ドラゴンクエストYOUR STORYを見た。500円やるから観ろと言われ見た。アマゾンプライムビデオで500円だったのでなるほどと思った。
そもそも私はドラゴンクエストにほとんどと言っていいほど触れてきていない。知っていることと言えばヨシヒコとチャモロとハッサンぐらいな物である。スライムの区別も余りつていない。私の2人の兄弟はファイナルファンタジー派であった。
さて映画冒頭、どうやら主人公が誕生するシーンなのだが何故かドット絵のゲーム画面なのである。ファンサービスなのだろうか。私はヨシヒコを思い出していた。そしたらだ、急に母親が苦しみだした。死んだのかなと思ったらなんか拐われたらしいので父親と主人公が母親を探す旅に出た。ゲームをやっていないので原作準拠なのかなと思ったが、もうちょっと拐われた演出なんとかならんのかなと思った。
ドット絵ゲーム画面のままサクサクと話が進む、進むというか飛びまくる。なんか途中ビアンカとフローラという女性キャラが出てきた。こいつらは知っている。きのこたけのこ戦争のように信徒が100年戦争を続けている「未来の嫁」達だ。ただもうダイジェストにダイジェストなので未来の嫁達との思い出作りも秒で終わる。この時点で「あ、この話は原作をやった人向けなんだな」と思い飽きが来始めた。
そしてゆっくりとゲームのドット絵からCGへと画面が変わる。美しい雪景色であるがすでに私の関心は布団に向いていた。
実は私はこのドラゴンクエストYOUR STORYのオチを知っている。実はこれはゲームの世界でラスボスはコンピューターウィルスで大人になれなどと罵倒されたがセキュリティソフトのスライムの力を借りて無事倒すところまで知っている。知らないのは原作であるドラゴンクエスト5のストーリーの方だ。500円に釣られ見始めたが肝心の「知らないストーリー」をゴリッと削られたのでもう良いかなという気持ちが強くなっていた。
半袖と半裸の親子は雪山を拠点とし、なんやかんやあって懇意にしてた王子が拐われ、なんやかんやあってパパスが死に、なんやかんやあってヨシヒコと王子は一緒に奴隷になり、なんやかんやあって脱走して王子は国に、ヨシヒコは半袖で拠点に帰った。私はここで一時停止をし、布団に行った。映画はまだ4/5あった。

「逃げるんか」
声がした。私に500円を渡した男の声だ。
「逃げるんか」
そもそもオチを知っているので逃げるどころか勝手に延長戦をしている状態である。視聴はいつでも止めてもいいのだ。
「俺は見るぞ」
男は言った。コイツはドラゴンクエスト5が好きであった。幼き日に据置機でやり込み、今はスマートフォンで日がな一日カジノのスロットを回し最強装備を手に入れようとしている。
ドラゴンクエスト5好きとしてはいつかはYOUR STORYに向き合わなければ行けない、だが1人で観る気にはなれない。だから男は私に500円を握らせ、釣られた私はまんまと魔列車に道連れにされたのだ。
視聴中は男の「は？」とか「え？」などというこえが要所要所聴こえていた。時々「違うんだよ…原作だと違うんだよ…」と恐らく私に弁明している声も聞こえていた。男が受けているダメージは私の比ではない。それなのに視聴を続けるという。
私はモニターの前に戻った。

結論として、思っていたネタバレと違った部分が1つある。それはコンピューターウイルスが自分の意思で判断し「ドラゴンクエストというゲームをいつまでやってんだ大人になれ」と言ったわけではなかった。コンピューターウイルスを作った人間が、ドラゴンクエストが破茶滅茶に嫌いで「いつまでドラクエとかいうクソゲーにしがみついてんだバーーーーカ！！大人になれ！！」というメッセージをコンピューターウイルスに託していたのだった。てっきりサマーウォーズのラブマシーンよろしくAIがゲームを不要と導き出したのかと思いきや、幼少期ゲーム禁止で友達の輪に入れなかったかクラスで唯一のファイナルファンタジー派で虐められていた人間の逆恨み犯罪行為だったわけだ。

ちなみにドラクエ大好き男はコンピューターウイルスを倒す剣が出てきたとき「ｳﾞｫｴｯｯｯ!!!」という謎の声を出していた。なんかドラゴンクエスト5モチーフの映画なのに別のドラゴンクエストの最強武器だったらしい。
ファンって大変だなと思った。
見終わったとき、時計は朝4時を指していた。

おわり