢は笑う。
「…分かりました、見ててくださいよ俺の力。」
なんだそりゃ。と、行動に移していく雪野を見つめていたら、そのまま小一時間で片付けてしまった。
「どうっすか!?」
「いやはや、ここまでとは思わなかった。」
久しぶりに綺麗に片付いた部屋。ホコリひとつみつからないほどで、きちんと整理整頓されている。
チャラそうな見かけには寄らないんだな。
加々矢からはそんな感想が出てきたが、口には出さなかった。
「あ!!加々矢さんお腹減ってません?俺、何か作りますよ!!」
もうそんな時間か?加々矢は腕時計を見ると、確かに12時を過ぎている。
「でも、あんまり良いもんねぇぞ。」
「本当だ!!普段なに食べてるんすか!?」
「んー…仕事の合間にファーストフードとかコンビニ弁当とか…まぁ、外食だな。」
「それじゃ栄養偏ってません!?」
「…そういうお前はどうなんだ?」
「よし、買い物に行きましょう!!」
「おい人の話を聞けよ。」
結局雪野の食生活は分からずじまいに終わり、二人でスーパーに向かった。ちなみにアパートからすぐ近くのスーパーだが、加々矢が来店するのは初めてのことだった。

つづく。

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