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マスター・オブ・セレモニー…(J2第28節 アルビレックス新潟vs.ファジアーノ岡山の会報 2019-8/17)




 川崎との天皇杯で昇格戦線参入即3連敗で失いかけた威信(というとオーバーですが、それくらい言わせてちょうだい)を取戻したファジアーノ岡山。それを幻にしないぞ、とフェーン現象でふぇーんと泣きたいほどホットな新潟の地へと乗り込みました。(真夏なので涼を取るサービスです)

 ターンオーバー復帰むっくん最高や!



試合情報


新潟0-3岡山:仲間(32分)、山本(63分)、イヨンジェ(90+6分;PK)


メンバー



試合内容




昇華、喜山の起点と上田の遊撃

 

 立ち上がりはロングボールのぶつけ合いということになりましたが、ボールを落ち着かせたのは岡山。前半特に顕著でしたが、連勝時に発揮されていた長所と、連敗時に試行錯誤していた内容とが噛みあった展開となりました。

 まず連勝に貢献した喜山の相手FW脇への移動に伴うポジションチェンジ。新潟守備のリアクションが伴ってこない(ボールを奪いに来ない)ことを見るや、仲間隼斗が相手のボランチ脇まで降りてボールを受ける動きが再三見られました。

 それに伴ってサイド広く待ち構えるむっくんがパスを受けると仲間が敵陣深くへと動き直し、ボールを進めることに成功。ここに喜山・関戸がボールを失わないような補助を、イヨンジェと山本が新潟の最終ラインを引きつけ・攪乱する役割をそれぞれうまく連動して、良ければシュートまで、最低でもボールを失わないという形を作ることができていました。

 逆に言えば新潟の方がこの岡山の連動を寸断する働きに乏しかったことが目立つ形となりましたが、要因はよくわかりません。省エネというプランだったのか、組織的な未整備なのか…先制後は新潟のアグレッシブなプレスにかなり苦しめられたのを見るに、前者なのかなという気はします。

 また、連敗時に攻撃ルートの多様化(相手の守備に的を絞らせない)を目指して試みられていたことの一つであった、上田の右SH起用も先制点という形で最高の結果となりました。ボールキープできている時は上田が右サイドから中央に移動することによって、ゴールに直結するパスを成功しやすくする試み(そのかわりもともと中央にいる喜山と関戸とバランスを取るのが大変というリスクがあります)なのですが、先制点の場面では綺麗にハマりましたね。後述するように増谷もこの面でいい働きを見せており、懸念されていた無得点状態の打開に光が見えています。



新風、山本と増谷


 夏の移籍期間で獲得した山本、増谷の2選手が加入早々スタメン出場したことも大きなトピックとなりました。それぞれの働きぶりについて触れておきたいと思います。

 まずイヨンジェの相棒に抜擢された山本は、松本でも見せていた献身性、裏への強さはもとより、シュートゾーンに入り込むタイミングの良さであったりボールを懐に入れる技術もあるという部分にも目を引かれました。コーナーキックのセカンドボールでルーレットのようなきれいなターンでボールをキープして裏に抜けるイヨンジェにつながりかけたチャンスシーンが編集部的には一番好き。あとは後半最初のむっくんのグラウンダークロスに入り込んだダイレクトシュートも素晴らしかった。決めて欲しかったけど…w

 琉球ではCBで主力であった増谷ですが、岡山では右SBでの出場となりました。最終ラインは4人とも縦パスの出せる選手だぞ、というのが有馬監督の希望のようです。ボールを繋ぎたいサッカーを目指している上でネックとなっていたのが、プレスを受けてもある程度はDFラインからCHや前線に正確なパスを供給できる選手のやりくりでしたので、増谷が来てくれたおかげで、かなり岡山の攻撃の景色が変わった感じがしました。

 仲間隼斗にボールが集まる、ということが、仲間隼斗さえ抑えればよい、という対策に転化され、攻守のリズムを失ってしまうという苦しみがあったのですが、増谷は岡山のどの選手と比べてもパスの決断が早く、FWが裏を取った瞬間、SHがマークを剥がした瞬間にジャストにパスを出せる感覚を持っています。対戦時にモーレツなスピードで動き回ってパスを回してたので、琉球では当たり前の”速さ”なのでしょうね。ありがたいことです。むっくんが左サイドにいても右サイドからパスがつながるぞ、というのはかなり見てて気持ちが良かったですし、選手の方も気持ちよさそうでした。

 編集部的に増谷に最も凄みを感じたのは、その縦パスが引っ掛かった後の守備対応。かならず中央から寄せていき、最も危険なカウンターを未然に防いでいました。このカウンターを防ぐ寄せ方はむっくんを始め岡山のSBの選手にはなかったですね…ボール保持攻撃を突き詰めている琉球との「年季の違い」を痛感しました。攻守に司ってましたね…マスターオブセレモニーや…

