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【ミスマッチ追いかけづらい問題】清水エスパルスvs.横浜Fマリノス

◆試合情報

清水 0-1 横浜

横浜:ウーゴ・ヴィエイラ(11分)

メンバー

清水:ミッチェル・デューク→北川(70分)、石毛→楠神(75分)、立田→白崎(81分)
横浜:ブマル→遠藤(63分)、大津→吉尾(74分)、ユンイルロク→中町(90分)

ハイライト

◆topics

清水エスパルスの仕組みと横浜Fマリノスのポジション移動

清水エスパルスが志向しているのは、前線からGKまで追いかけるプレスによって敵陣でボール奪取し、SB裏へボールを供給しクロスにニアとファーの最低二枚のターゲットを用意する速攻です。どの試合も立ち上がりはだいたいうまくいっており、この試合でも10分あたりまでクリスランの決定機などいくつかのチャンスを作ることが出来ました。

しかし、この清水の形は、時間の経過とともに横浜の天野、扇原、山中と大津のくるくると入れ替わるポジショニングによって破壊されることになりました。ペナルティエリアの端まで大きく開くCBまで取りに行けばその裏にすっとアマジュンと扇原や山中、松原が現れ、そこにシャドウ(主に金子)やボランチが根性で食い下がろうとするとその裏からおーつゆーきが現れていてつらかった。おーつゆーきさんがようやく活躍の地を見出せそうなのはうれしいのはうれしんですが、今じゃなくても良いじゃないという。

ハイライトの1:38~のゴールシーン。(noteはyoutubeの時間指定再生にも対応してほしい...涙)このシーンの前は清水のカウンターからが止んだ直後、左WGのユンイルロクが自陣に下がってマークしている立田を敵陣まで引き連れて山中と上下入れ替わっています。清水は攻撃のあとの初動であるので、ユンに立田は付いて行き、金子も山中に引っ張られ手前サイド奥へ。清水の右サイドはぽっかりと空いてしまいました。中央の人数は足りていたので、扇原にプレッシャーをかけたい場面でしたが、ここでこれまでの守備と異なりパスコースを塞ぐほうへと身体が反応してしまったことが失点の要因になってしまいました。

逆に言えば清水の守備の仕組みを看破して狙い通りに動かした横浜が凄い。このトランジションからの大外裏とりはミシャ式の得意形ですが、横浜の凄いところは役割が陣形(ミシャ式の場合は4-1-5で誰が何をやるのかは固定されています)ではなくTPOに応じて時々刻々とどの選手がやるのかが更新されるところです。山中は特に多くの役割をやっていました。切り替えの守備も強烈で、清水の志向している良い守備と良い攻撃のサイクルが見えなくなってしまいました。それでもロックオンした選手にブレずに行けば向こうが折れる!を時たま出せていた清水の根性もよかったのですが、やはり残念ながらこういう戦況ですと繋げる方が乗っていきます。

横浜にももちろんまだイージーなミスも多く、70分以降は間延びしてしまっていたのですが、判断の精度は開幕と比べればだいぶ違うのではないでしょうか。5節でこれは早いって。ブマルをボールの取りどころにできた分清水はまだやりようがありましたが、彼も周りを見て動きのが上手く、フィットしそうな気配を出していました。

3バックや可変式の”開く最終ライン”に脆さを見せる清水エスパルス

速攻で見どころを作れるのであまり目立っていないような感じですが、3バックでのビルドアップに対しての清水の守備はちょっと不味い傾向にあります。この横浜戦に限った話ではなく、マッチアップが当初の予定とずれてしまった時になかなか更新することができず後手後手になってしまう傾向が強く出てしまっています。札幌戦や仙台戦でも結構手ひどくやられてしまい、そのまま失点に結びついてしまっています。(札幌戦、仙台戦に関しては上手くいく時間帯でしっかり点が取れたことと選手の位置が横浜ほどグルグル変わらないのでまだセーフでした)

