見出し画像

【バージョンアップと勝算のはざまで】湘南ベルマーレvs.Vファーレン長崎 (J1第1節)




ミカ様が/出ると思ったら/ベンチ外   (心の俳句)


開幕節はBMWスタジアムに行っていました。ミハエル・ミキッチさん目当てだったのですが、ケガのため別メニュー調整だったようです。スペインキャンプで右サイドをどったんばったんしていたので期待していたのですがしょうがない。ミハエル・ミキッチさんの引退をしっかり見届けないと現世に恨みが残る呪いにかかってしまったので、今季は湘南ベルマーレにも注目していきたいと考えています。サンクトガーレンのビールがうまい。

お相手は同じく昇格組のVファーレン長崎。湘南も長崎も勝手知ったる相手だったからか、バチバチのガチガチでぶつかりあいながら、J1に定着すべく長期政権で築き上げたスタイルをいかにバージョンアップさせるか測りつつというニュアンスを感じる試合になりました。



◆試合情報


メンバー


交代
湘南:HT ステバノビッチ→石川、74分 岡本→高山、82分 イ・ジョンヒョプ→野田
長崎:HT ベン・ハロラン→鈴木武蔵、80分 澤田→中村、90分 飯尾→チェ・キュベック



ハイライト

https://youtu.be/bO6Kq66mTAc


レポート

Jリーグ公式HPから

昇格チーム同士の対戦となった開幕戦は、序盤に激しく動く。8分、スローインの流れから右サイドを抜け出した松田 天馬が、小気味いいドリブルで二人を置き去りにして切り込み、マイナスのクロス。中央でイ ジョンヒョプが合わせてゴールに突き刺した。期待の新戦力二人が早くも結果を残し、湘南が先制する。しかし長崎もすぐさま反撃。16分、左サイドでFKを得ると、前田 悠佑のキックにファーサイドで髙杉 亮太が頭で合わせる。これは湘南GK秋元 陽太が一度ははじくも、こぼれ球を田上 大地が押し込んだ。 
 
ここから試合は大きく動くかに思えたが、予想を裏切り均衡状態に入る。長崎はDF5枚、中盤4枚のブロックを敷いて湘南にボールを持たせ、湘南の左右のCB、大野 和成と山根 視来に入ったことを合図にプレスを掛け始める。それより後ろはマークをガッチリ固めているため、眼前で守備ができるという寸法だ。湘南は山根や松田のドリブルで状況の打開を図り、単発のチャンスは作るものの、マークは剥がせずにゴールの気配はあまり感じられない。一方の長崎は、ロングボールを1トップのファンマが収めてカウンターを仕掛け、セットプレーで惜しいシーンを作っていく。だが、アンドレ バイアの粘り強いマークもあり、こちらもゴールまでは至らず。このまま両チームとも動きはなく、前半を1-1で折り返す。   
後半を迎えるにあたり、両指揮官とも交代カードを1枚ずつ切る。湘南は存在感の希薄だったアレン ステバノヴィッチに代えて、石川 俊輝を投入。長崎もベン ハロランに代えて鈴木 武蔵を投入した。先に決定機を迎えたのは長崎。開始早々に左サイドを突破して、澤田 崇が際どいクロスを送る。中央で飯尾 竜太朗が合わせるが枠に収まらず、湘南は難を逃れた。このあと、ペースを握ったのは湘南だ。投入された石川が秋野 央樹をサポートし、ボールの収まりどころを増やす。また、山根と大野にボールが入ったときの周囲の動き出しも早くなり、両CBがシンプルにはたくことで、ボールの循環が良くなった。67分、71分と立て続けにイ ジョンヒョプがチャンスを迎えると、80分に再び試合を動かす。ペナルティアーク付近でFKを得ると、キッカーは10番・秋野。左足で柔らかく浮かせて直接狙うと、シュートはDFの頭にはじかれたものの、こぼれ球に詰めたのは石川。途中投入の期待に応えるゴールで湘南が再びリードする。初戦を落としたくない長崎は、失点直後に澤田から中村 慶太へメンバーチェンジ。フレッシュな選手を投入し、プレスの位置も高めて攻勢を強める。それでもゴールは生まれずに時間が進み、長崎はチェ キュベックを投入してパワープレーに出るも、あと一歩及ばず。昇格組対決は湘南が勝利を収め、まずは勝点3を手にした。



◆topics


J1に対する熱意と熱意

昇格組同士の対戦、そして両チームの特色からか、熱意と熱意のぶつかり合いと形容したくなる激しいプレッシング合戦が展開されていました。昨年見ていた時もそうだったので今回も膠着した試合になることを予想していましたが、試合早々スローインからのダイレクトプレーでスコアが動いたのは少し意外でした。湘南の今季初ゴールがイ・ジョンヒョプの強さと松田天馬の突破力、二人の新戦力の個人能力で生み出された点は一つ収穫であったでしょう。

