見出し画像

【漸進という魔術】北海道コンサドーレ札幌vs.清水エスパルス(J1第3節)

わあいヤン采配。picklesヤン采配だいすき。

ペトロビッチ監督の札幌とヤン・ヨンソン監督の清水の対決、東京五輪代表の森保監督が視察に来ており、札幌ドームとかいう広島同窓会といった趣になっていました。

◆試合情報

スコア 

札幌1−3清水

札幌 ジェイ(15分) 
清水 クリスラン(26分)、金子(48分)、河井(67分)

メンバー

清水: 北川→チョン・テセ(66分) 
札幌:深井→ヘイス(66分)、兵藤→荒野、菅→都倉(77分) 

ハイライト

◆topics

札幌の3-2-5と右サイドの優位性

さて、札幌ですが、ボトムチェンジは行わず3-2-5といった形でボールを保持しました。清水エスパルスとしては、ストッパーにSHを当てていた—特にロングキックに優れた福森に対してはSHの金子が必ず詰めていた—のでSBの位置に開かずハーフスペースに位置どられたことがかなり戦況を難しくしてしまいました。

おそらく戦前のプランとして敢行した前線守備は簡単にはがされてしまい、サイドチェンジで右シャドウ三好もしくは右ウイングの駒井が清水の4-4ラインの外でフリーになり、ドリブルやクロスでDFラインの視野を揺さぶる場面が頻出しました。ジェイ・ボスロイドの先制点はまさに金子が外されたところからのサイドチェンジからで、札幌はこの形で何度も決定機につなげていました。大外から大外でさらに大外から菅という形で3点分くらいやられてました。札幌としては1つは決めておかねばというところでしたでしょう。

上手くボールが奪えないことから得意形であるSHとFWの入れ替わりによるサイド裏抜け攻撃もなかなか繰り出せなかった清水ですが、トランジションで起きたカオス(五分五分)局面からいくつかチャンスを生み出せており、クリスランの一発を導くことができました。単発のチャンスだったのですが、それをスコアに反映させることが助っ人の評価指標でありますね…神様、仏様、クリスラン様…。まあトランジション局面で素通しなのがペトロビッチさんの形ではあるので"うまく突いた"といえるっちゃいえる。ニアをブラフに向こう側を狙う清水の得意形を出せたシーンでした。

清水を好転させた守備のタスク修正

この札幌の欠点(ペトロビッチ監督の美点ともいえるかもしれません)は後半よりはっきりとしていきます。札幌のサイドチェンジをけん制することを優先して、SHを前に出さずFWのスライドで札幌の3バックビルドアップに対応していました。サイドチェンジが飛んできてもデュークの高さが阻むという場面が増えていき、地上戦を挑まれてもしっかり囲む距離感を作ることができてきました。前半はほとんど出せていなかったSBの攻め上がりが後半は頻繁にみられ、左SB松原が得点につながるチャンスをよく作っていました。札幌目線でいうと右CB進藤が引き出された時の対処が彼自身のデュエル対応も含めて課題になりそうでした。

首尾よくカウンターから逆転した後(後半一発目の決定機だったので首尾が良すぎなのですが)もヤン・ヨンソン監督は清水のCBファンソッコとフレイレに指示を出しており、非常に入念にラインコントロールしていました。前半はちょっとしか出せなかった清水の形をはっきりと出すことができ、河井のスーパーゴールで勝負あり。

疲れてきた時間帯も札幌が二枚替えで前線に全員集合となったことでコンパクトさを失わなくて済みましたし、交代投入のチョン・テセがゴールへの執念を剥き出しにして時間をつくってくれ、前半の苦境が嘘のような清水の鮮やかな逆転勝ちとなりました。

漸進という魔術

2トップの守備の修正によって札幌のサイドチェンジを自分たちのペースで迎えることができたことが直接の勝因となりました。

ペトロビッチ監督は同じ配置にメンバーのみを変えて個性で殴ることで事態の打開を図るタイプの交代を好みますが、まだチームが成熟していなかったことで交代するごとにチーム内での狙いどころの共有が薄れてしまったことも清水エスパルスを助ける結果にもなりました。とはいえ、3節にして苦しい状況でも粘り強くスコアを推移させ突き放すタフな組織力を見せつけたことは称賛に値するでしょう。

絶対的な選手となりつつあった石毛を欠いていましたが、ルヴァンカップのダービー勝利を経てミッチェル・デュークがその代役をしっかりと果たし(中二日なのに一番走行距離が出ていました)、大ベテランのチョン・テセもゴールへの執念を剥き出しにしてチームの強度を高めていました。清水エスパルスに好循環が生まれつつあります。

革新的ではありませんが、理屈をピッチに落とし込み勝ち筋に近づけてゆく。ヤン監督の、少しずつですが前進を止めないチームを作りは魔術といってもいいのではないかと思います(魔術師って言いたいだけ)。派手な成果は出ないかもしれませんが、そういう部分では裏切らない人だと思います。この試合で清水界隈の心を掴んでいればうれしいです。余談ですが清水エスパルス公式サイトの写真ギャラリーめっちゃいいですね!無限に酒がすすむやつだ

3バックのポゼッションに苦しんでしまったので次節の仙台に対してはどのように臨むでしょうか。今節のように2トップの頑張りが肝になってきそうです。専用スタジアムで見られる駆け引きはめっちゃ楽しいだろうな…

それでは。