見出し画像

One Vision…(J2第29節:ファジアーノ岡山vs.町田ゼルビアの会報)



 いやあ、酷い有様でした。ここまで無残なドはまり自滅となるとは…。町田の矜持が大いに勝ったということですかね。

 作戦ミスという部分が大いにあると見ますけれども、それとともにプレーぶりから感じられたのは信じられるものの差の大きさとでもいいましょうか、そういった自信でした。継続によってその差が埋まってくれることを祈るだけです。

 今日はむっくんのところ(周囲との関係も個人の対応も)がさっぱりで、対面した町田のSB奥山選手が対照的なことに素晴らしいプレイで試合を決めてしまったので編集部としてもチョー悔しい。なのでしっかりこのお気持ちを残しておこうと思います。


 信じることが、どんなことかわかるかい?
 キミのすべてが、試されているんだよ
 勇気だけじゃ届かないんだ


 光を放つ田中が溶けあうMatrix Evolutionするまでがんばろう…



試合情報



岡山0-3町田:平戸(28分)、森村(67分)、ロメロフランク(75分)


メンバー



試合内容 


「町田との相性」についての仮説

 

 町田ゼルビアは「狭く狭く陣形を取り、狭い狭い地域を人数の優位による地上戦やセカンドボールで制して試合を進めようという」スタイル一本で魔境J2をのし上がってきたということは周知の事と思います。もはや老舗の鰻屋か何かのような徹底したところがありますね。今季はちょっと元気がないみたいですが、おそらくこの一本槍をかわして側面を叩く方法をそれぞれのチームが確立してきているのだと思われます。

 岡山がこれまで町田と相性が良かったのは、昨季まで岡山も5-4-1⇄3-4-3による人海戦術+セカンドボールというスタイルを持っており、5バックと3トップによって自動的に町田が苦手とするカウンター時のサイドの揺さぶりをかけやすいという戦術的な相性もありました。2018年のアウェイ戦がよく思い出に残っています。【2018シーズンアウェイ町田戦の観戦記

 有馬監督に代わった今季は後者の「揺さぶり」を強化しようという方向に舵を切っています。守備の方は4-4-2となり、よりゾーン志向となりました。それが良い方に出たのが前回対戦の先制点であり、悪い方に出たのが同点弾となって、前回対戦は痛み分けとなっています。【前回対戦の振り返りはこちら



前項を踏まえた両者の試合運びについて

 

 そういうわけで、今節も「幅を取って広く攻めたい岡山」vs「狭い地域に引き込んでぶっちぎりたい町田」という構図になったと言えるでしょうか。この「幅広く攻める」ための岡山のアプローチが、この試合ではちょっと裏目に出てしまったのかなという感じです。

 岡山のDFラインのメンバーは前節から変更があり、町田の「狭い地域を破る」きっかけとなるロングボールに対処したいという意向を感じさせます。実際にかなり空中戦・肉弾戦が多い試合となりました。どちらかというと「町田の一本槍」をかわしに行くというよりは正面から受け止めて、競り勝ったところをカウンターで広く攻めるぞ、というプランだったのだと思われます。これは前回対戦と同様のアプローチぽいですね。

 とはいえ、こちらにも積み上げというものがあるので、ただただぶつかり合うという以上の変化を用意していました。前節実を結んだ上田のトップ下化になります。ここで町田の圧縮がずれてしまい、岡山が敵陣に攻め込む場面を増やすことができました。点差で忘れそうですけど、ボールを動かせてた時の山本の連動、狙う場所の意識は前節以上に良かったですね。残念ながらゴールにならなかったのは、増田のセービングと町田守備陣の対応を褒めた方が良さそうです。

 ただ気にかかる部分があって、喜山-むっくん-仲間-上田の四角形に山本と関戸が守備ラインを横断してチャンスを作るという形はうまく作れていたのですが、仲間から大外のむっくんへのパスが何のプレッシャーもないのにミスになってしまって攻勢が台無しになるというシーンが二度ほど連続して起こってしまっていました。

 仲間が後半早い時間に下がってしまったので、負傷トラブルを抱えているようでした。仲間が担当する左ハーフスペースでの繋がりが死んでしまったことで、岡山の攻撃は苦しくなって町田の攻勢を助長してしまいましたし、変わって入った三村とも縦を突破する関係を作ることができず(おそらくベンチの指示はそうであったと思われますが)、町田の攻撃的な守備に圧倒されっぱなしとなってしまいましたね。

