ラヴクラフト傑作集を読んだよという話〜SAN値直葬を添えて〜

先日Kindleでセールをしていたこともあり、田辺剛氏著の「ラヴクラフト傑作集」を購読した。全15巻。全部買っても五千円でお釣りが来るからセールって凄い。

いわゆるクトゥルフ神話というやつである。関係はないが私の母の世代ではクトゥルーという表記だった。クトゥルフのほうが文字列の見栄えがいいもんな。

ジャンルとしてはコズミックホラーと呼ばれる、ハワード・フィリップ・ラヴクラフト氏による創作であり、文化や民族に根付いた"神話"ではない。ものすごくざっくり言うと、実は人間よりも先に外宇宙からの訪問者が地球に来ていてなんかお外の世界の揉め事とか地球に持ち込んだり人間を滅ぼそうとしたり信仰を集めようとしてたりしている。そんな中で人間はその真実に気がついて発狂したり熱狂したり信奉したり対抗したり忘却したり死んだり殺されたりまあまあ大変な目に合う。そんな感じの話である。

この傑作集の良いところはあくまで「ラヴクラフト傑作集」であって「クトゥルフ神話集」ではないところにある。クトゥルフ神話に触れたくてもクトゥルフ神話はその人気も相まってラヴクラフト以外の執筆者が沢山おり、もう何から読めばいいかわからないというのが個人的な問題であった。とりあえずこれから読んどけクトゥルフ神話入門というのがこの傑作集かと思う。作画の田辺剛氏も大変に絵が上手い。文字列から入るより物凄く入りやすい。

読書前のクトゥルフ神話に対する理解度はポプテピピックと姉なるもの、あとbloodborneくらいなものであった。ヤーナムがアーカム由来なども知らなかったしなんかみんなタコとか触手ウニャウニャ、タコ頭の邪神クトゥルフ様は旧支配者だ信仰しろってポプテピピックで言ってたからなんかそういうものだろうと。

そして大変に驚いた。クトゥルフ様、人間に殺意マシマシじゃないか。クトゥルフ様、船にぶち当てられて負けとるやんけ。なんかすぐ蘇生?したような描写はあるがボートアタックに負けている。クトゥルフ神話って言うくらいだからクトゥルフ様は強いのだと思っていた。クトゥルフ様のおうちであるルルイエとか言う場所もなんか地殻変動だか星の配列が変わったとかなんとかで沈んでた。せっかく地球に先に来ていたヒトデ頭の先住民である古のものと戦って協定結んで手に入れた土地、なんか自然の力で沈んでた。人間に沈められたとかそんなんじゃないのか。

邪神クトゥルフ様に対する信仰度はだだ下がりである。なんならインスマス顔で有名な深きものどもの方がホラー的には怖い。なんか雑魚だと思ってたインスマス顔のヤツの方が侵略手段がエグくてよっぽど脅威を感じる。
ダゴンはなんかでかい魚だった。クトゥルフ様好きなでかい魚だった。モノリス大事に抱えちゃってさぁ。

全15巻を読み終えて、さてどの邪神が好きかなという話になるだろうよ。好きな邪神発表ドラゴンが好きな邪神を発表します。

古のもの

正確には邪神ではなく旧支配者という立ち位置らしい。クトゥルフ様もポプテピピックで旧支配者を名乗っているので大変に分かりづらいが、要はかつて人間が生まれるよりも前に地球を支配していたものとして「旧支配者」と呼ばれているらしい。ピクシブ大百科に書いてあった。難しすぎる。ピクシブ大百科がなかったらクトゥルフ神話ガチ勢の皆様から脳髄を吸われていたであろう。

物語としても「狂気の山脈にて」が大変に面白かったということも大きい。
高度な文明を築き、外からの侵略者をいなしながらも自らが作った奴隷生物ショゴスに滅ぼされる。

「彼らが別の時代の人間であり、私達とは別の存在の法則に従っていたというだけだ(中略)…いかなる姿であったにせよ彼らも人類に違いなかったのだ」

主人公のダイアー教授の精神力と正気度が高すぎる。というのはともかく、我々人間も旧支配者のように文明を築き守り、そしていつか自らが創造したものに滅ぼされるというメッセージも含まれているのだろうと思ういい作品だった。

ただ心底思う。旧支配者よりショゴスより、旧支配者に殺された遺骸を見た方がSAN値が下がりそうだなと。
怖〜〜い。殺し方、怖〜〜い。

(おわり)


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