前から全員がいけるタイミング(立ち上がり、攻撃がうまくいったとき)であれば比較的ハマるのですが、最前線の守備はコースの規制にとどめ下がって受けてくる選手を捕まえて踏ん張らないといけないという状況時を共有できていない不味さがあると思われます。位置取りがよくなかったり身体の向きが良くなかったりというシーンが多く、ずらされる時は2トップが下がって助けるのが筋だと思われますが、そのあたりのサポートがうまく設定・修正できていません。

なお、クリスランはカウンターの先鋒であるのである程度諦めていそうですが、今季初めてトップ起用されたデュークは後者の懸念に対してかなり頑張っていました。ここまで最前線から奪い取りに行く方へと極端ですと、哲学上「引かぬ、媚びぬ、顧みぬ」的な姿勢を貫いているのかもしれませんが、覇業を進むにしても後述する攻撃の課題と同じように、イケイケ時以外の「判断の枠組み」とその枠組みに則るための認知とプレーの精度が課題となりそうです。

中澤と飯倉の提示する課題

攻撃面に関しては、雑ないい方になってしまいますが、「中澤つよすぎ」「飯倉とめすぎ」で済ませてもしょうがないくらいには清水エスパルスもチャンスを作りました。前半後半とも立ち上がりの5〜10分は猛烈なプレスを浴びせ、いつものサイドからのクロスにFWがニアSHが大外というフィニッシュという形を出せていましたし、その後も横浜のミス由来の奪取や、金子球際担当大臣の文脈無視のボール奪取から横浜ゴールに肉薄しました。石毛が復帰したことによって、クロスへの飛び込みが左右対称になったので、両サイドともチャンスになったのは明るい材料でしょう。石毛は復帰初戦のせいかだいぶ張り切っていましたねw

ただ、後半時間が経つとともに横浜の切り替えのプレスも衰えたことでより多くのチャンスが生まれるかと思いましたが、残念ながら横浜の方が攻撃のルートが多彩で質が高くなってしまった。清水はなかなか弾かれ続けた「サイドがしかけてクロス」以外の形を作り出せなかったのが今節のもうひとつの敗因でしょう。裏を狙ったボールは単調になり、高すぎる飯倉の守備位置を脅かすシーンをあまり作れませんでした

バリエーションのある攻撃の形を作るには、

①最終ラインの変化やFWのポストプレーなどでボランチが前を向く余裕をつくる

②FWとSH、SBとで前線に複数のパスの選択肢を提示

しなければなりませんが、ヤン・ヨンソン監督のチームには①の時点から不足しています(これが清水のボール保持時の劣勢の要因にもなっています)。サンフレッチェ広島で整ったのも7月の就任から代表休みを挟みながら10月あたりまでかかっていたので(それでも結構嫌なカウンターを浴びるヒヤヒヤものの形ではありましたが)、W杯明けくらいまで我慢する必要があるのかもしれません。

ちなみに今節では白崎を投入しボランチだった河井をSBにしたことで疑似的に①が解決したという現象も起こり、劣勢の長かった後半も終盤は押し込むことが出来ました。ビハインドの緊急策でしょうから(監督のSBメンツの傾向からして高さがほしいはずです)そのまま解決策にはならないでしょうが、ヤン・ヨンソン監督に腹案がないわけではないとは言えると思います。

とはいえ、清水エスパルスのクロス攻撃の形は、中澤と飯倉でなければ、クリスランやチョンテセが万全であれば(というか今節チョンテセではなく地上戦にこだわった交代策だったのはなんでだったのでしょうね。そこも興味深い議題になりそうです)数点入っていたであろう明確なストロングになっています。まずは4-4-2同士のマッチアップが崩れる時の寄せ方や連動性にムラが出てしまっているので、そこを整備する方が優先的でしょう。横浜はちょっと相手が悪かったので、まずはルヴァンカップでの札幌との再戦や、おそらく3バックで来るであろうジュビロ磐田との静岡ダービーで見せたいところです。磐田戦はなによりダービーですので、ぜひともここで結果を出して課題解決の道筋を。

それでは。