しかしすぐさま長崎も圧力を高めゲットしたFKから見事な駆け引きでマークを外した高杉が折り返し同点に追いつきました。これによって試合が盛り上がっていったと思います。陣形上の噛み合いからファンマと大野、サイドでのマイボール争いなど各所で激しくデュエルが展開されたことがこのカードを盛り上げていました。試合を通じてテンションを下げようとしないところがこの2チームのよさですね。



バージョンアップと勝ち点の天秤

この試合は同時に試験的な匂いも漂わせていました。個人能力が高くJ2よりもリトリート志向が強い(=ボールを持たされる機会も少なくない)チームの多めなJ1で勝ち点を稼ぐためにはどうすればよいかという狙いが両監督にあるように感じさせます。端的に言えば新戦力がちょっとフィットしてないかなということなのですが、そのような命題に取り組もうとすることは至って自然であり、先が楽しみです。

湘南ベルマーレは中央のポジションチェンジによってボールを運ぶポゼッションを見せていました。縦のベクトルを強調するというイメージでしたが、長崎もで正面衝突しファウルに次ぐファウルであったので自然であろうと思います。大卒ルーキーの松田天馬がライン間を渡り歩く"フリーマン"として振る舞い、菊地と秋野がサポートする形が長崎のプレッシャーをはがし、湘南のウイングが両サイドの深い位置に侵入することが出来ました。

ただ残念ながら仕上げの部分ではイ・ジョンヒョプがクロスに飛び込む以外に何を起こすかという部分がもう少しで、ステバノビッチにかかっていたと思われるのですが、この試合のプレースピードについていけていないようでした。後半開始での交代も致し方ないところでしょう。長崎のベン・ハロランについても同様で少し時間が必要そうです。ただ、無駄走りになってはいましたが、スプリントを見るにめちゃ足が速いので、パスやプレスのタイミングがつかめてくれば面白い選手になりそうです。

長崎が湘南のポジションチェンジによる混乱を収めるのは後半までかかり、島田を前に上げてこのポジション移動を迎え撃ってきました。後半から投入された鈴木武蔵が長い脚とスピードで一発で裏を取り何度か脅威となったことはポジティブでしたが、これもまたフィニッシュがもう少し。湘南の先制点と全く同じ形の決定機を作れてたりしたのですが。長崎のバージョンアップにはベクトルは同じで太く長くしようという意識を感じました。

膠着した後半を脱する湘南ベルマーレの修正は高山薫の投入まで待たなければなりませんでした。中央がマンマークでつかまるのでウイングが下がり目になって運べばよいのではないかという試みは岡本・杉岡ともに物足りないところでしたが、ポジショニングの駆け引きとボールタッチが細かくシャドウもやれる高山薫のおかげでパスコースが増えていきます。結果それによって生まれたチャンスから勝利をもぎ取れました。



パパみをパワーアップさせて帰ってきたパパ増田

昨年から長崎の正GKを務めている増田卓也はJ1のGKとして久しぶりの出場となりました。広島での第二GKとしての出場とは異なり自ら1年間ポジションを守って昇格をつかみ取った上でのJ1の舞台で感慨も一入。セーブの安定感と父性愛ぶりに磨きをかけて帰ってきました。

今節も間違いのない準備でいいセーブを見せていましたが、決勝点のFKだけは痛恨。守備範囲内だったので難なく弾いたかと思いましたが、前田と被ってしまい勝ち越しゴールを許してしまいました。競った試合は一つのミスで天と地という結果になってしまうので厳しいところ。より強力な攻撃陣相手でもやれるかどうか、楽しみにしています。



今週の「光あれ」のコーナー:大天使教団会報

さて、さいごに今週のミハエル・ミキッチさんのコーナーです。残念ながらベンチ外でしたが、スタンドから観戦しており、カメラに抜かれていました。熱心に戦術講義をしているところをw DAZNのシークバーで36分あたりの所です。




ピッチに立てなかったことは残念でしたが、今節を見るにウイングがボールを引き出し、受けたボールをチャンスにつなげるという部分で湘南ベルマーレは少し課題を抱えているようですので、ミハエル・ミキッチさんが戦術上の困難(強制アイソレーションによるサイドチェンジの呼び込み、2対1や3対1の頻発による同サイドでのショートパス突破の画策)によって培ってきたウイングとしての技能は必要にされそうだなと思えて希望が芽生えてきました。もちろん、練習の中でそのような「技能」をほかの選手が模索していく助けにもなっていくことでしょう。

また元気にタッチラインを切り裂いて副審に猛抗議したりする姿を見られることを楽しみにしています。


では。