 後半は新潟に押し込まれたことで存在感が希薄となってしまいましたが、岡山の組織上の課題改善に大いに可能性の感じるプレーぶりでした。マスタニー。



名リリーフ、中野誠也


 連敗中の試行錯誤と新戦力が噛みあった内容を見せた岡山ですが、当然新潟も黙っていませんでした。

 まず先制後に前線のプレスが敢行されます。レオナルドのコース取りがすごく良くて、GKからCB、CBからの横パスを塞いで前に蹴り出すしかない状況を作られてしまいました。あわや自陣でボールを奪われてしまうレベルのプレスであったので、出来るなら最初から案件の可能性が……w

 また、ポジションチェンジで攻撃の起点となっている喜山に対するマンマークが徹底されます。高木ないし戸嶋だったと思いますが、ここを塞がれ前線守備も機能したとなるとイヨンジェに蹴るしかないなとなっていきます。そうなるとマイケルジェームズと大武に跳ね返されて、簡単にボールを失う局面が増えてしまいました。

 さらに、攻撃面ではカウエが4-4-2のブロックから外れる動きを見せることで徐々に岡山陣内への圧力を高めていきました。新潟の攻撃面はブラジル人選手の自主性?に依るところが大きいようで、前半はむっくんが対面のフランシスとの1対1に負けなかったのでなんとかなっていましたが、後半開始早々にトップ下にシウビーニョが投入されると、フランシスと入れ替わり立ち替わりとなってむっくんが数的不利炎上状態になってしまいました。これは本来はサイドで守備を連携するはずの仲間隼斗が、右SBに移ったマイケルジェームズのボール保持に引き付けられたことによる不利で、新潟の後半の修正が実った形です。

 一瞬の隙を突く(フィードがうますぎるイッチにはいつものことですが)山本のゴールで突き放したものの、失点も時間の問題という状態になった岡山。ですが、岡山もうまい修正手を出すことができました。中野誠也の投入です。

 中野誠也の投入で効果的だったのは守備面。イヨンジェは前線に残したいよね、ならその裏から攻撃しますね、という新潟の攻めを中野誠也の正確かつ激しいチェックで妨害することに成功しました。岡山に来てからの中野誠也は守備面での活躍に目を見張ります。特に今節は浮遊するシウビーニョを捕まえきれず困っていた岡山のイレブンに活を入れる、鬼気迫るボール奪取とドリブルを幾度も見せていました。大エースかな?川崎フロンターレとの天皇杯での活躍でまた一皮むけたかもしれません。

 中野誠也の奮起でペースを取戻した岡山は今度はうまく逃げ切り体制を作ることができ、ラストプレーで再びのイッチスーパーフィードで追加点というオマケもついてきました。公式戦4連敗の暗雲を切り払う、見事な勝利でした。



今節のむっくんポイント…衝撃の左足クロス


 さて、今節はトピックが多く、むっくんの話があまり出来ませんでした。というわけでここで別項を設けて編集部ノルマを果たそうと思います。むしろここからが本題…

 仲間隼斗と組んだ左サイドコンビが強すぎてすげーっすわとフカしたのもつかの間、連敗突入によってさらっとコンビ解散になったりしてしまいましたが、今節はコンビ復活となりました。

 前項で述べたように新潟が喜山ラインを押さえに来なかったため、むっくん仲間コンビネーションの美点も前面に出る形となりました。守備対応もフランシスの神出鬼没ぶりは脅威だったのですが、ポゼッションの優位によって守備もリズムよく行えてマンマークに集中することができたため、むっくんがフランシスを1対1でシャットアウトするというシーンも目立っており、「完全復活」を印象付ける内容でした。

 後半はシウビーニョの投入によって一転裏をとられまくる事態となりました。背走の結果警告も貰ってしまい累積警告リーチとなっています。それでも最終ラインにへばりつきシュートブロックで粘り込むことでひとつ大きなセーブも見せ、最後までチョコたっぷりという活躍ぶりだったと思います。興奮した。




 編集部的な一番のトピックは、後半立ち上がりのチャンス。関戸-仲間-むっくんのコンビネーションからサイド深くに侵入した際に、左足で高速クロスを供給したこと。むっくんのクロスの球質はふんわり横回転系が多く(球質の統計は残念ながら取れませんが…w)、強いクロスは利き足の右足でも数えるほど(ドリブル突破で抜け出してマイナスのクロスを入れる必要があること自体少ないからというのもあるでしょう)なのですが、新潟DFラインが並びを変えたことで守備対応にがたつきがあると見るや、逆足で強いクロスを入れた、というのは非常に驚きました。蹴れたのか、そういうクロス…記憶が正しければ3年くらい見て初めて見た…

 もしかしたら最近練習場で居残り特訓してるらしいとの情報もあるので、それの鍛錬の賜物なのかもしれません。岡山ではわりと経験豊富な選手として期待されていると思うのですが、そのむっくんにも新境地がある…そう思うと非常に…超エキサイティングだ…

 願わくばこれがアシストになって欲しかったですがw 幅を広げつつあるチームに負けじと幅を広げそうなむっくんにはとても興奮しました。次節以降も期待してます。


それでは。