 いつもの岡山の形である、むっくんが上がってボールを進めようにも、引っかけられて、ボランチで空中戦となり、むっくんもボランチも居なくなった裏のスペースを土居や森村が取る、という形が無限ループのように繰り返されてしまい、その打開策を全く用意できなかったことで、ただ失点を重ねるだけとなってしまいました。

 先制点後特に顕著に見えたのが、ロングボールの競り合いを制することでサイドを広く使った速い攻めを繰り出して、町田を突き崩そうという岡山の基本プランが、神戸から新加入となったCB小林友希と藤井航大の新コンビに見事に跳ね返されてしまったことで、大きく狂わされてしまった点

 4バックがしっかり残って、町田にとって危険な攻撃の芽となる2トップへのカウンターパスをシャットアウトし続けていたことはなかなか鮮烈でした。前回対戦を糧にしていて敵ながらあっぱれではありますが、岡山があまりにもだらしがないとも言えるでしょう。

 前半終盤に見られた上田康太の振る舞いが「ボールを落ち着いて持とうぜ」というものであったので、修正に期待してたのですが、後半の修正も縦の速さに固執するものであったようです…そこを考え直したほうが筋としては良さそうだったのですが…。速い展開のぶつかり合いで勝てないことがだらしがないのではなく、そこがきつそうという現状を踏まえ筋を変えようという試みを見ることがなかったので、だらしがないなと編集部は思いました。

 


神は細部に宿った…スローインはセットプレーなので平戸くらい祈るべきであった


 目立ったのは町田の試合運びの巧みさばかりなりけり、ということになってしまいましたが、その直接の分岐点となったのは先制点のシーンで、岡山のスローインをロメロフランクに奪われて一気に縦へとやぶられたところに、奥山が見事なタイミングでオーバーラップしカットインを仕掛けたというプレイでした。球際の争いを正面から受けて立って正面から砕かれたわけでこれほど間抜けなことも無いでしょう。

 ここからフォローしようのない駄目な試合になったのですが、この局面で勝負を分けたのは本当にちょっとしたところで、スローインという最も機会が多いながらも見過ごされることの多いセットプレーの差になりました。

 先制点の場面も2点目の場面も、町田の選手が同サイドに殺到する中での不用意な(町田の選手が準備が整っている場所、時間での)スローインから早いカウンターを発動させてしまっています。自らの足で地雷を踏んだわけです。だからこそもっとマシな試合にできたと思いますし、編集部の無念も募るところです。

 1点目は奥山のカットインに対応が遅れてしまったこと、2点目は自らのスローインが不適当であった上に、逆サイド展開でボールを見るだけで森村の侵入を見逃していたこと。むっくんも良いところ一つ無くダメダメでした。仲間隼斗にアクシデントがあったことが攻撃面で大きく影を落としてしまったことはあるのですが、こういう時こそチームを落ち着けてほしかったですね…。上田がちょっとやりかけてたのに全然まとまんなかったのはなんだったんだろう…w

 個人の競り合いではがんばってたんですけども、そういう次元の問題じゃなくてチームの戦い方自体がまずいぞというときに、一声かけてピッチの中でやり直せる…そういうVisionを見られればもうちょい今季の内容も変わるんじゃないかなと思います。まあ、その辺も含めて発展してもらいたいという目線でいきましょうかね。



未来へ


 というわけで、またもやヨンジェにほうれば何かが起きるを封じられたことによる完敗で、一体何度やっておるのかという話なのですが、これが今季岡山が背負うものということを踏まえてそこから進んでいかなならんぞというお気持ちと実際の形とを示していくと思いますので、それを見ていこうと思います。

 今節に関しては、

・「サイドを広く攻める」にあたって、その手段をセカンドボールで勝つという町田の強みにぶつけたことで、町田の長所を助長した結果万事が窮してしまったこと

・その競り合いを勝つにしても、スローインに代表されるように、どの局面でどうやって勝つかという細部が劣っていたこと


 という二点が惨敗に繋がりました。

 おそらく必要とされるのは自分たちの良さをぶつけるということを相手の良さを消すという部分と両立させるという部分。町田がそれをやり遂げて、岡山には全く足りなかったと、まとめられるでしょうか。

 うーん、書けば書くほど自滅という言葉が浮かんでくる...w 良さを出せればそれでよいという時期はもう過ぎたのよという教訓をもって山口戦に向かってくれればと思います。


 それでは。